今月は,「IoT:モノのインターネット」をテーマにお送りいたします。
現在,インターネットの普及はもちろんのこと,様々なセンサーの小型化,低価格化,省電力化が進み,これまでインターネット接続とは無縁だったモノにも各種センサーや情報通信端末が搭載されるようになってきました。さらに,私たち自身もスマートフォンの爆発的な普及により,インターネットに繋がった端末機器を携帯している時間が多くなり,自ずと様々な「モノ」がインターネットにつながることで受けられるサービスを享受するようになってきています。最近では「IoT:Internet of Things モノのインターネット」という言葉も定着してきています。
そこで今回の特集ではIoTに注目し,その最新動向や事例紹介を行うことにより,現在の正確な状況把握,課題点の認識,そして今後のサービス展開などを考える契機となることを目指し,専門家の方々に論じていただきました。
まず,境野哲氏には,IoTについて,現在の状況から今後の展望,課題について広範に論じていただきました。
続いて,IoTを活用した事例として,藤井篤之氏,中西華子氏には,現在,スマートシティのモデル地域となっている福島県会津若松市の事例について論じていただきました。
また,村居昌俊氏には,スマートフォンやビーコンを活用し新たなサービスを展開している大学図書館の事例について論じいただきました。
一方で,これまでインターネットに接続していなかったモノがインターネットに接続することによる新たなリスクやセキュリティ対策といったことが求められてきています。そこで,佐々木良一氏には,実際のIoTシステムに対するサイバー攻撃の事例,セキュリティ対策,リスク評価等について論じていただきました。
最後に,別所正博氏,坂村 健氏には,今後到来するであろうIoT時代に活躍できる人材の育成について,現在大学で行われている教育の事例を論じていただきました。
本特集が,インフォプロの方々にとって,今後ますます進展するであろうIoTについて,現状や課題を適切に把握し,活用するための一助となれば幸いです。
(会誌編集担当委員:田口忠祐(主査),長野裕恵,古橋英枝)
いま国内外でIoTやAIの活用が進み,その用途は,生産,物流,小売,設備保全,交通,医療など多岐にわたる。その背景には,コンピューターの小型高性能化,クラウドコンピューティングやモバイル通信の普及,ソフトウェア技術の進化がある。先進国では企業収益が伸び悩みコスト削減も限界に近づく中,ITで新事業を創出したいという企業や政府の期待も高い。しかし,IoTやAIにも,運用事故,サイバー攻撃,不正使用,軍事利用,依存症といったリスクがあることも忘れてはならない。IoTやAIを公共の福祉に役立て安全適切に運用するには,技術の標準化,法制度の整備,技術者と利用者の教育,そして産官学の国際協力が必要である。

福島県会津若松市はビッグデータ・アナリティクス産業創出を目的としたスマートシティに取り組んでいる。本記事では筆者が所属するアクセンチュア株式会社による取り組みを中心に,同市のスマートシティの特徴と経緯および展望を紹介する。同市のスマートシティの取り組みを支える構造は,ICT専門大学である会津大学を中心とした,組織,人,データ基盤であり,スマートシティの各テーマにおける実証を通じて,地域に企業が集まり,人が集まり,産業が集まっている。今後は,取り組みを進める中で直面している,オープン性,プライバシー,競合性の各論点についての議論を深め,同市での取り組みの深化,他地域への展開を目指している。

近年,大学図書館に期待される機能や役割はますます増加している。本学図書館では,従来コレクションの構築と適切なナビゲーションを主機能としていたが,学修支援や教育活動への直接の関与が必要とされはじめている。そのため,2016年9月開館の新図書館では,人的リソースを定型業務から学修支援や教育活動への関与へとシフト,場所的リソースを本の置き場所から学修の場所へとシフトする必要があり,ICT機器やネットワークによる仕掛けを模索してきた。そこで本学新図書館におけるICT機器の導入経緯,選定方針,各機能,運用方法などを紹介していきたい。
近年,IoT(Internet of Things)が注目されており,異なる分野の機器やシステムが相互に連携し,新しいサービスの提供が可能となると期待されている。一方,IoTを構成するシステムのセキュリティがIoTを実用化する上で大きな課題になっている。本稿では,最初に,重要インフラの制御システムや,コネクティドカー,防犯カメラなどの主要なIoTシステムに対する過去のサイバー攻撃や今後考えうる攻撃方法について紹介する。次に,IoT機器の認証基盤や,リスク評価手法,サプライチェーン対策なども含む種々のセキュリティ対策について解説している。IoTシステムのセキュリティの問題は今後ますます重要になると考えられ,研究の強化が必要となっている。
IoT時代に活躍できる人材には,コンピュータ・サイエンスを身につけることと,自分と違う能力をもつ仲間と連携できることが重要だと考えられる。2017年4月に開設した東洋大学情報連携学部(INIAD)は,このような考えの下で独創的な教育を行っている。INIADでは,連携を身につけるための空間と,先進的なIoT環境を備えたINIAD Hub-1という校舎を新たに建て,コンピュータ・サイエンスの教育や,様々なプロジェクトのフィールドとして,その環境を活用している。本稿では,IoT時代の教育の観点から,INIADの取り組みを紹介する。
本稿では,ユージーン・ガーフィールド博士が開拓した情報資産や分析手法が,科学技術政策研究において,どのように活用されているかを,科学技術・学術政策研究所(NISTEP)におけるScience Citation Indexを用いた調査研究やサイエンスマップ調査の展開,これらの調査と科学技術政策立案との関係の変化を事例として概観する。
情報専門家の社会的任務を考えた。そして,それを達成するための技術と知識以前のものとして熱力学の第二法則などを取り上げて議論した。また,情報システム構築・運営のために市場原理を情報分野に適用することが不適切であることを述べた。更に,コンピューターと人間の脳の違いを述べ,それぞれの長所を有効活用した共同作業の可能性について考察した。最後に情報専門家が拠るべき情報理論を挙げて論じた。