日本野生動物医学会誌
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2 巻 , 2 号
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原著
  • 浅川 満彦, 子安 和弘, 原田 正史, クリシュナ シュレスタ C., 目加田 和之, 織田 銑一
    1997 年 2 巻 2 号 p. 81-85
    発行日: 1997年
    公開日: 2018/05/05
    ジャーナル フリー
    野生のネズミ科動物の内部寄生虫については, 比較的多くの報告があるが, ヒマラヤ地方に生息するヒマラヤアカネズミApodemus gurkhaおよびシッキムハタネズミMicrotus sikimensisを宿主とする寄生虫の報告は皆無である。そこで, 1994年11月および1996年3月, ネパール・ヒマラヤ地方Myagdi districtにおいて採集されたヒマラヤアカネズミ14個体およびシッキムマツネズミ9個体について内部寄生蠕虫類の検査をした。その結果, ヒマラヤアカネズミからはHeligmosomoides neopolygyrus, Heligmonoides sp., Syphacia agraria, Heterakis spumosa, Rictularia cristataおよびCatenotaenia sp.が, また, シッキムハタネズミからはCarolinensis minutus,Syphacia montana, Aonchotheca murissylvatici , Trichuris sp., Anoplocephalidae gen.sp.およびTaeniidae gen.sp.(嚢尾虫)が検出された。今回検出された寄生虫のうち, Heligmonoides sp.についてはヒマラヤアカネズミに宿主特異的な新種である可能性が高いが, 他の種はユーラシア大陸の他地域に産するアカネズミ属あるいはハタネズミ属の寄生虫と共通であることが判明した。
症例報告
原著
  • 佐方 啓介, 佐方 あけみ, マチャンゲ ジュリアス H., 牧田 登之
    1997 年 2 巻 2 号 p. 91-99
    発行日: 1997年
    公開日: 2018/05/05
    ジャーナル フリー
    タンザニア南東部のキロンベロ野生動物管理区で18頭のアフリカスイギュウ(Syncerus caffer caffer)を中心とした草食獣のダニ寄生相を調査した。合計7種32頭の草食獣から7種類のマダニ, Amblyomma eburneum, Amblyomma gemma, Amblyomma tholloni, Hyalomma truncatum, Rhipicephalus compositus, Rhipicephalus evertsi evertsiおよびRhipicephalus simus simusを採取した。捕獲したアフリカスイギジュウのうち成体雌1頭に水心嚢, 心筋や心内外膜の点状出血がみられ, 肉眼所見でダニ媒介性のリケッチア感染, 水心症(Heartwater)と診断された。
  • 安本 守宏, 柳瀬 毅, 村松 康和, 上野 弘志, 森田 千春
    1997 年 2 巻 2 号 p. 101-106
    発行日: 1997年
    公開日: 2018/05/05
    ジャーナル フリー
    Q熱は重要な人獣共通感染症の中の一つで, リケッチアの1種Coxiella(C) burnetiiがその病原体である。本研究では, 北日本に生息する168頭のシカを対象に, 間接蛍光抗体法を用いてC.burnetii Nine Mile II相菌に対する特異的抗体の検出を行った。北海道の46頭のシカのうち24頭の52.2%, 東北地方の122頭中48頭の39.3%, 合わせて168頭中72頭の42.9%から特異的抗体が検出された。また, 北海道内の斜里町および洞爺村のシカ46頭のうち, 成獣では18頭中12頭の66.7%, 1歳未満の幼獣では17頭中3頭の17.6%が抗体陽性で, 両者間には有意差が認められた。そこで, 成獣のみを対象として比較したところ, C.burnetii抗体陽性率は北海道の29頭中21頭(72.4%)に, 東北地方の122頭中48頭(39.3%)に検出され, 北方で高くなる傾向がみられた。
  • 馮 文和, 趙 佳, 藤原 昇
    1997 年 2 巻 2 号 p. 107-112
    発行日: 1997年
    公開日: 2018/05/05
    ジャーナル フリー
