本稿の目的は,公開型専門図書館を取り巻く内外の状況を踏まえ,公開型専門図書館の現状把握を行い,今後の課題を検討し,解決の方策を提示することである。まず,公開型専門図書館の現状を,管理運営とサービスの側面から明らかにした。次に,公開型専門図書館の顕著な取り組み事例を参照し,二つの側面から課題の検討を行い,それを解決するための方策を提示した。具体的には次の点を提示した。管理運営においては,(1)ボランティアによる人的支援の導入,(2)交流を促進する場所としての機能,(3)外部資金の調達である。サービスにおいては,(1)レファレンス事例の公開,蔵書横断検索による利用機会の拡大,(2)社会人から児童・生徒までのサービス対象者層の拡大である。

筆者が参加する「ディープライブラリー・プロジェクト」は,専門図書館の横断検索サービス実現に向けて活動してきた。このプロジェクトのコンセプトについて,主に技術的な視点からまとめるとともに,今後の可能性についても提案する。また,近年,専門図書館のアウトリーチの必要性が高まっているが,ウェブサービスを活用したアウトリーチの手法についても,図書館蔵書検索サイト「カーリル」を運営する立場から考察する。
神奈川県資料室研究会の活動の中心は,8月を除く毎月開催している月例会である。月例会では,講演会,見学会,グループディスカッション等を行っている。理事会が月例会の企画・運営を行っており,年間計画を立てて総会に提案している。講演会では,電子ジャーナル・学術雑誌関連,実務関連,著作権関連などのテーマを中心に取り上げている。毎回詳細な記録を作成し,「神資研ニュース」と年報「神資研」に掲載している。小規模やワンパーソンで運営しているところが多い会員に対して,「泥臭さ」と「半歩先を行く」というモットーの元に月例会を開催しているところに,神資研が月例会を開催する意義がある。
評論家・大宅壮一が遺した雑誌コレクションを引き継ぎ,1971年に設立された雑誌図書館「大宅壮一文庫」。その前身である個人アーカイブズ「大宅資料室」から始まった雑誌収集やカードシステム,現在も受け継がれている“大宅式”といわれる独自の分類項目,所蔵雑誌とともに大きな特徴である雑誌記事索引の作成方法と変遷について解説する。インターネットの普及により容易に情報が得られるようになったが,“時代の証言”ともいえる雑誌記事索引をユニークな切り口で検索できるデータベース「Web OYA-bunko」の魅力,そして「大宅壮一文庫」の現在。

病院には医療関係者のための図書室と,患者のための図書室の二種類の図書室がある。前者は医学図書館であり,主に医学情報を提供している。地域医療支援病院などの3割程度に設置されており,相互協力(ILLでの文献複写依頼)を中心に司書が一人で仕事をしている。後者は,患者・家族・市民のために医療・健康情報サービスを行っている。患者の立場に立ってインフォームドコンセントを支援する,という役割を担っている。全国に100以上の患者図書室が開設されている。それらの現状と問題点などを紹介する。さらに,一般市民に対する健康情報サービスが,公共図書館を中心に広がっているため,病院の図書室ばかりではなく,大学医学部図書館との連携・協力が求められている。
1996年に創設した民間デジタル・アーカイブ機関,Internet Archiveは広範な文化資源のアーカイブをおこなっている。そのうち,ウェブページのアーカイブ,テレビニュースと政治広告のアーカイブ,書籍の電子化について最近の動向を報告した。また2016年6月にInternet Archiveの本部で開催された,「非集中型ウェブ・サミット(Decentralized Web Summit:Locking the Web Open)」についても簡単に報告した。