ヒト,マウス,ウシ,ヒツジおよびアルパカの正常な皮膚には皮膚Tリンパ球が常在している。ウマの皮膚に常在するリンパ球の集団を調査した研究によると,表皮および真皮上層においてはごく少数のリンパ球が存在する,もしくは常在するリンパ球は存在しない,などの相反する結果が報告されている。本研究の目的は,皮膚が正常である29頭の馬の生検サンプルにおける表皮,付属器上皮および真皮のなかのCD20+およびCD3+リンパ球の比率を明らかにすることである。29頭の馬の胸部背側から採取した正常皮膚の生検サンプルは,表皮,付属器上皮および真皮に分けてCD3+細胞(Tリンパ球)およびCD20+細胞(Bリンパ球)の存在について組織科学的および免疫組織科学的手法を用いて解析された。結果として,29頭中27頭の真皮の主に血管周囲,29頭中9頭の表皮,そして29頭中16頭の付属器上皮においてCD3+リンパ球が検出された。CD20+リンパ球は,29頭中11頭の真皮において検出されたが,表皮と付属器上皮には検出されなかった。以上より,Tリンパ球ならびにごく少数のBリンパ球が馬の正常な皮膚の構成要素であることが明らかになった。
17歳齢,去勢雄の短毛雑種猫が,10年に渡る頸部の掻破と黒褐色の痂皮を伴う局面とともに,約2年前より発症拡大する結節で当院を受診した。Bowenoid in situ carcinoma(BISC)を疑い結節を切除,皮膚病理組織検査にて表皮内に異型性を有した角化細胞の増殖と一部に異型角化細胞の真皮内浸潤像を認めた。残存する局面に対してMohsペーストを3回塗布し,寛解に至った。第896病日に死亡,剖検を実施した。BISCに関連した肺転移病変は観察されず,肺の腺扁平上皮癌が死因と考えられた。