日本野生動物医学会誌
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15 巻, 2 号
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原著論文
  • 荒蒔 祐輔, 浜 夏樹, 川上 博司, 島田 幸宜, 中根 伸明, 中谷 隆二, 竹田 正人, 佐野 祐介, 久田 治信, 楠 比呂志
    原稿種別: 原著論文「英文」
    専門分野: 繁殖学
    2010 年 15 巻 2 号 p. 49-55
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
    2頭の飼育下雌ボルネオオランウータン(Pongo pygmaeus)から連日採取した尿中のエストラジオール17-β(E2)およびプロゲステロン(P4)濃度をエンザイムイムノアッセイ法により測定し,E2のピークから推測した排卵日付近で雄との短期同居を試みたところ,2頭とも受胎に成功した。2頭の雌間で卵胞期の平均値には有意差がみられたが(17.2日と12.8日),黄体期には差がなかった(13.7日と12.0日)。妊娠中のE2とP4の動態は2頭の雌間で概ね一致し,1頭は妊娠31~32週目にこれらのホルモンがピークに達し,その後低下して最終交尾の238日後に健康な雄を出産した。残りの1頭(推定39才)は,月経周期中のE2レベルが出産した雌よりも有意に低く,更年期による卵巣機能低下が疑われたが,現在も正常に妊娠を継続中である。今回試みた,雌の排卵にあわせて計画的に雌雄を同居させ交尾に導くControlled Breedingによりわずか数カ月で2頭の雌が妊娠したことから,我々の方法は国内のオランウータンの繁殖を促進させ得るものであると期待している。
  • 羽山 伸一, 松原 ゆき
    原稿種別: 原著論文「英文」
    専門分野: 栄養学
    2010 年 15 巻 2 号 p. 57-64
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
    野生のツシマヤマネコにおける栄養状態診断基準の確立を目的として,体脂肪蓄積指標の評価に関する研究を行った。体脂肪蓄積指標を検討するために, 1985年から2007年の間に調査目的で捕獲された個体および事故等で保護収容された個体のうち, 明らかに疾病等で衰弱し, 栄養不良と判断された個体を除く101頭の外部計測値を使用した。外部計測値は, 対馬野生生物保護センターで計測された体重(g), 体長(mm), 後足長(mm)を使用した。また, ツシマヤマネコの死体24頭における肉眼的脂肪指数および背側皮下脂肪指数から相対的な体脂肪蓄積を評価し, 標本集団を体脂肪高蓄積群と体脂肪低蓄積群に分けた。この2群について、各標本の体重(BW), 体長(BL), 後足長(HFL), 肥満指数(BMI)を独立変数として判別分析を行った結果、以下に示す判別関数式が求められた(P=0.047)。この判別関数式の判別率は83.3%だった。Z=0.001(BW)- 0.014(BL)+0.082(HFL)+0.006(BMI)-4.304この判別式を用いることで、ツシマヤマネコの生体における体脂肪蓄積量を簡便に評価できることが明らかとなった。
  • 鈴木 遥, 馬谷 真弘, Mohammad Musharraf Uddin BHUIYAN, 渡部 浩之, 茂越 敏弘, 松岡 耕二, 藤瀬 ...
