火山地域における風化環境変化の実態をみるため, 山形県白鷹火山カルデラにおいてボーリング・コアの岩石色彩値を連続的に測定し, 岩相と対応させて色彩値a*, b*の深度変化を調べた。一般に岩石中の鉄鉱物は風化環境に敏感に反応し, 色彩値の違いとなって現れやすい。a*, b*値と含有する鉄鉱物との関係に基づけば, それらの空間分布から黄褐色化をもたらす常温風化の酸化作用と赤褐色化をもたらす熱水変質等の高温酸化作用を識別できる。
本カルデラ内では後者を特徴づけるヘマタイト (hematite) ゾーンは局所的であるが, 前者のゲータイト (goethite) は広い範囲に及んでいる。黄褐色化の指標であるb*値は地下浅部では高いが, 深度とともに低下し, 地下数10m~150mで一定値に収束する。したがってカルデラ内では地表から地下深部にいたる風化作用が存在し, この風化帯の厚さから長期間継続してきたことが推定される。
風化帯は特定の岩相分布や地質構造に規制されたものではなく, むしろ現在のカルデラ内地形に調和的である。風化帯構造の連続性から, カルデラ内では物質移動による大規模な埋積が最近生じたとは考えられず, したがって, これをもたらすような山体崩壊が最近発生した可能性は低いと推定される。
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