    本研究では, ジャイアントパンダの年齢と精液生産との関係, 電気刺激によって採取された精液の一般性状ならびに新鮮精子と凍結保存精子の体外における生存性などについて比較検討した。ジャイアントパンダは大体5〜25歳までが繁殖可能な年齢で, この期間内にあるものを実験に供した。精液は電気刺激によって採取した。採精後直ちに精液性状を検査した。ついで精液の一部を7%グルコース液で希釈して4℃で保存した。一方, 凍結精液については, 約2%のグリセロールを含む緩衝液で希釈した後, ドライアイスを用いたペレット法で凍結し, 液体窒素中(-196℃)で保存した。ジャイアントパンダの精巣の発達は年齢15歳くらいで最高となり, その後徐々に衰退することが確認され, 精液量も8〜14歳が最高であった。一方, 電気刺激によって採精した精液の量および精子濃度に繁殖季節による差異がみられた。また, 精液量と奇形精子数との間にも関連性が認められ, 精液量が少ない場合には無精子のものも観察された。つぎに, 精液のpHについてみると, 6.4〜7.2の範囲を外れると体外保存した精子の生存性が著しく低下する現象がみられた。さらに, 体外における精子の生存性をみると, 射出直後の精子を0〜4℃で保存すると, 約130時間(約5日)生存したが, 受精可能な運動性(30%以上)を保持するには60時間が限度であった。一方, 凍結・融解精子を37℃で保存した場合, 30%以上の運動性を保持するのは90分間程度であったが, 全ての精子が運動性を停止したのは約6時間後であった。
  • ピンヘイロ マルセロ・ホセ・ペドロサ, 佐方 啓介, 佐方 あけみ, 牧田 登之
    1997 年 2 巻 2 号 p. 113-116
    発行日: 1997年
    公開日: 2018/05/05
    ジャーナル フリー
    野生動物の減少を防ぎ, 畜産的に飼育繁殖をはかる目的で, クビワペッカリー(学名:Tayassu tajacu, 現地名Catetuカテトウ)の飼育をはじめた。雄1頭雌2頭を一組として, 3組を1群とする。野生の3群と, 自家繁殖による3群を, 10m×12mの区画に1群ずついれ, 飼料(ペレット), メロンなどの果物, イモなどの根菜, を給餌する。各群内で雌は共有されるが, 他群の雌を混ぜると侵入者とみなし殺す。雄が死んだ場合は群内の雌を総入替えする。性周期が約24日で, 発情期は約4日間である。通年発情を示す。妊娠期間は142〜149日で, 通常1頭を出産するが2頭のこともある。出産時には産場に雌を移す必要がある。出産後2〜3時間で子供は歩ける。1日位母親についているが, 4〜5日で親からはなして育てる。泌乳期は6〜8週間で, 子供は背後から乳頭に吸いつく。乳質は低脂肪である。野生群, 自家生産群との境界における両群の成体の行動のパターンを目下観察中である。
資料
  • 村田 浩一
    1997 年 2 巻 2 号 p. 117-122
    発行日: 1997年
    公開日: 2018/05/05
    ジャーナル フリー
    ニホンコウノトリ(Ciconia boyciana)は, 150年ほど前までは日本中でごく普通に見られた野鳥であった。しかし, 1971年に兵庫県豊岡市で野生最後の個体が捕獲されたことで, わが国のニホンコウノトリの地域個体群は消滅した。まれに迷鳥として中国大陸から渡ってくることはあるが, 残念ながら定着して繁殖することはない。この鳥が絶滅した主な原因は, 明治時代以降の狩猟による乱獲, 戦時中の営巣木の伐採, 農業改良による生息地の減少, 農薬による餌の汚染, 小個体群内で生じた遺伝的問題などであると考えられている。同様の現象は, 現在の野生ニホンコウノトリの生息地である中国やロシアでも進行しており, 種の存続自体が危ぶまれている。ニホンコウノトリの飼育下繁殖は, 野生個体が11羽となった1965年に兵庫県豊岡市で始まった。さまざまな努力にも関わらず, 日本産のコウノトリの繁殖は成功に至らなかったが, 中国やロシアから若い個体を導入して飼育下繁殖を試みた結果, 1988年に待望のヒナが誕生した。以後, 国内の3施設で順調に繁殖し飼育個体数が増加している。野生復帰計画を具体的にすすめるために, 1992年から専門家による委員会が設置された。遺伝的管理下でより多くの個体を飼育・繁殖させ, 野生復帰の訓練を行う新たな施設も建設される予定である。しかし, 野生復帰までにはまだ多くの問題がある。生息環境の保全は第一の課題である。たとえば, 飛行時の事故原因となる高圧電線への対策, 餌場となる水田の無農薬もしくは減農薬化, 湿地の確保, そして人工巣塔の設置なども考慮しなければならない。地域住民への啓発も大切である。獣医師が本計画に関われる分野は, 飼育下での疾病治療や予防のみならず, 環境保全を含めたはば広いものであると考える。わが国で今後も進展すると思われる各種希少動物の野生復帰計画を成功に導くため, 日本の獣医学は野生生物保護にも積極的に貢献していく必要があろう。
  • 和 秀雄, 羽山 伸一, 菅野 大丸, 鈴木 正嗣, 中垣 和英, 成島 悦雄, 和田 新平
    1997 年 2 巻 2 号 p. 123-131
    発行日: 1997年
    公開日: 2018/05/05
    ジャーナル フリー
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