学術団体が発信する情報は, かつてはその学会に属する会員だけが知りえるものが多かったことだろう。その団体が標榜する学問領域の情報にしても, 学会誌という閉じられた世界の中にのみ, 情報は存在した。学会誌は図書館購読というシステムにより, 情報は外へ向かって提供された。しかしながら, 学会の議事録や学会大会の要旨集などは, ある時期までは, 学会誌よりもはるかに人々の目には触れなかった。大会参加者だけに要旨は配布され, 議事録は, 間違いなく記録されたのだが, 多くは, 記録することに意義があり, 公の人々の目を意識されたものではなかった。しかし, 学会という存在が, 同好会, サークルから次第に脱却していく中で, 発信するその情報は, より広く人々に公開するようにも義務付けられてきた。と同時に, インターネットの出現が圧倒的にその情報流通を変えてしまったといえる。
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