情報の科学と技術
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68 巻, 1 号
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特集:拡散する「図書館」
  • 水野 翔彦
    2018 年 68 巻 1 号 p. 1
    発行日: 2018/01/01
    公開日: 2018/01/01
    ジャーナル フリー

    今月号の特集は「拡散する『図書館』」です。

    図書館の建物,所蔵資料,職員を指して「図書館の三要素」とすることは広く知られています。しかし,一方で巡回文庫,家庭文庫,移動図書館,緑陰図書館といった,必ずしも三要素すべてを前提としない取り組みも古くから実践されてきています。図書館を取り巻く社会や制度・政策の変化,情報技術の発展,利用者の生活や研究スタイルの変化など,変わりゆく環境の中で,どのように図書館を運営し,利用者へサービスを届けるのか。三要素すべてを前提としない「図書館」を実践する取り組みは現在もなお進化し続けています。

    企画の検討開始時には,移動図書館や分館など主に空間的な意味での「拡散」という観点で検討をしていましたが,エンベディッド・ライブラリアンやヒューマンライブラリーなど様々な事例を検討する中で,「図書館」という概念自体が伝統的な図書館の手から離れ,自発的に変化しつつある状況が見えてきました。本特集では,社会の中で自発的に広がり変容する「図書館」の姿を「拡散」という語であらわし,「どのように,また誰によって『図書館』は実践されうるのか」という観点の特集としました。

    総論では,議論のための前提として,慶應義塾大学の松本直樹先生に図書館の基本的機能や要素に関わる新たな状況について,国内外の制度上の動向とサービスの観点から整理していただきました。

    つづいて,十文字学園女子大学の石川敬史先生には,公立図書館による移動図書館や各種の「はたらく自動車」に関する豊富な事例から「移動する活動」の特質と可能性について論じていただきました。京都ノートルダム女子大学の鎌田均先生には北米の図書館界で活躍するエンベディッド・ライブラリアンを題材として,その背景となっている図書館環境の変化や既存の図書館サービスへの影響について述べていただきました。最後に明治大学の横田雅弘先生からは,人間が図書館資料として扱われ利用者へ貸し出されるヒューマンライブラリーの事例からその意味と効果について,またヒューマンライブラリーでの経験から「人と歴史の記憶装置」としての図書館について論じていただきました。

    図書館の最前線,あるいはその外側で起こりつつある様々な「図書館」の事例を通じて,読者のみなさまの考える図書館像について見つめなおすきっかけとしていただければと思います。

    (会誌編集担当委員:水野翔彦(主査),久松薫子,古橋英枝,長屋俊)

  • 松本 直樹
    2018 年 68 巻 1 号 p. 2-7
    発行日: 2018/01/01
    公開日: 2018/01/01
    ジャーナル フリー

    図書館法は,図書館について,資料を収集,整理,保存,提供する機関であると定義している。また,一般に図書館の3要素として建物,資料,職員が挙げられる。これらは図書館の基本的機能,要素といえよう。しかし,それらの機能,要素は固定的なものではなく,社会経済状況等の変化に応じて変容する。本稿では,図書館の基本的機能,要素に関わる新たな状況について,国際的・国内的な制度的動向とサービスの観点から整理した。結果,図書館に関わる4機能,3要素には多様な展開が見られた。このことは,社会的制度としての図書館が担う範囲が問われていることを意味する。

  • 石川 敬史
    2018 年 68 巻 1 号 p. 8-13
    発行日: 2018/01/01
    公開日: 2018/01/01
    ジャーナル フリー

    公立図書館による移動図書館車の台数はゆるやかに減少傾向にあるが,近年は各地でさまざまな特徴をみることができる。本稿では,自動車という移動手段に焦点を当てた「移動する活動」(「はたらく自動車」の活動)を対象として,公立図書館による移動図書館をはじめ,民間団体等による本に関する活動,さらには移動博物館車,移動天文台車,移動販売車における活動事例を読み進める。これらを踏まえながら,こうした「はたらく自動車」の特質について,①メディアとしての自動車,②想いを運ぶ自動車,③地域の「時計」になる自動車,④境界を越える自動車,という4点の視角から序論的に解読した。

  • 鎌田 均
    2018 年 68 巻 1 号 p. 14-18
    発行日: 2018/01/01
    公開日: 2018/01/01
    ジャーナル フリー

    北米の図書館界では,「エンベディッド・ライブラリアン」と呼ばれる利用者サービスの形態が注目されている。そこには,図書館司書が図書館を離れた場所で活動し,その場所において情報サービスを提供するという特徴がある。本稿では,アメリカ,カナダの大学図書館におけるエンベディッド・ライブラリアンを中心にしつつ,公共図書館との関わりも検討し,エンベディッド・ライブラリアンが導入される背景にある図書館環境の変化を挙げる。そして,エンベディッド・ライブラリアンがもたらす利用者への効果について従来の利用者サービスと比較しつつ述べ,それが図書館に与える可能性がある変化について述べる。

  • 横田 雅弘
    2018 年 68 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 2018/01/01
    公開日: 2018/01/01
    ジャーナル フリー

    2000年にデンマークの野外ロックフェスティバルの片隅で始まった人を貸し出す図書館「ヒューマンライブラリー」は,瞬く間に世界中に広がり,現在は世界90か国以上で開催されている。日本でも大学を中心に図書館での開催もあり,筆者はゼミ活動として主催して今年9回目を迎える。すでに全国で100回程度開催されていると思われる。2017年10月には日本ヒューマンライブラリー学会も立ち上がり,研究関心も高まってきた。この仮想の「図書館」では,いったい何が行われ,何が起こっているのか。偏見の低減にも効果があるとされるこの催しの意味と効果について述べる。

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