日本地すべり学会誌
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44 巻, 5 号
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論文
  • 森屋 洋, 羽沢 大樹, 阿部 真郎, 米田 哲朗, 檜垣 大助, 佐々木 卓郎
    2008 年 44 巻 5 号 p. 281-291
    発行日: 2008/01/25
    公開日: 2008/09/30
    ジャーナル フリー
    本研究は岩盤地すべりが多発している新第三系中新統珪質泥岩層におけるすべり面構造を明らかにすることを目的としたものである。ここでは大規模に変動していることで知られている谷地地すべりを代表事例として, テストピットでの観察や土質試験, およびパイプ歪計などによるすべり面調査や地形解析などを行った。その結果, すべり面は泥岩中に挟在する凝灰岩中最も残留強度の小さい地層に形成され, 陥没帯や斜面途中の引張り亀裂部分で途切れたり, 末端部で瓦状構造をなすなど不連続で不均質であり, 地下水の挙動にも影響を与えていることなどが明らかになった。これらの事実は珪質泥岩層に発生する地すべりのすべり面形状を明らかにしたのみならず, 今後のすべり面調査手法や地すべり地での地下水浸透流解析, さらには地下水排除工計画にも重要な指標となるものと判断される。
  • 玉田 文吾, 横矢 直道, 福田 順二, 鈴木 素之, 山本 哲朗
    2008 年 44 巻 5 号 p. 292-301
    発行日: 2008/01/25
    公開日: 2008/09/30
    ジャーナル フリー
    本文は, 流動化した堆積層地すべりの発生機構について述べた。地層構造は27°の風化凝灰角礫岩上に3m前後の堆積土があり, 層界面に沿って運積性粘性土が分布する。
    この間に部分的に摩擦II型地すべり面が存在するため, 両者で弱面帯を形成する。本文では, 弱面帯の中で摩擦II型地すべり面が占める割合を弱面比と呼称することとした。
    普通, 弱面比は0. 05程度で安定しているが, 弱面帯上の崩積土が降雨浸透によって一定時間以上飽和するごとに, 摩擦II型地すべり面周辺の運積性粘性土がせん断破壊し弱面比が大きくなり, これが0. 2を超えると不安定な面になっている。
    この状態のとき, 先行降雨量QEP, 弱面帯の深度をhsとすれば
    QEP=100・hs
    以上の降雨量を受けると弱面帯がクリープ破壊して地すべりが発生する。
    この際, 地すべり部分に崩積土中の砂礫部分からの大量の地下水が短時間に混入すると流動化する。砂礫層の探査には電気探査を用いる方法がある。
  • 中谷 洋明, 丸井 英明, 向井 啓司, 片山 弘憲
    2008 年 44 巻 5 号 p. 302-312
    発行日: 2008/01/25
    公開日: 2008/09/30
    ジャーナル フリー
    地すべりの多発する北陸地方 (新潟・石川・富山の3県) においては広域における地すべり発生ポテンシャルを評価することは防災上非常に重要である。地すべりの発生は豪雨並びに融雪による地下水流動の変化や地下水圧上昇といった水文現象に起因している。そこで地すべりの発生を予測するために適した水文指標としてダムへの流入量を分析した。人為的な影響を受けない13のダムに関し, 流入量をはじめとする種々の水文観測資料から複数の水文指標を作成し, 統計的な分布に着目しそれらの指標の特性を分析した。約5ヵ年の地すべり資料を対象として, 水文指標と地すべり発生との対応関係を検討した。その結果, 地すべり発生直前にピークを示したダム流入量に基づく直前ピーク日水頭が, 最も地すべり発生の捕捉率が高く, 空振り率が低く, かつ期待超過日数を低くできる水文指標であることが判明した。得られた指標は, 年間超過日数が約15日で7割程度の地すべり発生の捕捉率となり, 巡視点検の目安等に活用しうると考えられる。
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