日本野生動物医学会誌
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27 巻, 1 号
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原著論文
  • 野田 亜矢子, 畑瀬 淳, 屋野丸 勢津子, 楠田 哲士
    原稿種別: 原著論文
    2022 年 27 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2022/03/01
    公開日: 2022/05/02
    ジャーナル フリー

    動物園で飼育している成獣の雌ホンドギツネVulpes vulpes japonica 2頭の糞中および血中の性ステロイドホルモン濃度の測定を行い,繁殖期の外貌変化や行動の変化を観察した。その結果,血中エストラジオール-17β(E2)濃度については1月中に1回のみピークが認められ,その後急減した。血中および糞中プロジェステロン(P4)濃度は血中E2濃度の上昇に連動して急増し,急激なピークの後漸減しながらおよそ2ヵ月間比較的高い値を維持した。血中E2濃度の上昇が見られた1月下旬には陰部の腫脹が認められ,1週間程度継続した。2月下旬には乳腺の腫脹,3月上旬には乳腺周りの脱毛が見られるようになり,その後は乳汁様の白色の液体の分泌が認められた。 4月上旬には「人の腕を巣箱に運び込もうとする」,「巣箱に差し入れた人の腕を抱きかかえてなめ続ける」などの行動が見られるようになった。性ホルモン動態から,ホンドギツネは季節性の単発情動物で,妊娠,非妊娠に関わらず黄体期が妊娠期と同様に続く,他のイヌ科動物と同様の特徴が認められた。また,P4濃度増加期の後半からイヌで見られる偽妊娠と同様の行動が認められ,ホンドギツネでも偽妊娠が存在する可能性が示唆された。群れ動物ではないホンドギツネの偽妊娠の意義については,育子の際のヘルパー行動との関連性が考えられた。

  • 今竹 翔一朗, 今泉 法子, 藤﨑 ひなこ, 大橋 勇希, 長田 栄二, 脇谷 晶一, 保田 昌宏
    原稿種別: 原著論文
    2022 年 27 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 2022/03/01
    公開日: 2022/05/02
    ジャーナル フリー

    宮崎県日向市には特定外来生物であるスウィンホーキノボリトカゲが定着し,生態系への影響が危惧されている。個体数抑制のために,農業害虫の駆除で用いられる不妊虫放飼を参考に,不妊化した雄を放出し繁殖を抑制できるかどうか検討することにした。まず本研究では,日向市で採集した本種の雄にγ線を照射し不妊化の可否を検討した。空気吸収線量として5,10,15Gyの照射から1ヵ月飼育した個体,10Gyの単回照射から3ヵ月飼育した個体および10Gyの照射から3ヵ月半後に再度10Gyを照射し4ヵ月飼育した個体を試験に用いた。試験個体は安楽殺したのち,精巣の状態を組織学的に検討した。その結果,5,10,15Gyを照射1ヵ月後のすべての個体で精巣の萎縮と精上皮の脱落が確認された。しかし,10Gyの照射後3ヵ月以上が経過した個体では精上皮の再生が見られ,永久不妊を誘導することはできなかった。γ線を2度照射された個体と単回照射の個体間では精上皮の再生度合いに違いが見られ,分割照射が本種の雄の不妊化に有効である可能性が示された。また,15Gyの照射を受けた個体は死亡率が高く,より高線量の照射は大量のトカゲを不妊化するという防除の方法上困難であることも明らかになった。本研究により,本種の雄の完全な不妊化は単回照射では困難であり,分割照射が必要であることが明らかになった。

総説
  • 竹鼻 一也, 川上 茂久, Chatchote Thitaram, 松野 啓太
    原稿種別: 総説
    2022 年 27 巻 1 号 p. 17-27
    発行日: 2022/03/01
    公開日: 2022/05/02
    ジャーナル フリー

    若齢アジアゾウに致死的出血病を引き起こす原因とされるElephant endotheliotropic herpesvirus(EEHV)は,世界中のゾウ飼育施設において多くの死亡例をもたらし,直近20年の間で飼育下アジアゾウの最も主要な死亡原因となっている。EEHVはゾウを自然宿主とし,他のヘルペスウイルス種と同様に潜伏感染する。若齢ゾウにおいては,何らかの原因で血中ウイルス量が異常上昇することに伴い,致死的出血病に至ることがある。発症後の治療には反応が乏しく,有効な治療法が確立されているとは言い難いものの,発症初期に積極的な治療を行うことで救命率向上が認められる。そのため,飼育施設においては日常的な検査体制の確立による早期診断および早期治療開始が求められる。

症例報告
資料
  • 脇 司, 尾針 由真, 林 慶, 森部 絢嗣, 松尾 加代子, 高島 康弘
    原稿種別: 資料
    2022 年 27 巻 1 号 p. 35-43
    発行日: 2022/03/01
    公開日: 2022/05/02
    ジャーナル フリー

    槍形吸虫類は世界的に分布し,ウシやニホンジカなどに寄生する畜産上重要な寄生虫である。本吸虫は,日本国内では陸産貝類の一種ヤマボタルガイCionella lubricaを第一中間宿主とし,第二中間宿主のアリ類を経由して終宿主の家畜に感染すると伝統的に考えられてきた。しかし,日本国内におけるヤマボタルガイの主な分布地域は秋田・岩手以北であり,それら以南の本陸貝種のほとんどいない地域においても槍形吸虫類が終宿主に感染することが報告されている。筆者らはヤマボタルガイの生息が確認されていない岐阜県下で陸貝を調べ,オオケマイマイAegista vulgivagaから得られたスポロシストが,そのミトコンドリアDNA cytochrome c oxidase subunit 1 部分配列から,中国槍形吸虫Dicrocoelium chinensisと同定されたことを報告した。これは,日本で野生の陸産貝類が槍形吸虫類に感染しているのを確認した初めての事例で,オオケマイマイが家畜や野生動物への槍形吸虫類の感染源となっていることを示唆するものである。本稿では発表内容の概要とあわせて調査経緯を紹介する。

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