情報の科学と技術
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75 巻, 8 号
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特集:保存されにくい資料
  • 赤山 みほ
    2025 年75 巻8 号 p. 347
    発行日: 2025/08/01
    公開日: 2025/08/01
    ジャーナル フリー

    本特集では,保存されにくい資料のなかでも灰色文献とされる大学紀要や会議録,エフェメラ資料,同人誌資料,ミニコミ誌を主としたフリーペーパーに焦点をあてました。図書館が主として収集,整理,保存している資料としては,一般流通で入手することが可能な資料に加えて,公立図書館の場合は設置者である行政から寄贈される資料が想定されています。しかし,一般流通で入手しにくい資料や寄贈される可能性が低い資料については,図書館が保存できていないことがあります。そこで,本特集では,保存されにくい資料として,灰色文献を中心とした資料に焦点をあてました。

    まず,保存されにくい資料として灰色文献について池田貴儀氏にご執筆いただきました。灰色文献のアクセシビリティを中心として,灰色文献の定義や,媒体ごとの保存の困難さについてもふれられています。

    次に,大学紀要の収集と保存について設樂成実氏,天野絵里子氏にご執筆いただきました。大学図書館における紀要の収集・保存について質問紙調査を実施され,図書館員へのインタビュー調査も実施されています。質問紙調査では,収集基準等の有無等についてたずねられ,インタビュー調査では収集や保存における工夫や課題等についてたずねられています。

    次に,医学分野における会議録の収集と管理について,村上陽菜氏にご執筆いただきました。会議録についての定義と先行研究をふまえたうえで,医学分野における会議録について概観され,日本医薬情報センター附属図書館で実施されている収集と管理についてふれられています。

    次に,広告(エフェメラ)資料の保存について,香月歩氏,朱心茹氏にご執筆いただきました。観光エフェメラ資料として,観光パンフレットを主として国際的な事例とともに日本国内の事例に関し書かれています。事例調査の結果から,収集・保存方法としてメタデータの構築を中心としてメタデータモデルのプロトタイプ構築,デジタルアーカイブの試作についてもふれられています。

    次に,同人誌資料のアーカイブについて,折居佳央里氏に明治大学米沢嘉博記念図書館・現代マンガ図書館における事例としてご執筆いただきました。自館における蔵書と閲覧提供サービスについて,また目録作成と保存における課題,提供体制についてふれられています。

    最後に,図書館におけるフリーペーパーの保存とその課題について,東野善男氏にご執筆いただきました。フリーペーパーの定義から,保存における課題,フリーペーパー専門店の歴史的変遷,関係者へのインタビューを中心として書かれています。

    本特集が,保存されにくい資料についての背景および個別資料の状況や保存方法について知っていただくことはもちろん,知の成果物を後世に伝えることの難しさを考えるきっかけになれば幸いです。本特集は,灰色文献を中心として幅広い分野を扱うことを目指したため,他の保存されにくい資料への目配りができませんでしたが,その点は編集担当委員の力不足としてご容赦頂ければ幸いです。

    最後に,本特集記事の執筆をお引き受けくださり,ご寄稿いただきました執筆者の皆さまに,深く御礼申し上げます。

    (会誌編集担当委員:赤山みほ(主査),松井涼真,森口歩)

  • 池田 貴儀
    2025 年75 巻8 号 p. 348-353
    発行日: 2025/08/01
    公開日: 2025/08/01
    ジャーナル フリー

    灰色文献は,一般の商業出版ルートでは入手が困難な資料の総称である。本稿では,灰色文献についてアクセシビリティの側面と保存の側面から取り上げる。まず,灰色文献のイメージ,色,定義と種類,特性について言及しながら,時代とともにアクセシビリティが変化している点を述べた。一方で,変わらないのは商業出版ルートの有無であり,これが灰色文献たる本質的な特性でもある。次に,保存の側面では,保存方針と保存基準について触れた後,紙媒体,パッケージ形態,インターネット情報の3点についてその対応と課題を整理した。そして,永続的な保存のためには,労力と運用コストが伴うことと,保存方針と保存基準の重要であることを示した。

  • 設樂 成実, 天野 絵里子
    2025 年75 巻8 号 p. 354-359
    発行日: 2025/08/01
    公開日: 2025/08/01
    ジャーナル フリー

