要約は授業やレポート提出においてしばしば要求されるものであるが,大学で学ぶ日本語学習者の要約産出過程と要約文章についてはほとんど明らかにされていない.本研究は,原文のアイディア・ユニット(以下IU)が日本人学生と外国人留学生(学部留学生)の要約文章にどれだけ残っているかという残存率を比較し,残存しているIUの質的な内容を検討する。さらに,両グループから,一人ずつを選び,発話思考法により要約文産出過程を分析した.両グループの顕著な特徴は,日本人学生は原文の模倣ということは少なく,言い替えや統合化,合成化が多く,留学生は,原文そのままの模倣が多かった。また,発話思考法のプロトコル分析では,日本人学生は,原文読解過程で,要約に必要となるキーワードやキーセンテンスをはじめから記憶していることが多く,一方留学生は,原文を何度も読み返しながら要約を書いていくことが分かった.最後に,今後の要約の指導法と研究課題について提案する。
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