日本野生動物医学会誌
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19 巻 , 2 号
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特集論文
  • WHITELEY Pam, BEVERIDGE Ian, VIZARD Andrew, BACCI Barbara
    2014 年 19 巻 2 号 p. 37-40
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2018/05/04
    ジャーナル フリー

    Wildlife Health Surveillance Victoriaとは,メルボルン大学獣医学部を拠点とする,一般的な受動型監視サーベイランスプログラムである。本サーベイランスでは,調査対象となる野生動物(オーストラリア固有の哺乳類,鳥類,は虫類,両生類)における死亡事故および疾病発生について,一般市民,州の環境部および第一次産業部,州立公園管理局(Parks Victoria)の協力のもと,下位上達型(ボトムアップ式)の情報管理体制をとっている。発見された野生動物の死因および病因の診断は,メルボルン大学獣医学部に所属する病理学者,微生物学者,寄生虫学者,ウイルス学者のほか,外部機関の協力者らによって行われる。これらの情報は,Wildlife Health Australia(野生動物の疾病情報を管理しているNPO組織)によってデータベース化され,オーストラリア政府農林水産省へと報告される。本稿では,ビクトリア州における野生動物疾病サーベイランスの基本的な仕組みを紹介し,本サーベイランスを普及・発展へと導いた要因について考察する。

  • 根上 泰子
    2014 年 19 巻 2 号 p. 41-44
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2018/05/04
    ジャーナル フリー

    本稿では,主に,日本での野生動物衛生問題の背景,全国レベルの野鳥における高病原性鳥インフルエンザのサーベイランスおよび現在行われている関連活動について紹介する。社会学的および生物学的背景から,今までは,日本で野生動物衛生サーベイランスシステムを構築するきっかけや状況が弱かった。しかし,近年のHPAIの発生や新興・再興感染症を引き起こすと考えられる様々な要因を考慮すると,日本においてサーベイランスシステムを構築することは重要である。日本では,2004,2007,2008年にそれぞれHPAIVが野鳥から検出された。これらの背景から,環境省は2008年に野鳥におけるHPAIVサーベイランスのマニュアルを整備し,地方自治体,大学,研究機関,他省庁等と連携し,全国レベルでのサーベイランスを開始した。このサーベイランスはHPAIVを検出するためだけのシステムであるが,このシステムを利用して,野鳥の大量死情報が入手できるため, 2012年5月に国立環境研究所が調査研究の目的で野鳥大量死の受動サーベイランスを開始した。地方自治体が本システムで検出される大量死事例について,鳥インフルエンザ以外の死因調査を希望する場合,国立環境研究所に検体を送付し調査を依頼することができる。国立環境研究所は死因調査を行い,結果を依頼した自治体に報告する仕組みとなっている。野生動物衛生サーベイランスシステムを構築するためには,まず最初に,データベースとネットワークの構築が不可欠である。この活動はシステム構築の第一歩となるだろう。

  • 大沼 学
    2014 年 19 巻 2 号 p. 45-48
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2018/05/04
    ジャーナル フリー

    アジア野生動物医学会は2006年に公式に設立された。本学会はアジア獣医科大学協議会の認定を受けている。年次大会は毎年実施されている。これまで20か国から参加者があり,600題について発表が行われた。また,動物園獣医師のネットワーク化についても議論が行われている。次の段階としてアジア地域における保全医学と動物園動物医学のネットワーク化を推進するため,アジア野生動物医学会運営委員会はディプロマの認定を開始した。認定を開始するにあたりAsian College of Conservation Medicineが学会内に組織された。さらに本学会が主体となりWildlife Disease Associationのアジアセクションを設立する準備を開始する予定である。このような活動実績から,アジア野生動物医学会は東アジアおよびオセアニア地域において,野生動物感染症サーベーランスネットワークの中心的な組織に成り得ると考えられる。

原著論文
  • 木仁 , 楠田 哲士, 柴田 枝梨, 土井 守
    2014 年 19 巻 2 号 p. 49-56
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2014/08/21
    ジャーナル フリー
     雌ソマリノロバの生殖状態を非侵襲的にモニタリングする内分泌学的手法の確立を目的とした。プロジェステロン(P4),エストラジオール-17β(E2)およびエストロン(E1)抗体を用いた酵素免疫測定(EIA)法により糞中のプロジェスタージェンとエストロジェンを測定した。また,高速液体クロマトグラフィー(HPLC)と EIA法を併用し,妊娠の各ステージの糞中に排泄されるこれらの性ステロイドホルモン代謝物の同定を行った。非妊娠期のソマリノロバの糞中プロジェスタージェン含量の変化は卵巣周期を示したが,エストロジェンでは周期的な変動が認められなかった。糞中のプロジェスタージェン含量の動態から算出した卵巣周期(±SD)は 22.2±2.9日間であった。妊娠期を通して糞中プロジェスタージェン含量が変化し,特に妊娠 67日と 347日に 2回の急激な増加が認められ,出産(死産)の直前にピーク値を示した。この動態によって算出した妊娠期間は 390日間であった。糞中エストロジェン含量は妊娠 95日から急激な増加を開始し,妊娠中期にピークが認められ,その後出産(死産)までに徐々に減少した。妊娠各ステージの糞中から主に5α-pregnane-3β-ol-20-one,5α-pregnan-3,20-dione,E2および E1が検出された。これらのことから,糞中 5α-pregnane-3β-ol-20-oneまたは 5α-pregnan-3,20-dioneの測定は,卵巣周期と妊娠期のモニタリングに有用であり,糞中 E2または E1の測定は,胎盤内分泌能を捉えるのに有用であると考えられた。
  • 和食 雄一, 金子 良則, 杉山 稔恵, 山田 宜永, 祝前 博明
    2014 年 19 巻 2 号 p. 57-67
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2014/08/21
    ジャーナル フリー
    トキ(Nipponia nippon)は 1981年にわが国の野生下から絶滅し,2003年には最後の日本産個体が死亡した。そこで,わが国は,国家プロジェクトという位置づけのもとに,中国の飼育下個体群由来の 5羽をファウンダーとする飼育下個体群を創設している。本研究では,遺伝的多様性を保持するために必要な収容能力と今後導入すべきファウンダー数を予測する目的から,国内飼育下個体群の人口学的パラメーターを推測した。その結果,著しい個体群成長が認められた一方,世代時間および有効集団サイズには低い値が認められた。したがって,これらのパラメーターの上昇を含めた遺伝的多様性の増加と維持のための努力の必要性が示唆された。また,既存の 5羽のファウンダーが非近交個体で相互間に血縁関係がないと仮定し,収容能力を 200羽とした場合には,今後一切中国から個体を導入しない条件下では遺伝子多様性が 100年後に 60%程度にまで低下すると予測された。より信頼性の高いパラメーター値を得るために人口学的分析の継続が必要であるが,本研究の結果から判断する限り,新たなファウンダーの継続的な導入が必須であると考えられた。
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