    本稿では図書館における大学紀要の収集と保存を巡る今日的課題について,現場の図書館員の意見をもとに整理する。電子化やオープンアクセス化により紀要の脱灰色文献化が進む中,書庫の狭隘化や予算不足を背景に大学図書館では紙版資料の収集と保存における紀要の優先順位が下がっている。紀要を確実に次世代に残していくためには,紙版紀要の受入停止や廃棄のスムーズで正確な判断に向けた電子版の公開時の配慮や,自大学の紀要の網羅的な収集・保存に基づく大学間の連携が望まれる。こうした取り組みは図書館だけで行うのではなく,紀要の編集者や大学との連携のもと行われることが重要である。

  • 村上 陽菜
    2025 年75 巻8 号 p. 360-364
    発行日: 2025/08/01
    公開日: 2025/08/01
    ジャーナル フリー

    会議録は代表的な灰色文献といわれ,収集・管理が困難な資料である。JAPICでは薬機法に基づく医薬品の安全性情報収集を目的に医学・薬学に関連する会議録を広く収集している。本稿では会議録,特に医学分野における会議録について理解の促進を図ることを目的に,会議録を取り巻く現状や資料としての課題,JAPIC附属図書館における収集・管理の方法について記した。会議録は一般的な蔵書管理システムで管理することが困難であるうえ,灰色文献として発行される会議録は増加傾向にあり,資料としての特殊性について図書館員が強く意識をする必要がある。

  • 香月 歩, 朱 心茹
    2025 年75 巻8 号 p. 365-371
    発行日: 2025/08/01
    公開日: 2025/08/01
    ジャーナル フリー

    エフェメラ資料とは,当面の目的を果たした後に保存されることを意図していない,小規模な印刷物を指す。エフェメラ資料は様々な学術分野における資料としてのポテンシャルを有している一方で,エフェメラ資料の本質的に一時的なものであること,目的や内容が多様であること,形態が不規則であることといった特徴は,図書館や他の機関による体系的な収集・保存を困難にしている。本稿では,筆者らが現在取り組む日本の観光エフェメラ資料のアーカイブ構築に関する研究活動を中心に,具体的なコレクションの実践事例を紹介し,最後にエフェメラ資料の収集・保存における課題と今後の展望を概観する。

  • 折居 佳央里
    2025 年75 巻8 号 p. 372-377
    発行日: 2025/08/01
    公開日: 2025/08/01
    ジャーナル フリー

    同人誌は,マンガやサブカルチャーという日本を代表する文化にとって欠かすことができない文化資産でありながら,社会的なアーカイブ体制は未整備である。本稿は,同人誌の収集・整理・保存・閲覧提供の事例として,明治大学 米沢嘉博記念図書館・現代マンガ図書館における実践を取り上げ,同人誌アーカイブの課題と可能性を考察するものである。収集の困難さ,目録作成における情報の欠如,媒体の脆弱性,閲覧提供時の制約など,図書館運用上の具体的課題を整理し,今後の制度的・実務的対応の方向性を提示する。加えて,同人誌を公共的文化資産として扱うために,図書館,研究機関,即売会主催者等による連携の重要性を指摘する。

  • 東野 善男
    2025 年75 巻8 号 p. 378-383
    発行日: 2025/08/01
    公開日: 2025/08/01
    ジャーナル フリー

    本稿は,図書館におけるフリーペーパーの保存と活用に関する現状と課題を明らかにすることを目的とする。まず,フリーペーパーを含む自主出版物(ミニコミ,タウン誌,リトルプレス,ZINE,同人誌)について,それぞれの定義や特徴を文献に基づいて整理し,とりわけZINEの台頭やフリーペーパーに対する誤解についても考察を加える。福岡市東図書館においては,利用者から好意的な反応が得られており,フリーペーパーが来館の動機となる例も見られる。保存の実態としては,バックナンバーが箱詰めの形で保管されており,スペースの制約や管理体制,さらには国立国会図書館への寄贈をめぐる課題が依然として残されている。さらに,フリーペーパー専門店の山本武義氏への取材を通じて,制作・流通の現場における実情を紹介するとともに,フリーペーパーを保存対象とする意義および今後の可能性についても検討する。

連載:続・オープンサイエンスのいま 第14回
事例報告
協会記事
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