日本野生動物医学会誌
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2 巻 , 1 号
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特集論文
  • 岸本 真弓
    1997 年 2 巻 1 号 p. 3-8
    発行日: 1997年
    公開日: 2018/05/05
    ジャーナル フリー
    野生動物保護管理とは, 自然保護の1パートであり行政が担う分野である。その基礎となるのは, 動物, 環境および人間に関する科学的データである。しかし, わが国では保護管理システムは体制的にも思想的にも未だ確立されておらず専門家による協力が必要不可欠である。獣医師は動物の扱いに馴れており, 広範な知識と技術を有することから, 動物を扱う現場でも, その後の分析・解析の場でも大いに貢献することができる。
  • 星 英之
    1997 年 2 巻 1 号 p. 9-12
    発行日: 1997年
    公開日: 2018/05/05
    ジャーナル フリー
    1968年に日本において食用ライスオイルにPCBsが混入するというカネミ油症事件が起こった。この不幸な出来事が起きてから約30年が経とうとしている現在でも, 化学物質による環境汚染は我々の大きな関心事である。野生生物を用いて環境汚染の程度を評価する場合, 大きく分けて2つのアプローチが考えられる。1つは生物体内に蓄積している汚染物質を検出する方法, もう1つは生物が汚染物質に対して起こす反応を評価する方法である。この総説では後者の汚染物質に対する反応を見る, 生物のチトクロームP450(P450)を用いた環境モニタリングの基礎と現在進められている研究について紹介した。
  • 甲斐 知恵子
    1997 年 2 巻 1 号 p. 13-17
    発行日: 1997年
    公開日: 2018/05/05
    ジャーナル フリー
    現代は史上かつてないほどの大量絶滅の時代といわれ, 多くの種が絶滅の危機に陥っている。種の絶滅は, 気象などの環境の変化, 動物種間の競合, 食物連鎖の変化など複数の要因が重なり合って起こると考えられている。それに加え伝染病の流行もその一つの原因と数えられる。近年, 野生動物の間で突然起こったウイルス感染症の流行を例として, 伝染病の流行が種の保存に与える影響, また流行の原因や人間の関与, 我々のなすべきことなどについて考察を行った。1980年代の終わりから, 海洋動物の大量の死亡例が相次いだ。北西ヨーロッパの海洋地帯でのゼニガタアザラシの大量の死亡, ついでシベリアのバイカルアザラシ, ネズミイルカ, マイルカと, 異なる種で同じような呼吸器症状や神経症状を示して死亡した例が相次いで発見された。これに対して病理学的, 免疫学的診断、ウイルスの分離, その後の分子生物学的検索など世界的な協力のもとに調査・研究が迅速に行われた。その結果, 原因ウイルスはイヌジステンパーウイルスに近縁で, 各々別の3種類の新種ウイルスであった。さらに, これまで発症例を見なかったライオンにもジステンパー感染症が起こった。このような新たなウイルスの出現や既知のウイルスの宿主域の拡大の原因は解明されていない。しかし, 海棲動物の例では環境変化によるウイルス保有動物が免疫力のない野生動物の生態系へ移動したこと, ライオンでは人間の飼い犬のウイルスがイヌ科動物を介して伝播した説が最も有力である。このようなウイルス感染症の流行による個体数の激減は, 人間が直接的・間接的に野生動物の生態系へ影響を与えた結果と考えられる。研究面からの貢献はもちろんのこと, 人間の地球環境への影響の問題や, 野生動物の伝染病流行が起きた場合の対策などは、今後の人類の重要検討課題と考える。
  • 三浦 慎悟
    1997 年 2 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 1997年
    公開日: 2018/05/05
    ジャーナル フリー
