日本野生動物医学会誌
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17 巻 , 2 号
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特集論文
  • 高見 一利, 渡邊 有希子, 坪田 敏男, 福井 大祐, 大沼 学, 山本 麻衣, 村田 浩一
    2012 年 17 巻 2 号 p. 33-42
    発行日: 2012/06/29
    公開日: 2018/07/26
    ジャーナル フリー

     

     2010年度に,日本各地で野鳥から高病原性鳥インフルエンザウイルスが確認され大きな問題となるなか,発生地や調査研究機関など各所で体制作りが進められた。日本野生動物医学会も,野生のツルへの感染が確認された鹿児島県に専門家の派遣を行い現場作業に貢献した。これらの取り組みから一定の成果が得られ,情報収集や体制構築の検討も進んだ一方で,様々な課題や問題点も明らかとなった。一連の活動や検討を踏まえた結果,野生動物感染症対策を効果的に促進するためには,感染症の監視と制御に役立つ体制を構築することが必要であると考えられた。従って,本学会は体制整備として,以下の取り組みを進めることを提言する。

    1.野生動物感染症に関わる法律の整備

    2.野生動物感染症に関わる省庁間の連携

    3.野生動物感染症に関わる国立研究機関の設立

    4.野生動物感染症に関わる早期警報システムの構築

    5.野生動物感染症に関わる研究ネットワークの構築

    6.野生動物感染症に関わる教育環境の整備

    この提言は,本学会の野生動物感染症に対する方向性が,生態学的健康の維持にあることを示すものである。

  • 中津 賞
    2012 年 17 巻 2 号 p. 43-47
    発行日: 2012/06/29
    公開日: 2018/07/26
    ジャーナル フリー

     体重200g程度の鳴禽類の脛足根骨の骨折において,骨折後3~4日以内であれば,牽引によって整復が可能である。十分に牽引しながら,シアノアクリルレートを羽毛に塗布することで骨折部位を固定する。塗布は遠位および近位の関節運動を阻害しない範囲に留める。エリザベスカラーを装着し,直ちに止まり木のあるケージに収容して自由運動をさせる。10日後にエリザベスカラーを除去する。この新しい手技は鳴禽類の大腿骨,中足骨,指骨の骨折時にも応用できる。体重が200gを超える鳥では骨髄内釘固定法,創外固定法が強度の点から推奨される。

  • 吉川 泰弘
    2012 年 17 巻 2 号 p. 49-53
    発行日: 2012/06/29
    公開日: 2018/07/26
    ジャーナル フリー

    Winter season of 2011, the outbreak of highly pathogenic avian influenza (HPAI, H5N1) both in Japan and South Korea was completely different from those of past several years. After the occurrence of HPAI (H5N1) in Japan at 2004 in Yamaguchi prefecture etc., the positive cases of HPAI virus detection in wild birds was 1 to 3 cases per year. The same time, an outbreak of HPAI had been observed 1 to 4 cases per year in poultry farms. From the autumn of 2010 until the spring of 2011, however, 60 cases of wild birds consisting of 15 species were detected to be positive for HPAI virus, and 24 outbreaks of HPAI in poultry farms had been reported. It has been an abnormal frequency of HPAI infections. It seemed to be emerging from migratory birds coming from the north and gradually spread to the resident wild birds such as raptors. A similar trend may also occur after 2012. The possibility that rare bird species maintained in the zoo may be included in HPAI outbreak cannot be denied. The rare birds of the zoo are not applicable to the poultry defined by the MAFF, and they are not also adapted to the wild birds defined by the Ministry of Environment. They are outlaw of Ministries. Vaccines for HPAI have been stockpiled and new vaccines also have been developed in Japan. In order to protect the rare birds of the zoo from infection with HPAI, it is important to discuss whether or not to be vaccinating rare birds with avian influenza inactivated vaccine. This symposium is opened with a following concept. Now is the time that we should decide the measures for protection of rare birds in the zoo from HPAI outbreak.

