日本社会は,20世紀後半以来,情報通信技術を中心としたIT化の波に覆われている。デジタル化,インターネットの普及は,生活全般に多大な影響を与えている。行政の分野もまた例外ではない。政府は,「行政情報のデジタル化」を一貫した政策として掲げ続けており,日本社会はもはや「電子政府」の時代に突入したともいわれる。しかしその一方で,「電子政府」を支える法的基盤である情報ネットワーク法の整備は,未だ十分ではない。情報ネットワーク法の標準装備の一つである個人情報保護に関する法制度の欠落,IT化の波から取り残される人々の問題等は,その象徴的存在である。日本社会を真の情報社会へと深化させるためには,これらの問題を克服することが課題となろう。
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