    1979年に始まるカモシカの捕殺個体の, 岐阜大学獣医学科の研究者を中心とした多岐にわたる分野の総合的な分析は, 野外における行動生態学的研究とあいまって, カモシカの基礎生物学の発展に多大な貢献をもたらした。そのおもなトピックを紹介した。このような生物学的理解は, 残念ながら, 野生動物管理に十分に生かされてはいない。そのおもな理由は, 行政の姿勢が社会経済的な要請との調整に偏重し, 生物学的な個体群管理の視点が欠如していることによる。それは同時に, これまでの基礎生物学的成果を保全生物学へと展開させる研究的な努力が求められていることを意味している.その一つの試みとして, パラポックスウイルス感染症のカモシカ個体群への影響を考慮した存続可能最小個体群サイズ(MVP)を予備的に算定した。感染間隔10年, 感染率60%で, カモシカのMVP(50年後90%の存続確率とする)は40頭以上と推定された。しかしながら, ここで使用したパラメータの精度は低く, より正確な算定を行うためには, 感染症に関するより詳しい資料の蓄積が必要である。それはとりもなおさず野生動物獣医学の重要な課題の一つといえよう。
  • 鈴木 正嗣
    1997 年 2 巻 1 号 p. 25-28
    発行日: 1997年
    公開日: 2018/05/05
    ジャーナル フリー
総説
原著
  • 白水 博, 野村 靖夫
    1997 年 2 巻 1 号 p. 45-51
    発行日: 1997年
    公開日: 2018/05/05
    ジャーナル フリー
    バンドウイルカ(Tursiops truncatus)の2例に接合菌症(Zygomycosis)が発生した。2例とも主症状は, 元気消失, 食欲低下, 湿性雑音を伴う努力呼吸であった。臨床病理学的検査では, 好中球の増加とγ-グロブリン値の上昇がみられた。症例1には, 喉頭を狭窄する鶏卵大腫瘤と気管気管支リンパ節の腫大, 症例2には, 肺と気管に散在する黄白色病巣と気管気管支リンパ節の腫大が認められた。これらの病変部には, 隔壁が乏しく, 直角に分岐する傾向を示し, 太さが一定でない真菌が無数に存在することから, 接合菌症(zygomycosis)と診断された。
  • 村田 浩一
    1997 年 2 巻 1 号 p. 53-57
    発行日: 1997年
    公開日: 2018/05/05
    ジャーナル フリー
    抗ヒトCRPモノクローナル抗体による免疫多層フィルム法でサルCRP値の測定を試みた。試料として飼育下の霊長目6属12種47個体から採取した血清もしくは血漿67検体を用いた。マカク属, オナガザル属, テナガザル属およびチンパンジー属の健康個体はすべて1.0mg/dlを示した。よって, この境界値を本法によるCRP陽性値とするのが適当と考えた。抗ヒトCRP抗体を用いた本法によるCRP測定は簡便かつ迅速であり、霊長目の動物の臨床診断に利用できる。しかし, 腸炎や肝炎などを呈した疾病個体に1.0mg/dl以下の値のものが認められ, ヒヒ属では健康個体にも関わらずCRP高値を示していた。本法による診断と応用については, 動物種もしくは属別の検討が必要である。
  • 山根 正伸, 羽山 伸一, 白石 利郎, 吉村 格, 古林 賢恒
    1997 年 2 巻 1 号 p. 59-66
    発行日: 1997年
    公開日: 2018/05/05
    ジャーナル フリー
    神奈川県丹沢山地に生息するニホンジカ野生個体と同じ地域由来の飼育個体の体重増加, 出産の有無ならびに越冬期間の体重変化について比較・分析し, 食物条件の影響について考察した。この結果, (1)野生個体と飼育個体とも初冬における成獣(4歳以上)の平均体重は雄で約75kg, 雌で約50kgに達し, 顕著な性的二型が認められた。, (2)野生個体は飼育個体に比べて発育段階の体重増加と初産年齢に1年の遅滞が認められた, (3)飼育個体と野生個体の間の出生時の体重に有意差はなかったが, 両者に出生時期と出生時から0歳初冬までの期間の体重増加速度に違いがみられた, (4)越冬期間の体重変化は, 野生個体と飼育個体で異なり, 幼獣, 亜成獣雄および妊娠雌で違いが明瞭であった。以上の結果は生息地の食物条件の違いが, ニホンジカの発育段階の体重増加過程の影響し, 性成熟に到達する期間に影響することを示すものと考えられた。
症例報告
資料
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