日本野生動物医学会誌
Online ISSN : 2185-744X
Print ISSN : 1342-6133
ISSN-L : 1342-6133
19 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
特集論文
  • 田中 正之
    2014 年 19 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2018/05/04
    ジャーナル フリー

    現代の動物園には,果たすべき4つの役割があると言われる。保全・研究・教育とレクリエーションである。しかし,研究や教育の面では,日本の動物園はその役割を果たしているとは言い難い。京都市動物園では,2008年より京都大学と連携して,野生動物保全に関する研究や教育を共同で行ってきた。さらに2013年4月より新たなセクションとして,生き物・学び・研究センターを設置し,動物園が主体的に研究や教育を行う姿勢を明らかにした。本稿では,京都市動物園が現在取り組んでいる研究や教育の取り組み事例を紹介する。研究では,霊長類を対象にした比較認知科学研究と,ゴリラの妊娠・出産から人工哺育児を両親に戻すまでの過程を観察した研究を紹介する。教育としては,地元の中学校と連携した体験実習プログラムを紹介する。生き物・学び・研究センターでは,研究・教育を実施する上で必要な資金を,外部の助成金を獲得することでまかなっている。それら外部資金についても紹介し,その獲得の意義について,外部評価を受けるという視点から考察したい。

  • 早川 大輔
    2014 年 19 巻 1 号 p. 9-13
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2018/05/04
    ジャーナル フリー

    わんぱーくこうちアニマルランドは高知市直営の公立動物園で,コンパクトなつくりの都市型施設である。当園は決して大きな動物園とは言えないが,その分地域に根ざした動物園として,開園以来動物の展示および園内外における野生動物の調査研究を通して高知市および県内における地域の動物の保全とその情報の集積と発信,そして市民の動物に対する正しい理解への寄与に努めてきた。今回はこれらのうち高知市および県内という地域に絞り込んで,これまで当園において,また当園が協力して行ってきた園内外における調査研究事例として希少動物の生息調査および園内における繁殖成功例,傷病保護鳥獣を用いた感染症モニタリングの症例,またそれらの市民への還元例として公共事業における保護事例や環境教育的事例について紹介する。

  • 柳澤 牧央
    2014 年 19 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2018/05/04
    ジャーナル フリー

    水族館獣医師の主な作業は,飼育動物の健康管理である。臨床獣医師は,疾患の予防と治療の結果を向上させるために,目的を意識して業務をしなければならない。つまり,日常的な作業の他に行わなければならない仕事がある。多くの水族館獣医師が実際に研究を中心に業務をすることは困難な状況に置かれている。しかしながら,我々が直接臨床治療と関係がある研究を調査することができるのは,臨床獣医師のみである事を考えると,我々が研究に寄与することは多い。他にも,外側の協力者と一緒のコーディネートは,重要な業務である。

原著論文
  • 遠藤 秀紀, 山崎 剛史, 森 健人, 工藤 光平, 小薮 大輔
    2014 年 19 巻 1 号 p. 21-25
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2014/05/31
    ジャーナル フリー
    ハシビロコウ(Balaeniceps rex)の咽頭腔と舌骨を三次元 CT画像解析により検討した。咽頭と頭側の食道は,左右両側へ著しく拡大していた。巨大な咽頭と頭側の食道,固定されていない柔軟な舌骨,退化した舌が観察された。これらはハシビロコウがその採餌生態に特徴的な大きな食魂を受け止めることを可能にしていると考えられた。ハシビロコウの咽頭腔領域の構造は,大きな食塊を消化管へ通過させる柔軟な憩室として機能していることが示唆された。また,舌骨,口腔,咽頭腔,頭側の食道腔に左右非対称性が観察された。この非対称性もハシビロコウが大きな魚体を嚥下することに寄与している可能性がある。
研究短報
  • 西川 清文, 森 昇子, 白木 雪乃, 佐藤 伸高, 福井 大祐, 長谷川 英男, 浅川 満彦
    2014 年 19 巻 1 号 p. 27-29
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2014/05/31
    ジャーナル フリー
    国内外来種化による寄生虫相の変遷を分析するため,2010年と 2011年に旭川市内で捕獲されたアズマヒキガエル Bufo japonicus formosusの蠕虫調査をした。その結果,このカエルで既報告の 3線虫種と 1鉤頭虫種が検出された。北海道における当該カエル種の調査はなく,新記録となったが,寄生蠕虫相は本州に生息していた時の状態をほぼ保持したまま定着していたことが判明した。
  • 大島 由子, 吉野 智生, 水尾 愛, 志村 良治, 飯間 裕子, 上林 亜紀子, 長 雄一, 大沼 学, 村田 浩一, 浅川 満彦
    2014 年 19 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2014/05/31
    ジャーナル フリー
     2000年から 2009年の間に北海道内各地で傷病個体として回収された後、斃死したタンチョウ 75個体の寄生蠕虫類保有状況を調査した。57.3%から線虫 5種(Baruscapillaria sp.,Contracaecum sp.,Paracuaria aduncaSyncuaria sp.,Viktorocarasp.)および吸虫 2種(Echinostoma gotoiApatemon gracilis)の計 7種の蠕虫類のいずれかが検出された。 E. gotoiを除く 6種はタンチョウから初記録であり, Syncuaria sp.は日本初記録であった。得られた蠕虫類の中には Paracuaria属,Syncuaria属およびViktorocara属など,消化管潰瘍や腸炎の原因となる線虫が含まれたため,絶滅危惧種であるタンチョウの保護管理上,今後寄生虫のモニタリングが必要であると考えられた。
feedback
Top