Unfractionate heparin(ヘパリン)単独で多血小板血漿(platelet rich plasma,PRP)の透光性の増加を認める事があるが,この現象の機序については免疫の関与の有無により大きくふたつに分類されている.このうち,非免疫学的機序に因るものにおいて,ヘパリンが血小板機能に及ぼす直接的な影響について検討した.9例中,5例においてヘパリン単独でPRPの透光性の増加を認め,このうち1例について実験を行った.血小板凝集計で観察した凝集曲線は,PRPにヘパリン10units/mlを添加すると,ゆるやかな立ち上がりで約7分後には最大凝集率8.0%に達した。この際に血小板数の減少がみられたが,肉眼的に明らかな凝集塊は観察されなかった.この反応は細胞外液中のカルシウムイオンをキレートした場合と,血小板膜糖蛋白Rb/Ma複合体を認識するモノクローナル抗体であるNNKY1-32による前処理によって抑制された.洗浄血小板浮遊液においてはヘパリンによる透光性の増加はみられなかったが,CaCl
2,fibrinogen(Fbg)の添加によりPRPと同様の透光性の増加が観察された.また血小板膜表面結合Fbgはヘパリンによって増加した.しかしα穎粒及び濃染穎粒からの放出,inositol1,4,5trisphosphate産生,細胞内カルシウムイオン濃度の変化は認めず,血小板活性化は伴っていないと思われた.以上の成績より,ヘパリンは血小板膜に結合した際,血小板内活性化機構を作動させずに血小板膜上のFbg結合部位の構造変化をおこし,Fbgが血小板間の架橋をしていると推察された.
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