書物の誕生と同時に古書は生まれ,書物の流通の歴史が始る。書店の初期の形態は,新刊書の制作から販売,さらに古書の売買も伴うものであった。書物の刊行が増えるに従って新刊書店と古書店は分離し,流通の仕方も変わった。古書業界は業者間の交換市を経営し,需要と供給の関係から販売価格を決めるシステムを確立した。全国組織を作り貴重な古書を掘り起こし,古書の後世への伝達という役目を果たしてきた。21世紀に入り,書物の世界にもデジタル化の波が押し寄せてきた。書物という形態に大きな変革が起きようとしているが,1冊1冊に個性が備わる古書の価値を見極める仕事として,今後ますますその専門的な知識と経験が問われるようになってきた。
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