情報の科学と技術
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69 巻, 8 号
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特集:世界の科学技術政策の動向
  • 渋谷 亮介
    2019 年 69 巻 8 号 p. 357
    発行日: 2019/08/01
    公開日: 2019/08/01
    ジャーナル フリー

    2019年8月号の特集は「世界の科学技術政策の動向」です。従来,伝統的な学問分野の体系に即して研究が多く行われてきましたが,科学技術の発展や災害対応の要請もあり,学際分野研究と呼ばれるような異分野に跨がる新たな学問分野の研究が盛んになっています。また情報技術の発展に伴ってオープンサイエンスが進化し,異業種・異分野の専門家が協業した研究も珍しいことではなくなりました。これらの変化を踏まえますと,インフォプロは担当分野の情報だけではなく,近接分野の動向も把握する必要が出てきており,今後の科学技術の方向性を知ることは重要です。そこで今回の特集では,国内外の科学技術政策の動向と,それに基づいて科学館・博物館に求められる役割に焦点を当てました。

    はじめに文部科学省科学技術・学術政策研究所の赤池伸一氏には,日本の科学技術政策の基本ともいえる科学技術基本計画の歴史,現在の科学技術政策の概要と今後の課題について解説していただきました。次に,米国の科学政策の動向をレポートするウェブサイト「米国の科学技術」を運営されている遠藤悟氏には,米国,英国,ドイツの科学技術政策の動向と,各国におけるアカデミックコミュニティーによる政策への関与度の違いについて,事例を挙げてご執筆いただきました。続いて,昨今,科学技術の発展が目覚ましい中国について,国立研究開発法人科学技術振興機構の周少丹氏には,中国の科学技術政策の特徴と,科学技術の発展の礎となったターニングポイントについてご執筆いただきました。

    また日本では,イノベーション人材の育成の場として科学館・博物館が注目されています。そこで,一般財団法人日本宇宙フォーラムの國谷実氏には,科学館・博物館の設立の歴史と,役目の変化,イノベーション型博物館としての今後の役割についてご執筆いただきました。

    日本を含め各国の科学技術政策は,科学技術の進展や時流に応じて変わっていきます。そこで,国立国会図書館の榎孝浩氏には,日本,米国,欧州,中国の科学技術政策を調べる上で便利な資料をご紹介いただきました。

    1つの国の科学技術政策を採り上げるだけでも大きなボリュームがありますが,重要なポイントに絞って分かりやすくご執筆いただきました。本特集が,皆様の日々の活動において一助となることを願っています。

    (会誌編集担当委員:渋谷亮介(主査),大橋拓真,當舎夕希子,野村紀匡)

  • 赤池 伸一
    2019 年 69 巻 8 号 p. 358-363
    発行日: 2019/08/01
    公開日: 2019/08/01
    ジャーナル フリー

    科学技術基本計画は,科学技術基本法に基づき5年毎に策定される政府全体の科学技術政策の基本文書であり,現在,第5期科学技術基本計画の計画期間の中途にある。次期科学技術基本計画の策定に向け,政府内外での検討が始まりつつある。本稿では,科学技術政策の枠組みとして,その対象と政策領域及び組織の構造を示すとともに,戦前からの科学技術行政体制の歴史を概観する。また,科学技術を巡る歴史的背景を踏まえ,科学技術会議の基本答申,科学技術政策大綱,各期の科学技術基本計画等の特徴を示す。さらに,次期基本計画の策定に向けて,科学技術政策における今後の課題を展望する。

  • 遠藤 悟
    2019 年 69 巻 8 号 p. 364-370
    発行日: 2019/08/01
    公開日: 2019/08/01
    ジャーナル フリー

    米国,ドイツ,英国の科学技術政策は,それぞれの国の政治システムの相違に加え,各国の研究活動の様態やアカデミックコミュニティーが果たす役割等により異なる特徴が見られる。本稿においては,各国の最近の科学技術政策の動向を具体的な事例とともに紹介する。米国についてはトランプ政権の科学技術政策についてその歴史的背景とともに概観する。ドイツについては連邦政府と州との関係を通した研究活動高度化の取り組みについて整理する。英国については高等教育・研究法の成立に至る政策決定へのアカデミックコミュニティーの関与について報告する。そしてこれらの事例から,日本の科学技術政策への示唆について考える。

    Editor's pick

  • 周 少丹
    2019 年 69 巻 8 号 p. 371-375
    発行日: 2019/08/01
    公開日: 2019/08/01
    ジャーナル フリー

    本稿は,中国政府の科学技術政策の流れを追いかけ,「新しい研究開発システムの構築」「自立的発展方針の確立からナショナル・イノベーション・システムの構築へ」「全面的イノベーション駆動発展戦略の実施」を三つの段階に分けて概観したものである。わずか数十年で米国と肩を並べる科学技術大国にまでに発展してきた中国の科学技術をどのように把握すればよいのかが大きな課題である。中国の科学技術はボリュームが大きく,欧米との間の人員流動も激しく,中国の指導部ですら把握していない部分もある。そのため,本稿にて提示した中国の科学技術政策のターニングポイントをよく知ることは,中国を理解する重要なツールとなると考えている。

  • 國谷 実
    2019 年 69 巻 8 号 p. 376-381
    発行日: 2019/08/01
    公開日: 2019/08/01
    ジャーナル フリー

    日本の近代博物館の歴史,特に戦前の歴史をたどり,①殖産博物館,②集古博物館,③教育博物館,④通俗教育館(社会と科学の博物館),⑤科学博物館に分類する。これに対し,戦後の博物館は,社会教育法に基づく社会教育のための博物館に位置付けられており,特に②と⑤に特化している。しかし,戦後の博物館,――特にそのうちの科学博物館(科学館)は400~500館あると言われているが,近年,資金不足と老朽化や陳腐化によりその多くが転機に立たされている。今後,戦前の博物館の多様性を取り戻すことが重要であり,特に新しいイノベーションに貢献する科学館への方策を提言する。

  • 榎 孝浩
    2019 年 69 巻 8 号 p. 382-386
    発行日: 2019/08/01
    公開日: 2019/08/01
    ジャーナル フリー

    日本,米国,欧州,中国の科学技術・イノベーション政策の動向を調査するときに,便利な資料を紹介する。まず,公的機関の刊行資料を中心に,日本語資料を紹介する。続いて,国際機関,米国,欧州,中国の外国語資料を紹介する。最後に,日米欧の議会と科学技術・イノベーション政策の関わりを説明しながら,議会資料を紹介する。

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