日本野生動物医学会誌
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3 巻 , 1 号
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特集
  • 山口 剛士, 白田 一敏, 福士 秀人, 源 宣之, 金城 俊夫, 平井 克哉
    1998 年 3 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 1998年
    公開日: 2018/05/05
    ジャーナル フリー
    1991年から1993年にかけて, 岐阜県を中心に捕獲あるいは捕殺された哺乳類14種および鳥類20種の臓器, 糞便および血清から病原微生物, 薬剤耐性大腸菌および残留性有機塩素剤の検出を行った。Yersinia enterocolitica, Y.pseudotuberculosisおよびListeria monocytogenesが複数の哺乳類および鳥類から分離された。さらに, Chlamydia psittaci, Leptospira interrogans, Coxiella burnetii, Borrelia burgdorferiおよびハンタウイルスに対する抗体が検出され, 野生動物に人獣共通感染症が広く浸淫していることが示唆された。また, CDVおよびCAVに対する抗体がタヌキやキツネの他, シカ, ノネズミ, イノシシおよびツキノワグマからも検出され, 野生動物がイヌ由来の病原微生物に感染していることが明らかになった。また, 薬剤耐性大腸菌が人獣混住地域に棲息するニホンザル, カラス類, カモ類およびドバトの他, 山岳地帯に棲息するツキノワグマ, ライチョウおよびニホンカモシカからも検出され, ヒトの活動による環境汚染が山岳地域にまで及んでいることが推察された。残留性有機塩素剤は鳥類から高レベルに検出され, 特に棲息数が減少している猛禽類で残留濃度の高いことが注目された。
  • 柵木 利昭, 酒井 洋樹, 柳井 徳磨
    1998 年 3 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 1998年
    公開日: 2018/05/05
    ジャーナル フリー
    野生動物の病態および病因を解明し, その生育環境に発生した異変を知るためには, 比較病理学的アプローチが最も有効な手段の一つである。病理学検査から感染症, 代謝病や中毒などの病気の本態を見極めることにより, 引き続き発生する動物の斃死や個体数の急激な減少, さらにはヒトへの影響を最小限にくい止めることができる。野生動物医学における病理学の役割としては, 主として次の4つが挙げられる。それぞれについて我々の経験例を具体的に挙げる。1.感染症モニタリング:野生動物保護管理, 家畜衛生, 人獣共通伝染病, 2.生態学の指標, 3.環境汚染の指標, 4.比較病理学。将来的には, 野生動物の病理情報と標本を集中化して蓄積し, データベース化し, それを公開することが望ましい。
  • 坪田 敏男, 溝口 紀泰, 喜多 功
    1998 年 3 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 1998年
    公開日: 2018/05/05
    ジャーナル フリー
    ニホンツキノワグマUrsus thibetanus japonicusは, 本州, 四国および九州に生息する大型哺乳動物の一種である。しかしながら, 最近では, 九州はほぼ絶滅状態となり, さらに四国山地, 西中国地域, 東中国山地および紀伊半島が絶滅のおそれのある地域となっている。1990年から1994年にかけて岐阜県白川村において直接観察, 痕跡調査(糞分析)およびラジオトラッキングといった生態調査が行われた。その結果, ツキノワグマの春と秋の食物種がブナ林という生息環境と密接に関係していることが示された。すなわち, ツキノワグマは, ブナ豊作年にはブナの花芽や種子を食べ, 一方ブナ不作年には他の食物を利用していた。また, 1992年から1993年のツキノワグマの行動圏が求められ, その平均値は雄で6.4km^2, 雌で3.4km^2であった。主に飼育下でのツキノワグマの繁殖生理学的研究により, 雄では季節繁殖性が顕著に認められること, また雌では着床遅延や冬眠中の出産といったクマ類特有の繁殖生理機構を有していることが解明された。これらの結果より, 将来にわたってツキノワグマを保護していくためには, 繁殖の成功につながる十分な食物環境を確保することが肝要であると結論づけることができる。
