日本野生動物医学会誌
Online ISSN : 2185-744X
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21 巻 , 1 号
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特集論文
  • 高見 一利
    2016 年 21 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2018/05/04
    ジャーナル フリー

     国内に150施設以上存在し,6000種以上の多種多様な動物を飼育している動物園水族館には,その多様な動物を活かし,保全するために,広範な分野の研究を進めることが期待されている。動物園水族館は幅広い種の動物を人の管理下に置いているため,様々な研究検体の収集が容易である。検体を計画的,体系的に収集,整理,保存できれば,効率的に利用することができ,より大きな研究成果が得られると考えられるため,そのような取り組みが,世界各地で進められており,国内の動物園水族館でも徐々に広がっている。大阪市の天王寺動物園では150種以上の動物の組織を凍結保存しており,検体バンク化を目指している。公益社団法人日本動物園水族館協会では,生殖細胞の組織的な収集,保存に取り組んでおり,配偶子の共有体制が整いつつある。動物園水族館が博物館と連携することにより,双方の長所を活かした効果的な検体の収集,保存を進めている事例も存在している。今後この取り組みを発展させていくためには,保存されている検体の利用活性化や利用時のルール整備,動物園水族館自身の研究能力の強化などが必要とされる。動物園水族館は様々な動物の研究を進めるにおいて独自の重要な役割を占めているが,検体の収集,保存もその役割の一つとして,今後より重要視されることに間違いはないと思われる。

  • 鯉江 洋
    2016 年 21 巻 1 号 p. 9-10
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2018/05/04
    ジャーナル フリー

     水棲哺乳類に関する生理学ならびに臨床研究は,そのほとんどの分野において十分な研究が行われていない。特に心臓を含む循環器生理学的研究は全く実施されていないに等しい。著者はこれまでに①正常心電図波形に関する研究,②心臓刺激伝導系に関する組織学的研究など小型鯨類に関する循環器生理学的研究を実施してきた。日本は世界でもまれにみる多くの水族館を保有する国である。我々のような教育研究機関は,現場である水族館と一緒になって,積極的に共同研究を行いたいと考えているところも多い。このようなコラボレーションは互いのメリットも大きいと思われる。是非,現場サイドは研究機関を利用していただき,特に水棲哺乳類の臨床分野で世界をリードする存在になることを切に希望している。

原著論文
  • 押田 龍夫, ANTIPIN A. Maksim, BOBYR G. Igori, NEVEDOMSKAYA A. Irina, 河合 久仁 ...
    2016 年 21 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/05/17
    ジャーナル フリー
    北海道の北東部に位置する国後島において,北海道に広く分布する樹上性の3種の小型哺乳類(タイリクモモンガPteromys volans,ヒメネズミApodemus argenteus,キタリスSciurus vulgaris)の分布調査を行った。タイリクモモンガおよびヒメネズミの生息を確認するため,国後島の南部に位置する寒帯性の針広混交天然林に30個の木製巣箱を2年間(2013年7月〜2015年8月)設置した。加えて,2012年7月には,キタリスを目撃した経験の有無について30名の島民を対象にアンケート調査を実施した。巣箱調査の結果,タイリクモモンガおよびヒメネズミの個体或は巣材等の痕跡は一切観察されず,また,アンケート調査の結果でもキタリスを目撃したことがある島民はいなかった。国後島におけるこれら3種の分布記録はこれまでも無かったが,本島でこれまでに用いられたことのない巣箱調査法によってもタイリクモモンガ・ヒメネズミが確認できなかったことから,本島には樹上性小型哺乳類が生息しないことが改めて示唆された。更新世氷期に生じたと考えられる国後島内の森林の縮小は,これら3種を含む森林性哺乳類にとって生息の可否を決定づける重要な環境変化であり,森林の縮小に伴い森林環境によく適応した哺乳類種は絶滅したのかもしれない。
  • 渡邉 祐策, 福本 晋也, 原澤 亮
    2016 年 21 巻 1 号 p. 17-27
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2016/05/17
    ジャーナル フリー
    福井県の高密度生息地域で捕獲した36頭の野生ニホンジカから血液を採取し,ダニ媒介性の住血液病原体であるヘモプラズマ,ピロプラズマ,アナプラズマの保有状況を調査した。36頭中,13頭(36.1%)に‘Candidatus Mycoplasma erythrocervae’,13頭(36.1%)に‘Ca. M. haemocervae’,25頭(69.4%)にTheileria sp. Thrivae,1頭(2.8%)にTheileria sp. Sola,5頭(13.9%)にAnaplasma phagocytophilum,8頭(22.2%)にA. bovis,28頭 (77.8%)にAnaplasma sp.の感染が認められ,高い感染状況にあることが確認された。本調査にて得られたTheileria sp. Thrivaeの塩基配列の系統解析によると,過去にニホンジカから検出されたTheileria sp.と近い関係を示し,系統樹でも独立した分枝を形成したことから,これらがニホンジカの間に広がる新たなタイレリアであることが示唆された。本調査によって得られたAnaplasma sp.の塩基配列の系統解析によると,過去に日本の家畜の牛及び野生反芻獣から検出されたAnaplasma sp.と近い関係を示し,系統樹でも独立した分枝を形成したことから,新たなアナプラズマであることが示唆された。
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