関西医科大学雑誌
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44 巻, 4 号
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  • 北田 親穂
    1992 年 44 巻 4 号 p. 229-245
    発行日: 1992/12/20
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    血小板機能抑制を目的として用いられている各種阻害剤,特にCa2+移動や利用を抑制するとされている薬剤を中心に,その血小板内脂質代謝,Ca2+動態に及ぼす影響について検討した.
    Aequorin漁負荷血小板をもちいた実験において,Ca2+チャンネル阻害剤のVerapamii,細胞内Ca2+拮抗剤のTMB-8,カルモデュリン阻害剤のW-7はいずれも低濃度thrombin刺激による細胞内Ca2+濃度の増加を抑制した0しかし,Verapamil,TMB-8が本来作用する部位と考えられている細胞外液からのCa2+流入や,細胞内Ca2+動員に及ぼす特異的な阻害効果は明らかでなかった.むしろ,Ca2+増加を引き起こすmediator,主としてThromboxane A2(TxA2)の産生に影響する可能性が推察された.
    14C-アラキドン酸で標識した血小板をthrombin刺激した場合,上清中にアラキドン酸が遊離してくるが,これらの薬剤艀置によりアラキドン酸遊離は抑制された.しかし,アラキドン酸からTxA2への転換には影響を及ぼさなかった.
    従って,これらの薬剤は低濃度thrombin刺激時,膜リン脂質からのアラキドン酸遊離を抑制することによってTxA2の産生を障害し,その結果として細胞内Ca2+濃度増加を阻害するものと考えられた.
    また,cAMP系血小板機能阻害剤は,thrombin刺激による血小板内Ca2+濃度の増加を著明に抑制したが,これもCa2+移動への直接的影響の他に,イノシトールリン脂質代謝回転への抑制が関与していた.
    以上より,血小板内Ca2+動態の実験的検討時にaCa2+に対する調節効果を想定してこれらの薬剤を使用する際には,付随したリン脂質代謝への効果による影響を考慮する必要があるものと思われた.
  • 藤田 直樹, 中尾 家蔵, 四方 伸明, 安永 幸二郎, 森井 外吉
    1992 年 44 巻 4 号 p. 246-256
    発行日: 1992/12/20
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    著者らのイミダゾール・パラフェニレンジアミン混液処理を応用する電顕観察を副腎皮質に試みて,その超微形態とくに細胞内脂肪滴変動に興味ある成績を得た.そのうちで,0.2μ 瓢径の微小脂肪滴までもみいだされることを強調した.ACTH32単位の腹腔内注射1時間後の成熟オスラットの血清コルチコステロン値は有意に上昇していた.その副腎皮質束状層細胞では,対照群と比較して,細胞内脂肪滴が顕著に減少したが,細胞小器官に未だ著変を認めず,微絨毛形成充進をみたのみ.形態計測的にrその脂肪滴のvolume density(Vv)や直径は対照群のそれと比べて有意差のある減少を指摘できたが,逆にその数の増加が示唆された.以上から,ACTHの急性刺激によってコレステロールエステルの急激な利用・動員ないし補給が進められて,ACTH投与1時間後0副腎皮質束状層細胞内脂肪滴は縮小・消失ないしは多数に分散・微小化された状態になると推論した.
  • 谷澤 洋
    1992 年 44 巻 4 号 p. 257-283
    発行日: 1992/12/20
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    ウサギの中枢神経系および末梢神経系に及ぼすエチルアルコールの影響について検討した.覚醒反応と誘発筋放電を対象とした実験では,脳幹網様体刺激による覚醒反応と大脳皮質刺激による前・後肢の誘発筋放電の刺激閾値は,エチルアルコールの少量投与により低下し,投与量の増加にともない上昇した.しかし脳幹網様体,海馬刺激による前・後肢の誘発筋放電の刺激閾値は,順次上昇することが認められた.この成績より,エチルアルコールは意識と錐体路系の運動に対しては少量促進,大量は抑制的に作用すること,錐体外路系の運動に対しては抑制的な作用を示すことが考えられる.脳幹網様体の自発性単位放電の放電頻度は,少量投与下では増加し,大量投与下では減少した.この結果はさきの覚醒反応に対する作用を裏づける成績と考えられる.視床のnucl.ventralis anterior(VA)刺激による漸増反応は,用量依存的に振幅の減少を示した.眼瞼微細振動を対象とした実験では,光眼輪筋反射(MV)の振幅は少量投与により減少し,大量投与により増大した.一方,坐骨神経刺激による眼輪筋反射(SMV)の振幅は,用量依存的に減少した.このSMVの成績より,エチルアルコールは疹痛を抑制する作用のあることが考えられる.脊髄反射に対しては,M波,H波および侵害反射性筋放電の順に,より強い促進作用を示した.この作用は,高位中枢からの脱抑制によるものと考えられる.総頸動脈血流量には有意な変化は認められなかったが,大腿動脈血流量には少量投与で減少傾向が認められた.腸管運動には促進傾向が認められたが,1600mg/kgの大量投与下では著明な抑制効果が認められた.トポグラフシステムによる脳波の分析により,少量投与下における速波帯域のパワー値の増加傾向と,中等量投与下における全帯域のパワー値の増加および大量投与下における全帯域のパワー値の低下を認めた.これはエチルアルコールの中枢神経活動に対する少量で促進,大量で抑制の作用を裏づける成績であると考えられる.