  • 山崎 亨
    原稿種別: 本文
    1998 年 3 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 1998年
    公開日: 2018/05/05
    ジャーナル フリー
    滋賀県野生動物ドクター制度は昭和54年度の施行から18年が経過した。年間保護件数は100〜200である。業務内容は傷病野生鳥獣の治療のみであり, 野外に復帰できない個体の収容施設はなく, 死亡した個体の検査機能もない。傷病野生鳥獣はその種のみならず生息環境に関するさまざまな情報を有しており, 傷病野生鳥獣救護は, 総合的な野生動物保護管理業務体制の一環として機能してこそ, 野生動物の保護に寄与するものである。
原著
研究短報
  • 牧田 登之, 段 薇清, ウィヤヤント ヘリー
    1998 年 3 巻 1 号 p. 49-52
    発行日: 1998年
    公開日: 2018/05/05
    ジャーナル フリー
    インドネシアのツパイ(Tupaia javanica)の雄2および雌3頭の腸管には全て短管状(径0.25〜0.49cm, 長さ0.7〜1.2cm)の憩室が見られた。家禽のメッケル憩室に似てはいるが, むしろ単純な形の盲腸であると考えられた。これは直腸の終端から約4.0〜5.5cmに位置するので, それを大腸の長さとみなすならば, 小腸が59〜67cmであったことに較べて, 非常に短いことになる。盲腸の原始的な形態として興味深い。
症例報告
  • 浜 夏樹, 村田 浩一, 野田 亜矢子, 川口 美保子, 酒井 洋樹, 柵木 利昭, Vito G. SASSEVILLE, 柳井 徳磨
    1998 年 3 巻 1 号 p. 53-58
    発行日: 1998年
    公開日: 2018/05/05
    ジャーナル フリー
    動物園で飼育していた雌マヌルネコの1例が突然元気がなくなり, 食欲が廃絶した。血液および生化学検査では, 貧血, 著明な好中球の左方移動, 低リンパ血症, 高蛋白血症, 尿素窒素およびクレアチニンの上昇, 電気泳動像ではガンマーグロブリン分画の著明な増加が認められた。尿検査では, 蛋白尿と潜血が認められた。血清抗体検査では, ネコ伝染性腹膜炎(FIP)抗体の著明な上昇(25,600)がみられたが, ネコ白血病ウイルス(FLV)抗原およびネコ免疫不全ウイルス(FIV)抗体はそれぞれ陰性であった。剖検では, 左右腎臓は腫大し, 巣状多中心性, 一部は癒合しつつある白色結節が皮質に認められた。肝臓では, 実質内に小壊死巣が散見された。胸水および腹水の貯留は認められなかった。組織学的には, 血管炎を伴う壊死あるいは好中球の浸潤を伴う肉芽腫性反応が, 腎皮質, 肝臓, リンパ節および肺胸膜に種々の程度に認められた。直接蛍光抗体法によりFIPV抗原が肉芽腫病変内に浸潤する大食細胞に認められた。以上のことから, 本例は非滲出型ネコ伝染性腹膜炎と診断された。また, 動物園における野生ネコ科動物への同ウイルスの感染および発病の可能性が示された。
  • 岩田 惠理
    1998 年 3 巻 1 号 p. 59-63
    発行日: 1998年
    公開日: 2018/05/05
    ジャーナル フリー
    飼育下の雄のカリフォルニアアシカZalophus californianusにてんかん様の発作が頻回認められた。この症例に試験的にフェノバルビタールを日量約2.0mg/kgで投与したところ, 発作の発生頻度が大幅に減少し, 現在も同様の投与量で発作を抑制することに成功している。定期的に採血を行い, 血清フェノバルビタールと肝機能のモニターを行った結果, GGT(Gamma Glutamyl Transpeptidase)の軽度な上昇が認められた。
  • 進藤 順治
    1998 年 3 巻 1 号 p. 65-68
    発行日: 1998年
    公開日: 2018/05/05
    ジャーナル フリー
    新潟市水族館で飼育していた推定20歳の雄のフンボルトペンギンが死亡した。剖検の結果, 嘴基部に約1.5cmの黒色腫瘤があり, 各臓器にも大小さまざまな黒色結節がみられた。これらは病理組織検査により悪性黒色腫と診断された。
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