  • 米田 久美子
    2012 年 17 巻 2 号 p. 55-61
    発行日: 2012/06/29
    公開日: 2018/07/26
    ジャーナル フリー

     日本の野鳥においては過去4回,H5N1亜型高病原性鳥インフルエンザウイルス感染があった。2004年のハシブトガラスの感染は家禽からの二次感染と考えられたが,2007年のクマタカ,2008年のオオハクチョウの感染からは野鳥の間で感染が起きていることが示唆された。このため2008年10月以降,全国的に死亡野鳥調査が実施されるようになった。その結果,2010年10月から2011年5月までの間に約5,600羽の野鳥の死体が調査され,12月から3月の間に全国17道府県において水鳥類と猛禽類の7種63個体から当該ウイルスが検出された。そのうち在来種ではないハクチョウ類3個体は飼育下個体であった。過去4回の感染確認事例ではいずれも,ウイルスの性状から韓国やモンゴル,中央ロシアなどの地域との関連性が推測された。また日本の死亡野鳥調査においては,ハクチョウ類とキンクロハジロが早期に感染を検出しやすい種類と考えられた。2010~2011年に野鳥の感染が認められたのは27地域あったが,5羽以上の感染が確認されたのは鳥獣保護区など5地域のみで,感染個体のうち死亡するのは一部のみではないかと考えられた。飼育下の野生鳥類が野鳥と混在する飼育環境では,感染を防ぐのは不可能であり,抜本的な管理方法の見直しが必要と考えられた。

  • 高見 一利
    2012 年 17 巻 2 号 p. 63-71
    発行日: 2012/06/29
    公開日: 2018/07/26
    ジャーナル フリー

     近年,高病原性鳥インフルエンザウイルスが野鳥と家禽の双方から検出される事例が増加している。重篤な感染症の発生が報告されるなかで,国内の動物園・水族館では,世界各地の多種多様な鳥類が数多く飼育されており,その中にはIUCNのレッドリストやCITESの附属書などに掲載されているような希少種が多く含まれているため,飼育下の鳥類に対する対策の確立も急務となっている。飼育下の野生動物は,飼育環境や個体管理方法などの点で家畜や家禽,犬猫などと全く同じ条件では扱うことができないため,感染症対策においても異なった判断が求められることがある。感染症対策の選択肢となるワクチンは,経済動物などに対して使用が規制されているものもあるが,対象となる種やその飼育方針を考慮しつつ慎重に適用することで,飼育下の野生動物に対する有効な対策の1つとなると考えられる。

原著論文
  • 岡野 司, 淺野 玄, 柳井 徳磨, 鈴木 正嗣
    原稿種別: 原著論文「英文」
    専門分野: その他
    2012 年 17 巻 2 号 p. 73-77
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/29
    ジャーナル フリー
    岐阜大学附属野生動物救護センターに2004~2008年に搬入されたオオタカ16羽において救護事例の回顧的研究を行った。主な初診の状態は,脊髄損傷による両脚の麻痺(25%)および翼の骨折(19%)であった。最も多い救護原因は,車両以外への人工物への衝突(69%)であった。他の原因は,交通事故(13%)および建物への迷入(13%)であった。転帰は,死亡,野生復帰および永久飼養(野生復帰不可)が,それぞれ75,19および6%であった。
  • 遠藤 秀紀, 大村 文乃, 酒井 健夫, 伊藤 琢也, 鯉江 洋, 岩田 雅光, 安部 義孝
    原稿種別: 原著論文「英文」
    専門分野: 解剖学
    2012 年 17 巻 2 号 p. 79-86
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/29
    ジャーナル フリー
    現生シーラカンスの第一および第二背鰭を三次元復構画像を用いて検討し,軸上筋と軸下筋,第一背鰭に関連する筋肉,第二背鰭固有の筋肉の断面積を画像解析手法により計測した。第一背鰭に関連する筋肉は体幹の背側端を超えて鱗状鰭条まで伸長することはなかった。しかし,鱗状鰭条からなる放射した鰭は体幹部の骨性の板によって支持されていた。第二背鰭では,体幹部の2つの骨が鰭の4つの骨格要素を支持し,その4つの骨の周囲には,体幹部から固有の筋層が発達していた。第一背鰭は,体幹部の骨質の板から伸びる比較的小さな筋肉と,体幹部の骨質の板と鱗状鰭条の間の機械的な関節によって制御される,受動的な安定板として機能していると推察された。対照的に第二背鰭は,速度の遅い運動時に積極的な推進力を生み出す装置となっていることが示唆された。第一背鰭が位置する体幹前方と比べて軸上筋と軸下筋が減少する体幹後方においては,肉鰭類の鰭による推進力の発生は,第二背鰭に要求される機能であることが推測された。
症例報告
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