日本野生動物医学会誌
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13 巻 , 1 号
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特集
  • 山内 貴義
    2008 年 13 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/05/04
    ジャーナル フリー
    岩手県は広大な面積を有し,多くの野生動物が生息している。ツキノワグマは,岩手県のほぼ森林全域に生息し,国内でも非常に大きな個体群を形成している。ニホンジカはかつて東北地方に広範囲に生息していたが,明治期からの乱獲と豪雪によって生息数が激減し,五葉山周辺のみの分布となった。ニホンカモシカも過去の乱獲によって個体数が減少し,特別天然記念物として保護されている。ところが1980年代頃からこれらの動物による農林業被害が深刻化したことから,岩手県では特定鳥獣保護管理計画(以下,特定計画)が施行された。特定計画を遂行するうえで重要な情報を提供するモニタリング調査は,その多くが狩猟者の協力のもと毎年継続して実施されている。これらの調査を継続しながら適切な野生動物の保護管理をめざしているが,正確な生息頭数を把握することが非常に困難であること,また生息域が急激に拡大して人里への出没が増加していること,さらに狩猟者が激減していることなど,さまざまな課題も発生している。これらの問題を克服するためには,新たなモニタリング調査技術の導入,分布拡大の抑制といった,地域と一体になった取組みを推し進める必要がある。
  • 東海林 克彦
    2008 年 13 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/05/04
    ジャーナル フリー
    本稿では,野生動物についても愛玩動物と同列に情緒的な対象として扱いがちであるなどといった日本人の動物観の特徴についての検討結果を紹介するとともに,このような自然観が野生動物の適確な保護管理の遂行上の障害となるおそれがあることや狩猟の衰退を招いている現状などについて言及した。そのうえで,今後は,日本人の動物観を,動物愛護管理基本指針(環境省)に示された動物愛護管理に関する基本的考え方に即したものに変えて行く必要があること,また,野生動物の個体数調整の方式などについても動物の個体に対する情緒的感情を排した適切な内容に変えて行く必要があることなどを指摘した。
原著
  • 中村 幸子, 岡野 司, 吉田 洋, 松本 歩, 村瀬 豊, 加藤 春喜, 小松 武志, 淺野 玄, 鈴木 正嗣, 杉山 誠, 坪田 敏男
    2008 年 13 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/05/04
    ジャーナル フリー
    Bioelectrical impedance analysis(BIA)によるニホンツキノワグマ(Ursus thibetanus japonicus)(以下,クマ)の体脂肪量FM測定法確立を試みた。クマを横臥位にし,前肢および後肢間の電気抵抗値を測定した。その値をアメリカクロクマに対する換算式に当てはめ,クマのFMを求めた。2005年9月から翌年の1月までの間,飼育下クマを用いて体重BMおよびFMを測定したところ,BMとFMの変動は高い相関(r=0.89)を示した。よって,秋のBM増加はFM増加を反映していること,ならびにBIAがクマのFM測定に応用可能であることが示された。飼育クマの体脂肪率FRは,9月初旬で最も低く(29.3±3.3%),12月に最も高い値(41.6±3.0%)を示した。彼らの冬眠開始期までの脂肪蓄積量(36.6kg)は約252,000kcalに相当し,冬眠中に1,900kcal/日消費していることが示唆された。一方,2006年6月から11月までの岐阜県および山梨県における野生個体13頭の体脂肪率は,6.9〜31.7%であった。野生個体のFRは飼育個体に比較して低かった。BIAを用いて,ニホンツキノワグマの栄養状態が評価でき,この方法は今後彼らの環境評価指標のツールとしても有用であると思われる。
  • 石川 創, 重宗 弘久
    2008 年 13 巻 1 号 p. 21-28
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/05/04
    ジャーナル フリー
    (財)日本鯨類研究所は,国際捕鯨取締条約第8条に基づき日本政府が発給した特別許可による鯨類捕獲調査を,南極海(JARPA)および北西太平洋(JARPN)で行っている.鯨類捕獲調査では,致死的調査における動物福祉を向上させるため,詳細なデータ収集と解析に基づく鯨の致死時間(TTD)短縮および即死率(IDR)向上の努力が払われている。漁具改良による致死時間短縮を目指し,2000年から2004年にかけて鯨の捕獲に用いる爆発銛に搭載する銛先(グレネード)の改良実験を行った。ノルウェーが1999年に開発した新型グレネードおよび,日本の旧型グレネードの信管を改良した改良型グレネードを,旧型グレネードとともに比較実験した。ノルウェーグレネードおよび改良型グレネードは旧型と比較してTTDおよびIDRを有意に改善した。人工標的射撃実験及び洋上での検死結果から,その理由は両者ともに銛命中から爆発までの距離が短縮されたこと,および不発率が減少したことにより,グレネードの鯨体内での爆発率が大幅に向上したためと考えられた。ノルウェーグレネードと国産改良型グレネードを比較した場合,前者は小型個体の即死率が高い一方,後者は致死時間が短く不発率が低いなど,両者は捕殺手段として優劣つけがたかったが,コストと安定供給の側面からは将来の捕鯨漁具として国産改良型グレネードが推奨された。
  • 村田 浩一, 伊藤 加奈, 佐々木 絵美, 佐藤 雪太, 金城 輝雄, 天野 洋祐, 長嶺 隆
    2008 年 13 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/05/04
    ジャーナル フリー
    八重山諸島に生息するカンムリワシ(Spilornis cheela)6羽の赤血球細胞中にBabesia sp.感染を認めた.細胞内寄生率(平均±標準誤差)は0.1±0.09%であった.本原虫感染に関連する臨床的著変は認められなかった.原虫の形態的特徴および計測値からワシタカ目で感染報告のあるB. moshkovskiiに近似していると思われたが,一部の計測値は他の宿主鳥類から検出されたBabesia原虫と異なっていた.正確な種同定には分子生物学的解析が求められる.国内産鳥類からのBabesia sp.検出は初記録であり,カンムリワシにおける本原虫感染は新宿主記録である.
研究短報
症例報告
  • 和田 新平, ウィーラクン ソンポ, 倉田 修, 畑井 喜司雄, 松崎 章平, 柳澤 牧央, 内田 詮三, 大城 真理子
    2008 年 13 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/05/04
    ジャーナル フリー
    2004年に沖縄美ら海水族館で飼育中の希少魚種であるリュウキュウアユ(Plecoglossus altivelis ryukyuensis)に死亡するものが認められた。病魚は回転しながら遊泳,あるいは力なく遊泳し,体表に微細な出血点が散在していた。病魚の肝臓には様々な大きさの白色結節が認められ,数尾の魚では腎臓の顕著な腫大も観察された。最も顕著な病理組織学的所見は,体腎,脾臓,肝臓,心臓,鰓および脳膜にみられた肉芽腫性病変であった。これら肉芽腫性病変はマクロファージ様細胞が敷石状に配列する構造を呈していた。肉芽腫内には抗酸性を示す長桿菌が多数観察され,病魚から分離された菌株はMycobacterium marinumと同定された。
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