3歳齢,雄,ヨークシャー・テリアの鼻周囲および耳介に漸次増大する結節が多発性に生じ,鼻周囲の結節は花弁状に配列していた。病理組織学的検査で真皮上層はびまん性,真皮下層では付属器に一致するように著しい細胞浸潤がみられた。浸潤細胞は組織球,リンパ球が主体で好中球が若干認められた。Sterile Granuloma and Pyogranuloma Syndromeと診断しプレドニゾロンで治療を開始した。皮疹は縮小するも漸減時に新生しグリセオフルビンを併用したところ4週間後に全て消退,8ヵ月を経過するも再発を認めていない。
4歳齢,未避妊雌のミニュチュア・ダックスフントの胸部正中に,脱毛を伴う直径約5 cmの局面状皮疹を認めた。皮疹の一部には直径1 cmの軟らかい小結節を2ヵ所認めた。病変部にかゆみあるいは疼痛は認められなかった。病理組織学的に,病変部では表皮直下から皮下組織にかけて,広範囲に組織球様細胞の浸潤増殖を認めた。免疫組織化学染色により浸潤細胞は,CD1,CD11c,MHC class II,E-cadherinに陽性,CD3,CD4,CD90,CD45RAに陰性であった。以上の所見により,自験例を非特異的な皮疹を呈する皮膚組織球腫と診断した。現在,切除後9ヵ月経過するが,皮膚および他臓器に病変を認めず経過は良好である。