日本野生動物医学会誌
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21 巻 , 4 号
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特集
  • 淺野 玄
    2016 年 21 巻 4 号 p. 111-113
    発行日: 2016/12/22
    公開日: 2017/06/09
    ジャーナル フリー

    公共事業として行われる傷病鳥獣救護事業では,「種の保存法」で国内希少野生動植物種(国内希少種)に指定された傷病個体が救護されることがある。「種の保存法」の目的から,野生復帰は不可能と判断された国内希少種の傷病個体は,種の保存に資さない限りは致死が認められていないものと解釈される。野生復帰不可能な国内希少種を保護している傷病鳥獣救護施設では,種の保存を目的とした保護増殖や生物多様性保全を目指した啓発普及などに野生復帰不能な個体を活用する努力が行われているが,予算,人手,飼養設備などには限界がある。また,増え続ける野生復帰不能な国内希少種は,傷病鳥獣救護事業や保護増殖活動そのものを圧迫するだけではなく,終生飼養される個体の福祉やQOLの低下などが現実問題として生じている。苦痛が大きかったり致死が明らであったり,獣医学的にも福祉の観点からも安楽殺処分が最善の策であると結論づけざるを得ない事例や,同時多発的に傷病が発生した場合のトリアージなどについても,国内希少種の傷病個体の取り扱いに関して明確な指針は整理されていないのが現状である。野生復帰不可能な希少種に関わる課題について整理を行い,未来思考的に保全と福祉の両立に配慮したガイドラインの整備が求められている。

  • 安田 直人
    2016 年 21 巻 4 号 p. 115-119
    発行日: 2016/12/22
    公開日: 2017/06/09
    ジャーナル フリー

    希少動物に関連する法律としては,「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」(「鳥獣保護管理法」)と「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(「種の保存法」)がある。「鳥獣保護管理法」に基づく鳥獣の保護および管理を図るための事業を実施するための基本的な指針の中で,傷病鳥獣の救護個体の取り扱いが記載されている。希少鳥獣については,繁殖,研究,教育等のための活用または終生飼養を検討し,これらの対処が困難な場合においては,専門家の意見も参考に,できる限り苦痛を与えない方法での致死を検討するとされている。種の保存法に基づく国内希少野生動植物種については,傷病個体に関する規定はなく,繁殖,研究,普及啓発等を目的として飼養していくことになる。国内希少野生動植物種の傷病個体の致死は法的に許されていないと解される。保護増殖事業が実施され,域外保全が行われているトキ(Nipponia nippon)やヤンバルクイナ(Gallirallus okinawae)においても,野生復帰が困難な個体に関する扱いについては明確な方針が示されていない。

  • 飯間 裕子
    2016 年 21 巻 4 号 p. 121-129
    発行日: 2016/12/22
    公開日: 2017/06/09
    ジャーナル フリー

    釧路市動物園では,北海道道東を中心に生息している野生タンチョウのレスキューを行っている。生息数および保護収容数の増加に伴い,限られた施設と人員配置のため,受け入れ制限(同時に2羽まで)を行いながら,先着順で,できるだけの治療を行うスタイルをとっている。保護収容を実施する環境省でも,野外で自活可能な傷病個体はできる限り収容しない方針としている。3羽目以降は,環境省の判断で野外経過観察もしくは釧路湿原野生生物保護センター(WLC)へ受け入れが検討される。治療を行った後,特に大きな損傷もない回復個体は,環境省リングを付けて放鳥される。人馴れの大きい人工育雛個体や飛翔不能個体は,飼育下繁殖群へ編入となり繁殖を目指す。ただし,肩関節や上腕近位での断翼個体は,ペアリング対象となりづらい。義足装着個体は,室内のある隔離ケージにて生涯単独飼育となる。起立不能個体・下半身麻痺個体は,ハンモック保定・強制給餌による長期介護飼育を実施する。釧路市動物園は多くの飼育ケージを持つとはいえ,特にペアリングに不向きな継続飼育個体の増加は,教育普及に活用する道を模索するとしても,問題となる。生息数増加や生息地拡大,生活スタイルの変化から,今後更に保護数増加と保護地域拡大が予測される。なんらかの根本的な改革を必要としているだろう。

  • 角田 真穂
    2016 年 21 巻 4 号 p. 131-135
    発行日: 2016/12/22
    公開日: 2017/06/09
    ジャーナル フリー

    「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」によって希少種は重要感染症への罹患など,特殊な条件下以外での安楽殺を行うことはできない。そのため,希少種の傷病鳥獣救護においては,野外放鳥,放獣が困難となった個体は基本的には終生飼育となる。そのような状況の中,年間20件近い希少猛禽類の生体収容がある釧路湿原野生生物保護センター(以下WLC)ではオオワシ,オジロワシの終生飼育個体数が年々増加しており,本来の救護業務に支障をきたし始めている。現在WLCでは終生飼育個体を供血,普及啓発,事故防止対策の効果検証などに活用する努力がされているが,実際に活用されている個体は少ない。今後,施設の限られたキャパシティの中で種の保存に効果的な救護業務を実施するならば,終生飼育個体をただ継続飼育するのではなく,安楽殺の検討や,さらなる活用方法の模索など,新たな対応が求められる。

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