日本野生動物医学会誌
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16 巻 , 1 号
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特集論文
  • 齊藤 慶輔
    2011 年 16 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 2011/03/31
    公開日: 2018/07/26
    ジャーナル フリー

     現在,日本を含む東アジア諸国において,野生動物医学に関する国際交流をより活性化させ,野生動物と人間のより良い共生を目指すことを目的に,各国の現状と問題意識の共有を図ることが強く求められている。第16回日本野生動物医学大会では,各国に存在する野生生物への脅威や,越境する恐れのあるさまざまなリスクに対する各国の取組みへの理解を深め,国際協力ネットワークを構築することを目的に,シンポジウム「東アジアにおける野生動物医学活動のネットワーク化」を開催した。シンポジウムには,中国,韓国,台湾より各1名ずつの外国人演者を招聘し,渡り鳥が運ぶウイルスの確認状況や存在する野生生物への脅威などが紹介された。多くのパネリストが各国の現況について情報を共有することの重要性を指摘し,特に渡り鳥が運ぶさまざまな感染症については,モニタリング項目(ウイルスなど)や対象種について,ある程度の共通項が必要との認識を示した。また,越境する重要感染症などに対処するため,可能な限りリアルタイムで正確な情報交換を行うための体制整備についても,今後早急に確立すべき課題であるとの認識で一致した。

     さらに,渡り鳥のフライウエイに位置する国同士が連携して野鳥の保護活動を行うためには,各国におけるさまざまなリスクをハザードマップ化しておくことが重要である。

  • 宇根 有美
    2011 年 16 巻 1 号 p. 5-7
    発行日: 2011/03/31
    公開日: 2018/07/26
    ジャーナル フリー

     「動物の死を生かす」といった目的において,病理学的検査の結果を有効に利用できれば費用対効果(コストパフォーマンス)は非常に高いと思われる。確度の高い検査結果を得るための,いくつかのポイントを紹介した。

  • 川上 茂久
    2011 年 16 巻 1 号 p. 9-13
    発行日: 2011/03/31
    公開日: 2018/07/26
    ジャーナル フリー

     病理解剖は,個体の死因を明らかにし,治療の良否,外科手術のシュミレーションなど臨床獣医師にとって多くの情報を与えてくれる。また,飼育員も病理解剖に参加すべきと考える。動物の死因を飼育管理や栄養の改善に生かすことができるからである。しかし,臨床獣医師は病理解剖に十分な時間を割けないことがある。本稿では,的確な肉眼的観察,サンプリングを行うための体系的な病理解剖を紹介する。本手順を参考に,人獣共通伝染病などを考慮し,安全で有意義な病理解剖を行っていただきたい。

  • 遠藤 秀紀
    2011 年 16 巻 1 号 p. 15-17
    発行日: 2011/03/31
    公開日: 2018/07/26
    ジャーナル フリー

     動物園における研究の可能性を,明治維新以来の学問の自治と研究者の科学的好奇心に関して論議した。この2つの本質的問題点は,社会教育における研究の発展を左右している。

  • 外平 友佳理
    2011 年 16 巻 1 号 p. 19-22
    発行日: 2011/03/31
    公開日: 2018/07/26
    ジャーナル フリー

     動物園が研究施設としての役割も担う以上,獣医師に求められることは多くある。ND抗体価測定調査や展示場内の網羅的な土壌細菌叢検査などの研究活動を行ってきたが,今後もさらなる持続的な調査研究活動が求められている。

  • 樽 創
    2011 年 16 巻 1 号 p. 23-26
    発行日: 2011/03/31
    公開日: 2018/07/26
    ジャーナル フリー

    動物園・水族館における動物の展示では,生理や行動に注目した解説が一般的であるが,機能形態を考察するうえでも貴重な情報を得られる。近年,展示手法が形態展示,生態展示と多様になっているが,機能形態に関連する観察においてそれぞれ長所・短所がある。形態展示では細部まで至近距離で観察できるが,環境は自然環境とは大きく異なる。生態展示ではより自然に近い環境での運動は観察できるが,動物まで距離があり細部の観察が困難になる。また,障害物により動物そのものの観察が難しいこともある。運動機能や機能形態を考察するうえで,対象とする動物の運動が自然であり,かつ間近に観察できることは重要な要素である。そのため,これらの展示方法を併用して観察することで,動物の運動機能と形態との関係をより具体的に考察することができよう。

  • 木村 順平
    2011 年 16 巻 1 号 p. 27-28
    発行日: 2011/03/31
    公開日: 2018/07/26
    ジャーナル フリー

     韓国における動物園と水族館の現状を紹介する。ソウル動物園における絶滅が危惧される種の人工繁殖を含む研究について語った。将来における日本側専門家との協力が,日本と韓国に共通する種の保全について強く期待されている。

  • 新里 敬
    2011 年 16 巻 1 号 p. 29-32
    発行日: 2011/03/31
    公開日: 2018/07/26
    ジャーナル フリー

     人間も動物もその感染症治療で抗菌薬を多用する時代となり,耐性菌が生活環境や生命を脅かすようになってきた。感染症治療における抗菌薬投与設計の原則は「臨床的に有効で,副作用が少なく,耐性菌を生み出さない」ような治療である。現在,抗菌薬の薬理学的体内動態と薬理学的効果のパラメータを組み合わせて,アミノグリコシド系抗菌薬においては Cmax/MIC,キノロン系抗菌薬においては AUC/MIC,β-ラクタム系抗菌薬においては time above MIC が有効性の指標として活用されている。最近,2段階点滴法などの新しい投与方法の研究が進んでおり,耐性菌を生み出さないような感染症治療の新しい工夫が試みられてきた。

