野生のツシマヤマネコにおける栄養状態診断基準の確立を目的として,体脂肪蓄積指標の評価に関する研究を行った。体脂肪蓄積指標を検討するために, 1985年から2007年の間に調査目的で捕獲された個体および事故等で保護収容された個体のうち, 明らかに疾病等で衰弱し, 栄養不良と判断された個体を除く101頭の外部計測値を使用した。外部計測値は, 対馬野生生物保護センターで計測された体重(g), 体長(mm), 後足長(mm)を使用した。また, ツシマヤマネコの死体24頭における肉眼的脂肪指数および背側皮下脂肪指数から相対的な体脂肪蓄積を評価し, 標本集団を体脂肪高蓄積群と体脂肪低蓄積群に分けた。この2群について、各標本の体重(BW), 体長(BL), 後足長(HFL), 肥満指数(BMI)を独立変数として判別分析を行った結果、以下に示す判別関数式が求められた(P=0.047)。この判別関数式の判別率は83.3%だった。Z=0.001(BW)- 0.014(BL)+0.082(HFL)+0.006(BMI)-4.304この判別式を用いることで、ツシマヤマネコの生体における体脂肪蓄積量を簡便に評価できることが明らかとなった。
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