日本地すべり学会誌
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43 巻, 5 号
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論文
  • 濱崎 英作, 宮城 豊彦, 竹内 則雄, 大西 有三
    2007 年 43 巻 5 号 p. 251-258
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/03
    ジャーナル フリー
    造成地盛土斜面においては, 地震によって地すべりや崩壊などの甚大な被害が発生することが多く, それらの発生に対する危険度評価手法の確立が求められている。我々はこれらの危険度予測をする手法として簡易RBSM三次元試行球面すべり面法を開発した。この手法は, 簡易ながら地震力とその方向を考慮した解析が可能で, 評価結果として平面図上の最小安全率分布 (Fs 値) を得ることができる。このFs 値について, これまでの地震被害のうち, 2004年新潟中越地震の高町団地と, 1978年宮城県沖地震での鶴ヶ谷団地の各被害をもとに比較検証を試みた結果, 極めて良い相関が得られた。このことから, 当手法による危険度評価方法の妥当性を示した。
  • 小島 義孝, 関家 史郎, 大熊 俊明
    2007 年 43 巻 5 号 p. 259-269
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/03
    ジャーナル フリー
    複数のすべり面を持つ地すべりに対する対策のための受働杭型くさび杭の設計計算法を定式化した。定式化の骨子はすべり面での変位の不連続性を考慮できるようにChangの式を拡張した杭の基本式とヤンブ法に準じた斜面安定性評価理論を連成させたところである。本方法により移動層の全体変位, 各スライスの内力とその作用位置, 杭に発生する応力等設計に必要な諸量を得ることができる。計算例は, 全体としての移動層の諸元が同じであっても, 1層である場合と2層である場合には発生する応力・変形量等に大きな差があることを示している。
  • 江田 充志, 鈴木 将之, 藤澤 和範, 檀上 裕司, 石井 靖雄
    2007 年 43 巻 5 号 p. 270-282
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/03
    ジャーナル フリー
    貯水池周辺地すべりでは貯水位降下に伴い発生する残留間隙水圧を考慮して安定解析が行われる。筆者らは残留間隙水圧の残留率に影響を及ぼす要因を把握するため, 単純な斜面モデルを用いた浸透流解析とこれまでに現地で観測された実際の残留率の分析を行った。その結果, 残留率は貯水位が降下した時間及び水際からすべり面までの水平距離と相関性が高いことが明らかとなった。さらに, 貯水位降下時間と水際からすべり面までの水平距離により残留率を表現する方法を示した。
  • 岡田 康彦, 落合 博貴
    2007 年 43 巻 5 号 p. 283-293
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/03
    ジャーナル フリー
    準実規模水路を用いた土砂流下実験を実施したところ, 勾配部を流下する砂供試体中では, 流下土砂高さの1.5倍程度の圧力水頭発生が確認された。桜島から採取した軽石 (ボラ) 試料は, 単位体積重量が小さいため, 過剰な間隙水圧の発生がなくとも長距離運動することが示された。最大到達距離ならびに堆積する土砂の集合の程度の両視点から土砂流下現象を考える必要性を示し, これを表現する指標として, 運動特性指数 (等価摩擦係数と重心間の等価摩擦係数の比) を提案した。
  • 八木 浩司, 山崎 孝成, 渥美 賢拓
    2007 年 43 巻 5 号 p. 294-306
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/03
    ジャーナル フリー
    2004年新潟県中越地震にともなって発生した地すべり・崩壊の発生場の地形・地質・土質的特徴を地形図, GISならびに土質試験・安定解析を用いて検討した。その結果, 以下のことが明らかとなった。
    1. 2004年新潟県中越地震による地すべり (深層すべり) は, 芋川や塩谷川流域の梶金向斜沿いの地域に集中して発生した。それらは, 旧期の地すべり地形の一部が再活動したものである。これには, 魚沼丘陵を開析する河谷に沿った30°程度の急な谷壁斜面の発達が関わっていることが示唆された。
    2. 大規模な地すべりによる地形変位量を地震前後のDEM (数値地形モデル) から算出した。滑落崖付近での陥没, 移動体による旧河道の埋積, 旧地表面に対する乗り上がり・隆起が捉えられたほか, 移動体から受ける側圧で発生した河床の隆起も認められた。特に大日岳北側 (塩谷神沢川最上流部) では, 上下変動量がともに最大で40m以上の規模で発生した。
    3. 崩壊は, その6割以上が45°以上の急斜面で発生している。
    4. 地すべりの大半は層すべり型でその発生場での元斜面勾配は, 13-26°の範囲で, そのモードは21-26°である。そのうちモードは, 東北日本内弧・新第三系堆積岩地域のそれに比べ数度程度大きいことから, 地震動なしには地すべりが発生しにくい土質条件下にあった。
    5. リングせん断試験および原位置一面せん断試験によるすべり面のせん断強度は, 砂岩と泥岩の層界にすべり面が形成されている場合, 完全軟化強度c'=0kPa, φ'=35°, 残留強度はcr'=0kPa, φr'=30°の値を示し, 泥岩・シルト岩のすべり面では完全軟化強度c'=0~10kPa, φ'=30°, 残留強度はcr'=10kPa, φr'=20°の値が得られた。既報告の第三紀層すべり面の平均残留強度値 (眞弓ほか, 2003) と比較した場合, シルト岩のすべり面は10°程度大きな値である。
研究ノート
  • 奥山 武彦, 大塚 文哉, 菊池 茂史, 時田 剛弘, 黒田 清一郎, 有吉 充
    2007 年 43 巻 5 号 p. 307-311
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/03
    ジャーナル フリー
    任意の深度区間で地下水水頭や流動量, 水質の測定を行うために, 5%の開孔率をもち, 1m毎に遮断帯を備えた保孔管を使用した観測井を施工した。水圧測定・採水用ゾンデは保孔管内部を区切るために5段のゴムパッカーを備えている。静岡県内の地すべり地の試験孔における測定では, 孔内水位以深の地下水水圧は静水圧分布より低い部分があり, また, 孔内水位以上の深度で正水圧が発生していた。降雨時の深さごとの水頭変化をとらえることができた。パッカーを装着した小型流量計ゾンデを使用して, 孔内鉛直流動量を精密に測定できる。パッカーを使用して深度別に採水した孔内水の酸化還元電位と電導度は, パッカーを使用しない場合より深度による違いが明瞭であった。本方式の試験孔では全深度を対象とした検層が可能である。地すべり斜面のような複雑な構造の地層で地下水の水頭や水質を評価するためには, 必要な深度毎に測定できる方法によることが必要である。
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