結核に対する免疫は自然免疫と獲得免疫で構成される.我々は,多様な免疫応答を誘導するとされる樹状細胞(dendriticcells;DC)の動態を,結核患者において解析した.DCは骨髄幹細胞から,異なる分化経路を経て,それぞれの組織,器官に分布する.そしてDCは分化経路および属性から,大きくミエロイド系とリンパ球系の2つに分類される.末梢血中には,表面抗原のパターンにより少なくとも3つの亜群が存在することを当教室より報告している[Fraction 1 DC ;CD1a+/CD11c+,Fraction 2DC;CD1a-/CD11c+,Fraction3DC;CD1a-/CD11c-].前2者は,いわゆるmyeloidDCであり,fractinn3はlymphoid DC (plasmacytoid DC)である.21名の末梢血DCの解析では,結核患者の末梢血DCが健常者に比較して有意に減少しており,さらに亜群解析の結果,この減少はFraction1及びFraction2DCの減少に起因することが明らかとなった.21名の結核組織の免疫染色では,fascin+,CD11c+,HLA-DR+DCがepithelioid cells 周囲のリンパ球領域を中心に多数認められた.またepithelioidcells周囲リンパ球領域ではIFNγ 産生細胞が多数認められ,Th1偏向を示していることが明かとなった.Bacillus calmette Guerin(BCG)存在下あるいは非存在下で,ミエロイド系DCであるFraction1及びFraction2DC(CD11c+DC)とリンパ球系DCであるFraction 3DC(CD11cDC)のそれぞれをautologous naive Thと共培養することにより,DCのTh1あるいはTh2への誘導能を検討した結果,CD11c+DC,CDIlc-DCはともにBCG非存在下に比べBCGを加えた共培養系においてより強くTh1が誘導された.これらの結果から,結核の病態において末梢血DC(主にCD11c+DC)が結核組織に動員され,抗原を取り込んだ後成熟し,所属リンパ節でnaive ThをTh1に誘導していることが示唆された.
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