  • 自律機能,脳波トポグラフィを対象として
    増田 安民
    1992 年 44 巻 4 号 p. 284-293
    発行日: 1992/12/20
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    ウサギを用いて,Ketamineの自律神経系への影響を検討するため腸管運動,血圧および心拍数を対象とする実験を行った.また,脳波トポグラフィを行い,Ketamineの脳波活動への影響を検討した.
    1)Ketamine投与により腸管の自発性運動は影響を受けなかった.
    2)脳幹網様体刺激による腸管運動の抑制効果はKetamine投与により減弱される傾向を示した.
    3)平均血圧および心拍数は,KetalnineO.3-5.0磁g/kg投与下では有意の変化を示さず,1Q . Omg/kg投与下にて,5%以下の危険率で有意の低下を示し,平均血圧が15.5%,心拍数が9.6%低下した.
    4)脳波トポグラフィの結果としては,Ketamine O.3-0.5mg/kgの投与下では,Delta帯域およびTheta帯域のパワー値および帯域構成比には変化が認められなかったが,Beta1帯域およびBeta2帯域のパワー値および帯域構成比には増加傾向がみられた.この結果,脳波上からもKetamineの少量投与(0.3-0.5mg/kg)下では,意識レベルはむしろ高まった状態にあることが明らかとなった.
    5)Ketami織eO.3-10.0mg/kgの投与下では,全周波数帯域においてパワー値には有意の増加が認められた.帯域構成比ではM一帯域,Beta1帯域およびBeta2帯域に増加傾向がみられた.
  • 玉井 敏弘
    1992 年 44 巻 4 号 p. 294-313
    発行日: 1992/12/20
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    (目的)パーキンソン病の微小循環動態と血液レオロジーに関する報告はなく興味ある点であり,ここを知る目的で本研究を行った.
    (対象)パーキンソン(病患者54名,症候性パーキンソン病患者30名(以下P群)を他の疾患と比較し,薬物に対する反応性も検討した。眼球結膜微小循環動態の観察は生体ビデオ顕微鏡システムを用い,眼球結膜細静脈の内径,血流速度をモニター上で測定し血流量を算出した.血液レオロジーの測定は回転粘度計を用い,赤血球変形能の測定はNuclepore membre法を用いた.
    結果)1)P群の細静脈血流量は,(Caz+拮抗剤で21.8%増加した.この事実は脳内の微小循環動態の改善を示唆していた.一方,β 遮断剤で約22.4%減少した.2)β 遮断剤に対するP群の全血粘度は低下した.3)P群の細静脈血流量は,駆疹血剤に対して変化しなかった.
    (考察)1)脳内血管障害で発症する症候性パーキンソン病に塩酸ニカルジピンが有効である可能性が推測された.2)Ca2+拮抗剤とβ遮断剤で振戦は抑制されたが脳内血流量は全く反対の現象を示した.このことは両薬物の抗振戦作用が中枢でなく末梢に作用する可能性があると考えられた.3)P群の微小循環動態は,癖血証患者群が血液のうっ滞状態が改善するのと異なり駆瘍血剤に対して全く反応しなかった.これは,自律神経障害により血管反応性が低下し,組織内からの水の移動のないのが原因と推測された.
  • ヒト遺伝子組み換えエリスロポエチン投与による影響を中心に
    藤吉 庸雅
    1992 年 44 巻 4 号 p. 314-330
    発行日: 1992/12/20
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    二維持血液透析中の慢性腎不全患者に対する腎性貧血の治療にrecombinant human erythrapoietin(rHuEPO)が導入され,著明な効果をあげている.しかし,症例の蓄積とともに,貧血の改善が見られる症例の中に,血栓症や高血圧などの副作用が報告されるようになった.そこで,それら副作用にまつわる血液レオロジー因子の影響が注目されている.本研究では貧血治療時に経時的に血液粘度,赤血球変形能などの血液レオロジー因子を測定すると同時に,生体顕微鏡によって眼球結膜細静脈を主とした微小循環動態への影響を検討した.さらに透析前後の比較,健常者との比較などを加え,貧血治療の指標となる至適ヘマトクリット値(Ht)を明らかにした.維持血液透析患者21名を対象とし,rHuEPO投与により,Htが25%,30%,35%に到達した3群に分類し,それぞれの投与前と比較検討した.血液粘度は3群ども有意な増加を示しyHt35%以上の群では健常者より高値を示した0眼球結膜細静脈の血管内径は各群で増加したが,血流速度,血流量に有意変化はみられなかった0しかし,Ht30%以上になると血管内赤血球集合やスラッジなどの血行動態の悪化がみられた.筒井らは運動能力はHt 27-28%で改善されるとし,JohnsonらはrHuEFOによる脳血流量の低下を報告している.以上より,rHuEPO投与に際しHt30%を超えないことが望ましい.また透析終了直後は急激なHtの上昇により微小循環動態が悪化しているため,注意が必要である.
  • Yasuaki Nakashima, Keiji Kawamoto
    1992 年 44 巻 4 号 p. 346-352
    発行日: 1992/12/20
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
  • 中洲 敏
    1992 年 44 巻 4 号 p. 353-361
    発行日: 1992/12/20
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
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