学術情報の流通において,研究者は雑誌から新しい知見を入手すると同時に,研究者自身の成果を発表する場としての機能を果たす。そして,その結果,研究者の業績が認定されることになる。日本の研究者の場合,特に,成果の発表の場としての雑誌に注目すると,言語の問題が浮かび上がってくる。現在日本では,国内で生産される論文の国際的な流通を考慮し,日本語で書かれた「和文誌」の他に,英語を始めとする欧米の言語で書かれた「欧文誌」,両者が混在する雑誌を編集,出版している。本稿では,国内で出版されている科学技術分野のこれらの雑誌が数量面ではどの様な特徴を持っているかをまず検討した。その結果,分野によって大きな差異があることが分かった。また,既存の研究から研究者がどの様に投稿先の雑誌を選択しているかを検討したところ,投稿する際の政治的な配慮,投稿先の雑誌に対する自分の評価等によって選択されることが分かった。雑誌一般の特徴として,言語の問題を論じるのではなく,各分野の構造や研究者自身がおかれている状況などの個別の状況との関わりで検討する必要がある。
抄録全体を表示