日本野生動物医学会誌
Online ISSN : 2185-744X
Print ISSN : 1342-6133
ISSN-L : 1342-6133
22 巻 , 1 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
特集論文
  • 冨川 創平
    2017 年 22 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/06/08
    ジャーナル フリー

     おびひろ動物園と帯広畜産大学は,立地性を生かした共同研究を行っている。おびひろ動物園の展示動物が死亡し園内で死因の特定ができなかった場合,帯広畜産大学で詳細な診断を行うことがある。直近の例では,おびひろ動物園で飼育展示していたクジャクバト(Columba livia)1羽が死亡し,帯広畜産大学でハトトリコモナス(Trichomonas gallinae)感染症と診断された。おびひろ動物園内における感染実態の解明と対策のため,帯広畜産大学と連携して園内の感染状況を調査したところ,同居クジャクバト以外に3種類の鳥類で感染が確認された。感染が確認された鳥類は,北海道で保護された野生動物由来であった。現在,外部団体からの助成金を活用し,北海道内の野鳥や飼育下鳥類を対象とした感染実態解明のための調査を行っている。北海道のような自然豊かな地域にとって,動物園が果たすべき役割は大きい。大学と連携した研究活動は,動物園が野生動物の調査研究の場として社会的に認知されるための強力な一助になる可能性がある。

  • 中村 亮平
    2017 年 22 巻 1 号 p. 5-7
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/06/08
    ジャーナル フリー

    旭川市旭山動物園で行っている研究・教育・保全活動について紹介する。獣医療分野からはシンリンオオカミの皮膚移植と頻回麻酔によって断脚を防ぎ,個体のQOL向上につながった症例,繁殖生理分野からはホッキョクグマのカテーテル法による採精の取り組み,また,飼育担当者が行ったチンパンジーの行動観察およびクマタカの介添え給餌についての報告を紹介する。動物園における教育および保全活動についても事例を紹介する。動物園という現場で獣医師および飼育係がどのような活動を行っているかを伝えたい。

  • 吉野 智生
    2017 年 22 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/06/08
    ジャーナル フリー

     釧路市では動物園設立以前から長年タンチョウの保護活動や生態研究が行われ,現在動物園では主に保護収容,傷病治療,死因検索,標本保管,飼育展示や繁殖を実施している。しかし近年の収容件数の増加や,実施主体や所管部署の変更等による過去の記録の散逸が課題である。収容件数増加に伴って蓄積される死体も増加しており,これらを単なる生ゴミや冷凍庫の肥やしのままに貶めないために当園が果たすべき役割は大きい。過去から続く膨大なデータは生息地や個体の変遷を反映し,飼育管理あるいは野外での保全に資する様々な可能性を秘めている。今までにも大学等他機関と連携した標本作製,展示,教育,分析等が行われてきたが,まだ不十分であり,更なる利用のためには統一性のあるデータの整理と標本管理,利用ルール,適切な保管施設が求められる。一方,収容要因の7割は何らかの事故であり,また全体の6割は死体で収容され残りの多くも手の施しようがなくなってから収容される。治療や飼育技術の向上もあり生残例も増えたが,受入れには限界もある。タンチョウの分布拡大に伴い収容地域も拡大し,地域ごとに保護要因は異なるため,事例分析により発生の予測や防止を行い,収容件数を減らす必要がある。またこのような現状はあまり知られていないため,死体,傷病個体,治療経過,各種標本,データ等,様々なものを利用した情報公開や普及啓発が必要である。

  • 高江洲 昇
    2017 年 22 巻 1 号 p. 15-19
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/06/08
    ジャーナル フリー

     動物園の主な役割の1つとして研究が挙げられるが,動物園では研究のための人員,設備および予算は限定的であるため,外部機関と連携することが重要である。円山動物園における外部機関との研究事例を紹介しながら動物園における研究体制について考察する。円山動物園では,北海道大学獣医学研究科繁殖学教室の協力のもと,希少動物への人工繁殖技術の応用として,外尿道口からカテーテルを挿入する方法による精液採取の研究を実施している。ユキヒョウ,ホッキョクグマおよびブチハイエナから精液を採取することに成功しており,アムールトラについては精液採取後に人工授精を実施した。希少動物種の保全および多くの動物種の繁殖管理に重要な研究であり,大学からの専門的な技術や設備の支援により充実したものとなっている。続いて,野生動物調査事業者を中心とした任意団体と共同で行っている札幌市内の野生コウモリに関する研究を紹介する。制限はあるものの一般市民も参加可能という特徴があり,捕獲調査および捕獲したコウモリの飼育を通じてコウモリの生息状況の把握および生態の解明を目指している。こちらは研究目的の達成だけでなく,一般市民への教育効果が期待できる。外部機関と協働しながら行う,種の保全および教育などの動物園の重要な機能と結びついたこのような研究が動物園における研究の特色であり,今後動物園の価値を高めていくと考える。

症例報告
feedback
Top