我が国の戦後のコンテンツ文化(漫画,アニメーション,特撮,ゲームなど)における様々な物理的蓄積について,先行する歴史「資料」の保存管理も念頭に置きながら,コンテンツ文化における「資料」の位置づけと特性,保存管理,さらに展示について,これまでの経緯と今後の課題について概説した。
企業にとって,自社の活動の足跡を示す資料は貴重な資産となる。将来,これらの資料に目を通した社員は,これから進む方向を判断する上での指針が得られるであろう。そこで当館では,自社の知的・感性的資産が将来にわたって有効活用されるように収集保存をしている。多岐にわたる収蔵品の中から化粧品と制服の保存について紹介する。化粧品は一社の歴史にとどまらず近代日本の技術開発や産業文化の歴史を伝えることができる。さらに外装デザインは時代の雰囲気や芸術性まで感じさせるものがある。その化粧品の価値と資生堂の美意識をお客さまに伝えるスタッフの制服も合わせて保存し,活用している。
コレクション対象である印刷物並びに関連資料は時代的には幅広いが,印刷・発行年代が明らかな資料の大半を占めるのが,近現代の資料である。すなわち,大量印刷時代の印刷物であり,消耗品的色合いが濃い。これまで,博物館や美術館とは縁遠かった近現代の資料も,時を経て,当時の社会を知る上で重要な資料という認識が広まり,その価値も見直されてきている。しかし,こうした印刷物には,長期保存に適さない素材が用いられていることが多い。また,資料から得られる情報が乏しいこともある。こうした資料を取り扱う,印刷博物館の取り組みついてまとめる。
大学博物館はその大学の特色や方針が垣間見られ,一般市民への広報部門として注目されてきている。現在,東京理科大学の神楽坂キャンパスに位置する東京理科大学近代科学資料館は大学が遺し収集してきた科学技術遺産を基に「計算機の歴史」を中心とした展示と,毎年その時々のトピックスを中心に企画展示を行ってきた。科学技術をわかりやすく解説する科学コミュニケーターとして様々なイベントを企画してきた経験の基づき,大学の持つ所蔵資料を調査・保存する学芸員として行っているとりくみについて実例と考察を述べる。
お菓子の「おまけ」は,子どもの楽しみを倍増させるだけではなく,文化資源として時代を映す鏡でもある。本稿では,まず景表法に触れ,景品としての「おまけ」について説明する。その上で,「おまけ」そのものについての理解を深めるために,森永製菓の保有する様々な「おまけ」について取り上げる。森永製菓の史料室には1915年の「地理絵合わせ」カードに始まり,シール,小さなおもちゃ,商品パッケージと一体化した「おまけ」など,様々な「おまけ」が保存されている。最後に,「おまけ」の保存から活用までを,森永製菓の実例を紹介し,史資料としての「おまけ」の課題も指摘する。活用では,著作権法にも触れている。
京都服飾文化研究財団(KCI)は,株式会社ワコールの出捐によって1978年に設立された,西欧の服飾及び,服飾に関する文献資料を,体系的に収集・保存・研究・公開する機関であり,同時に日本人デザイナーの活躍の発信も使命としている。現在,主に17世紀から今日までの服飾資料を1万3千点,文献資料を1万6千点所蔵している。KCIの活動内容紹介と共に,KCIにおける様々な形状,時代,コンディション,素材の服飾資料について,それらの保管前の処置と,収蔵庫における保管方法の実例を紹介し,現時点及び将来的な問題点について考察する。