2020年初の特集は「東京オリンピック1964-2020」です。
今年は東京オリンピック・パラリンピックが大きな社会的テーマの一つとなることに疑いはなさそうです。ウェブ記事や新聞に留まらず,学術雑誌でも特集テーマが組まれるほど幅広い影響があり,弊誌でも本テーマを取り上げることになりました。本特集では進化する情報技術や標準化技術を用いた取り組みを中心に紹介しつつ,1964年東京オリンピックとの比較も随所に交えながら,多様な角度からオリンピック・パラリンピックに関わる情報へ光を当てていくことを企図しています。
このような企画趣旨のもと,今回は5名の方々にご執筆をお願いしました。黒田優香氏(一般財団法人日本規格協会)からは,オリンピック・パラリンピックにおける案内用図記号の活用につきご紹介いただきました。松本祐一氏(東京都オリンピック・パラリンピック準備局)からは,オリンピック・パラリンピック期間における交通網のマネジメントに関する取り組みをご紹介いただきました。渡邉英徳氏(東京大学大学院情報学環)からは,デジタルアース・コンテンツ「東京五輪アーカイブ1964-2020」の制作と活用事例をご紹介いただきました。福嶋聖淳氏(国立国会図書館関西館)からは,国立国会図書館インターネット資料収集保存事業(WARP)によるオリンピック・パラリンピック関連サイト保存の取り組みを中心にご紹介いただきました。本橋充成氏(総務省情報通信政策課)からは,オリンピック・パラリンピックを背景に総務省が推進するICT化アクションプランにつきご紹介いただきました。
オリンピック・パラリンピックを支える社会的/文化的なインフラに目を向けると,そこには本特集でご紹介するような思いがけない技術の粋が込められています。本特集が読者の皆様に新たな視点を提供し,東京オリンピック・パラリンピックをより楽しむための一助となることを期待します。
(会誌編集担当委員:南山泰之(主査),今満亨崇,渋谷亮介,當舎夕希子)
2018年の訪日外国人数は過去最高を記録し,2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けてさらなる増加が見込まれている。訪日外国人の受け入れ対策が進む中,言語の壁を解消する情報伝達手段としてビジュアルコミュニケーションの活用に期待が高まっている。その中でも,“案内用図記号”は,1964年東京オリンピックにも深く関係していた。本稿は,案内用図記号と東京オリンピック・パラリンピックの関係性に焦点を当てた特集記事である。
東京オリンピック・パラリンピック競技大会(以下,東京2020大会)期間中,何も対策を行わなかった場合,道路においては大会関係車両や物流車両の増加などで交通状況は厳しくなる見通しである。首都高の渋滞は現況の2倍近くまで悪化,鉄道については,観客の利用等を要因として10%増,また会場周辺駅や近傍路線を中心に局所的な混雑が発生することが予想されている。東京2020大会の輸送を安全・円滑に行うための基本的な考えとして,円滑な大会輸送の実現と都市活動維持との両立に向け,①交通需要マネジメント(TDM),②道路の交通システムマネジメント(TSM),③公共交通輸送マネジメントについて,入念な準備と柔軟な対応及び,レガシーの提起と継承を掲げて,検討・取組を行っている。本稿では,これらの取組について紹介する。
私たちは,社会に“ストック”されている1964年大会の資料を“フロー”化するデジタルアース・コンテンツ「東京五輪アーカイブ1964-2020」を制作した。本稿で説明した情報デザインによって,ばらばらの粒子のように“ストック”され,固化していたデータが結び付けられ,液体のように一体となって流れる“フロー”となる。この“フロー”をさまざまなデバイスを通して生み出すことにより,資料についてのコミュニケーションが創発し,情報の価値が高まる。その結果として,55年前・1年後の五輪が,ひとつの流れのなかに位置付けられ,過去に学び・未来に活かす「継承」の機運を生み出せると,私たちは考えている。
インターネット上の情報は今日の社会において欠かすことのできないものとなっており,2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピック競技大会(東京2020大会)を後世に伝えていくためにも,それらの保存が課題の一つである。国立国会図書館はインターネット資料収集保存事業(WARP)により,東京2020大会に関連する様々なウェブサイトの保存に努めている。ウェブアーカイブに関する国際協力組織であるIIPCにおいても同様に,オリンピック・パラリンピックに関するウェブサイトの保存が図られている。近年は,ウェブアーカイブの研究利用も進められており,オリンピックやスポーツ関連のウェブアーカイブを利用した試みもなされている。
「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会」は,我が国のICTに関わるサービスやインフラの高度化を図り,世界に日本のICTを発信する最高のチャンスとして期待される。このことを踏まえ,総務省では有識者懇談会を開催し,2020年東京大会以降の我が国の持続的成長も見据えた,2020年に向けた社会全体のICT化の推進の在り方について検討を行ってきた。本稿では,懇談会で策定したアクションプラン及び2020年東京大会に向けた提言と,その中で取り上げた各施策の進捗状況について紹介するものである。
本研究では,投資ファンドとして先端技術を持つ投資先を選定するという設定のもと,社会課題を解決するための先端技術の中から,技術革新や市場拡大が期待される家庭用サービスロボットに着目し,技術動向分析および技術動向予測を行った。これらの情報と研究メンバーの想像する将来の生活から,ニーズはあるが,現在製品が普及していない家庭用調理ロボットを2030年製品化のターゲットとして選択した。この家庭用調理ロボットについて,理想とする将来像と現状の技術とのギャップから,把持技術,安全技術,味のデジタル化技術をキー技術として特定し,これらの技術において先端技術をもつベンチャーを探索し,最終的に2社を投資先として選定した。
2010年から,3年に一度,10年にわたりMEDLINE収録 国内医学雑誌の採録数,電子化状況,インパクトファクターなどについて定点観測を行い経時変化を分析した。この間に,英文誌の割合の増加,海外プラットフォームの割合の増加,国内プラットフォームのJ-STAGEへの集約,インパクトファクターの上昇などの傾向が見られた。2017年に採録数が急減したが,多くはMEDLINEの収録ポリシーの変更に対応できなかったジャーナルであり,電子データの重要性が明らかとなった。