  • 大神 郁朗
    2011 年 16 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 2011/03/31
    公開日: 2018/07/26
    ジャーナル フリー

     野生動物を絶滅から回避させるための1つの方策として,環境省レッドデータブックで絶滅危惧ⅠA類に分類されるツシマヤマネコの保全について講演および意見交換を行った。ツシマヤマネコを保全するためには,生息域内における周辺住民とツシマヤマネコとの関わり方,行政,地元の団体他関係者などを含めた対策,また,ツシマヤマネコの減少の1つの原因となっているイエネコからの感染症対策について獣医師による側面からの支援および野生復帰のための生息域外における動物園における飼育下繁殖事業などそれぞれの分野で今後も継続した対応が必要である。今まで日本国内での絶滅に瀕した哺乳類の野生復帰が成功した例がないなかで,今後の野生動物保全に対して本事業の役割は大きいものと考える。

  • 谷川 ももこ, 小川 順子, 杉本 悠真, 鈴木 尋, 長嶺 隆, 玉井 勘次, 吉田 博美
    2011 年 16 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 2011/03/31
    公開日: 2018/07/26
    ジャーナル フリー

     今大会における学生集会では,「九州・沖縄における野生動物問題の現状と取り組み」という開催地に沿ったテーマで,次世代を担う学生たちに広い視野と知識,興味をもってもらうことを目的として,九州・沖縄で野生動物に関して活動されている3名の講師による講演と,フリートークによる活発な意見交換を行った。講演で,長嶺隆先生(NPO法人どうぶつたちの病院)は,沖縄のやんばるにおけるヤンバルクイナと西表島におけるイリオモテヤマネコの保護活動について,イエネコが生態系にもたらす影響や地域住民との協力の重要性などについてお話いただいた。吉田博美先生(日本ウミガメ協議会)には,アカウミガメにとって重要な産卵地の1つである宮崎で,学生時代に行っていた活動について,学生として野生動物への関わり方,将来へどうつなげていくかなどのお話をしていただいた。玉井勘次先生(鹿児島市平川動物公園)には,九州に上陸した外来種であるジャワマングースについて,分布や拡大要因,取り組みなどの最新情報の報告をしていただいた。多くの学生が野生動物に関する興味を深め,人と人との「つながり」の重要性や野生動物問題に関する知識を深めることができた本大会の学生集会は,学生達が野生動物に関する興味や知識を深め,野生動物医学の更なる発展にもつながる重要な場である。

原著論文
  • 遠藤 秀紀, 山本 裕己, 山本 秀明, 酒井 健夫, 伊藤 琢也, 鯉江 洋, 平井 啓久
    原稿種別: 原著論文「英文」
    専門分野: 解剖学
    2011 年 16 巻 1 号 p. 45-53
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/01
    ジャーナル フリー
    自然史博物館の頭骨標本で三次元デジタル形態学を進めるための手法を提案した。頭骨標本はCTスキャンによって三次元デジタル化され,そのオリジナルデータはサーバーやハードディスクに保管される。そのデータは詳細な形態学的観察や記載に利用できる。頭骨は自由な角度から検討でき,標本の内部構造は頭骨を部分的に切除することで非破壊的に観察することができる。また三次元座標を用いることで,頭蓋の形状と機能を量的に解析することが可能となる。視覚系でいえば,眼窩と視神経の形態に関連する三次元座標を用いて,各動物種を形態学的に比較検討することができる。データは標準化されたDICOMフォーマットのファイルとして蓄積されるが,ソフトウェアによってポリゴンデータにも変換される。そこで,三次元データは以下のような2つの手法によって利用することができる。(1)DICOMフォーマットのボクセルデータからボリュームレンダリングされ,標本の質的な観察に用いられる。(2)DICOMフォーマットのデータからポリゴンデータに変換され,骨計測学やコンピューターグラフィックスや芸術デザインに用いることができる。そしてDICOMデータはインターネットを介して世界中からアクセス可能となる。一連の手法により,今後,標本の三次元データの収集,解析,公開が促進されよう。
  • 進藤 順治, 岡田 あゆみ, 箕輪 一博, 吉村 建
    原稿種別: 原著論文「和文」
    専門分野: 解剖学
    2011 年 16 巻 1 号 p. 55-63
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/01
    ジャーナル フリー
    コウモリは昆虫,果実,花蜜,肉や血液など種によりさまざまな食性がみられているが,食性と関係が深い舌形態についてはあまり明確にされていない。今回,多様な食性を有するコウモリ類の中で,昆虫食のアブラコウモリ,ヒナコウモリおよびテングコウモリの舌乳頭を走査型電子顕微鏡にて観察し,既知のコウモリと比較し種間や食性との関連性について検討した。アブラコウモリとヒナコウモリおよびテングコウモリの3種の舌は棒状を呈し,舌前部は平坦であるが舌後部には舌隆起部がみられ,特にアブラコウモリとヒナコウモリは高く隆起していた。舌乳頭は,いずれも糸状乳頭,茸状乳頭,有郭乳頭および葉状乳頭が観察された。さらに糸状乳頭は,舌尖部に限局する分岐状,舌前部に分布する切頭円柱状,隆起部に分布する大型,舌後部に円錐状の4タイプの基本形態に分類された。茸状乳頭は舌前部から舌隆起部に分布し,その後部には,明瞭な輪状郭に囲まれた1対の有郭乳頭,また舌後部両側面に葉状乳頭が観察された。今回観察した3種の昆虫食コウモリと既知のコウモリを比較した結果,舌隆起部,複数タイプの糸状乳頭,2個の有郭乳頭と葉状乳頭を有する点は昆虫食コウモリの共通の特徴であった。
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