構造物を溶接により製造する場合,現場技術者を悩ませる最も大きな問題の一つは溶接変形である.拘束,入熱低減等の変形防止策を計っても,溶接変形をゼロにすることは困難であり,特に機械部品の場合,あらかじめ溶接変形を想定して素材の肉厚を増し,溶接後機械加工することが多い,このことは,材料費の増加,工作機械の大型化に伴なう設備投資の増大を招いている.
溶接変形の発生を小さく抑えることが可能でおれば,矯正作業の工数の低減,材料費の低減のみならず,素材をあらかじめ機械加工しておくことにより,工作機械の小型化を計ることが可能であろう.溶接変形を小さくするには,拘束が重要であると共に,本質的に溶接変形が小さい施工法を選ぶ必要がある.このような溶接変形を小さくできる可能性のある溶接法は,板厚当りの入熱が小さく,溶込幅の狭い電子ビーム溶接(EBW)や,レーザー溶接,プラズマアーク溶接などが考えられる.
ここでは産業用,化学工業用などの一般機械へのEBWの適用例を示すことによって,皆様の参考になることを願う次第である.また,溶接変形の発生量をある程度経験的に予測することによって生産ロットサイズの小さいもの,治工具をどこまで削減できるかを考慮する一助となればと考える.
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