調質せるNi-Cr鋼板を拘束状態に於て電弧熔接する場合,往々種々の割れが起る.之等の割れを大別すると,ビード内にて起る割れ,母材變質部硬化帶附近に發生する割れ及び母材原質部内に起る割れの3種となる.
本報に於ては現場作業に於けるが如く大なる熔接構造物に就て研究したのではないが,略類似の3種の割れを生ずる小型の四角形特殊試片を考案し,種々の大洲田鋼型電極棒を用ひて下向3層熔接を行ひ,心線の化學組成と之等割れの發生頻度との關係を調べた.
而して心線の化學組成が遖當で硬度低き熔着鋼を生ずる場合には,其延伸率即ち概ね變形能は大きく,ビード割れは極めて生じ難いことを確認した.硬化帶附近割れ及び原質部内割れの發生頻度は心線組成を變ずるも,著しい影響を受けないやうである.之等には寧ろ被覆の作用及び棒の使用條件等が重大なる關係を有してゐるやうに思はれ目下猶研究中である.
そこで本報に於ては主として心線組成及び熔着鋼の硬度とビード割れ發生頻度との關係を稍詳しく報告したい.
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