    原稿種別: 原著論文「英文」
    専門分野: 繁殖学
    2010 年 15 巻 2 号 p. 65-72
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
    本研究では,平衡段階数(3段階と5段階),クジラ卵胞液の添加および糖類(スクロースとトレハロース)が3種類のヒゲクジラ(イワシ,ニタリおよびミンククジラ)未成熟卵子のガラス化保存後の生存率及び成熟率に及ぼす影響を調査した。さらに卵子微細構造の観察も行った。ニタリクジラでは5段階平衡の生存率が3段階平衡に比べ有意に高くなったが,イワシクジラでは5段階平衡の成熟率が3段階平衡に比べ有意に低くなった。クジラ卵胞液を添加したイワシクジラの生存率はウシ胎児血清を添加した区に比べ有意に高かったが,成熟率ではイワシ,ニタリクジラともに差はみられなかった。さらにトレハロースとスクロース間では生存率,成熟率ともにイワシ,ニタリクジラ両方で差がみられなかった。しかし,トレハロース添加区はスクロース添加区に比べ卵丘細胞突起とミトコンドリアの損傷が少ないことが分かった。本研究では平衡段階数, クジラ卵胞液及び糖類の比較による成熟率の改善には至らなかった。しかし,北西太平洋で捕獲された3種のヒゲクジラにおいて,ガラス化保存後に3割程度の成熟率が得られることが分かった。
  • 西村 貴志, 山内 貴義, 斎藤 靖史, 出口 善隆, 青井 俊樹, 辻本 恒徳, 松原 和衛
    原稿種別: 原著論文「英文」
    専門分野: 動物遺伝学
    2010 年 15 巻 2 号 p. 73-78
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
    ニホンカモシカ(Capricornis crispus,カモシカ)は日本固有種で, 特別天然記念物に指定されている。本研究では, カモシカの糞中DNAのPCR法によるアメロゲニン遺伝子(AMEL)を指標にした雌雄判別を行った。フェノール・クロロホルム法による抽出とCTAB法による精製を行い,糞中DNAを回収した。2%アガロースゲル電気泳動でPCR産物を解析した結果,250bp付近に雌では1本のホモバンド(AMEL XX),雄では200~300bp付近に2ないし3本のヘテロバンド(AMEL XY)がそれぞれ検出された。直腸糞から抽出したDNAを解析した結果, 40個体中38個体(95%)で雌雄判別が可能であり, 判定された性別は全て既知の性別と一致していた。同様に, 滝沢演習林で採取した野外のため糞からの解析を行った結果, 6糞塊のうち5糞塊で雌雄判別が可能であり(83.3%),3糞塊が雄,2糞塊が雌のものと判定された。カモシカは性的二型が顕著でないため, 直接観察で雌雄を判別できない場合には,本研究で開発した雌雄判別法を利用し野外の糞から個体の性別を推定することが可能になる。
  • 松本 令以, 植田 美弥, 村田 浩一, 比嘉 由紀子, 沢辺 京子, 津田 良夫, 小林 睦生, 佐藤 雪太, 増井 光子
    原稿種別: 原著論文「和文」
    専門分野: 寄生虫学
    2010 年 15 巻 2 号 p. 79-86
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
    蚊媒介性感染症のベクターとなる蚊の生息状況解明を目的として,2005年5月から5か月間,横浜市立よこはま動物園内においてドライアイストラップ,グラビッドトラップおよびスウィーピング法を用いた捕集調査を行った。その結果,アカイエカ種群蚊(Culex pipiens group),ヒトスジシマカ(Aedes albopictus),トラフカクイカ(Lutzia vorax)など計9属14種2,623個体が捕集された。アカイエカ種群蚊およびヒトスジシマカが捕集蚊全体の約85%を占め,これらの蚊が園内における優占種であると考えられた。神奈川県内で生息が確認されている蚊26種のうち53.8%にあたる種が捕集されたことから,本動物園およびその周辺地域は,各種蚊が選好する多様な環境で構成されていると考えられた。なお,捕集蚊の10.6%で吸血が認められ,動物園動物を吸血源としている可能性が示唆された。動物園動物の蚊媒介性感染症を制御し,希少種の生息域外保全を行うためには,蚊種の生態に応じた防除対策が必要である。
  • 石橋 治, 外村 浩幸, 佐藤 毅史, 藤根 誠道, 川端 一幸, 角野 敬行, 我如 古創, 浅川 満彦, 小倉 剛, 砂川 勝徳, 仲田 ...
    原稿種別: 原著論文「和文」
    専門分野: 公衆衛生学
    2010 年 15 巻 2 号 p. 87-93
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
    沖縄産マングースについて内部寄生虫の調査を行った。マングースの直腸糞を用いてMGL法による虫卵検査(n=186)を行い,鞭虫卵(42.5%),鉤虫卵(22.6%),回虫卵(2.2%)およびコクシジウムのオーシスト(81.2%)を検出した。消化管内容物(n=158)から,条虫としてMesocestoides sp.(3.8%)を,線虫としてProtospirura sp.(0.6%),Toxocara sp.(0.6%)およびUncinaria sp.(0.6%)を検出した。マングース(n=8)について給餌管理下で飼育し,そのうちの2頭のマングース小腸切片からコクシジウムの十二指腸および回腸の上皮細胞への寄生を確認した。心臓および肺臓には広東住血線虫(Angiostrongylus cantonensis)の寄生はみられなかった(n=175)。また,横隔膜の直接圧平法(n=161)および咬筋,横隔膜および後肢内側筋肉の人工胃液消化法(n=144)では旋毛虫(Trichinella spp.)幼虫の寄生はみられなかった。
研究短報
症例報告
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