日本地すべり学会誌
Online ISSN : 1882-0034
Print ISSN : 1348-3986
ISSN-L : 1348-3986
45 巻, 5 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
論説
論文
  • 八木 浩司, 檜垣 大助, (社)日本地すべり学会平成14年度第三系分布域の 地すべり危険箇所調査手法に関する検討委員会
    2009 年 45 巻 5 号 p. 358-366
    発行日: 2009/01/25
    公開日: 2009/12/02
    ジャーナル フリー
    地すべり地形をなす斜面の抽出と抽出された箇所を構成する微地形の特徴から, AHP (階層構造分析法) を用いて地すべり地形の再活動危険度を評価するシステムを開発した。このシステムは, 空中写真判読による地すべり危険度の判定で着目される地形的要因の階層構造化と, それらの要因の中で見られる現象のいろいろなケースを選択項目とし, それを重み値として表現することで, 地すべり危険度評価を定量化しようとするものである。要因と項目は, 地形判読と地すべり調査の経験のある専門家間でのブレーンストーミングで決められた。その結果, 1) 主滑落崖の明瞭さ, 2) 移動体の表面形状, 3) 地すべり移動体の斜面上での位置, 4) 移動体における亀裂の位置, 5) 移動体末端部の状況, の5つの要因が選択された。要因5) は, 移動体末端部の侵食されやすさ, 移動体末端部の形状からみた不安定さからなる。
    危険度評価の点数は, AHP各階層を構成する要因の中で選択された項目の重みの積として得られる。危険度レベルは危険, やや危険, やや安全, 安全の4つに分けられる。抽出されたすべての地すべり斜面に対するAHP評点を階級別に累積頻度分布として表し, その中の上位5%のものを危険とする。そして, 上位から5-30%, 30-60%, 60-100%にあるものを, それぞれやや危険, やや安全, 安全とする。
    新第三紀層からなる阿賀野川中流域で抽出された312箇所の地すべり斜面をこの手法で評価した。その結果は, 空中写真判読による総観的な評価結果とよく対応し, この評価システムが従来の空中写真判読による定性的な評価プロセスを良く表現していると言える。また, 現地で確認された活動的な地すべり地での危険度レベルは高く評価された。以上から, このシステムは, 詳細な現地調査を行わずに広域的に迅速に地すべり危険度を評価するのに活用できる。
  • 森脇 寛, 佐々木 良宜
    2009 年 45 巻 5 号 p. 367-375
    発行日: 2009/01/25
    公開日: 2009/12/02
    ジャーナル フリー
    2004年10月23日に発生した平成16年新潟県中越地震 (M6.8) により, 新潟県旧山古志村周辺では地すべり・崩壊が多発し, 大きな被害を受けた。本地域は第三紀層地すべりと呼ばれる地すべりの多発地帯で, 過去に滑動した痕跡を示す地すべり地形斜面の再滑動も多く見られた。その実態と運動特性を明らかにするために, 旧山古志村を中心に現地調査ならびに地震発生前後の地すべり分布図を用いて地形解析を行った。その結果, 地すべり地形斜面も今回の地震により発生した地すべり・崩壊も当地域の地質構造を反映して概して西向きの斜面に卓越していることがわかった。また, 今回の地震で発生した地すべり・崩壊数の約半数近くは地すべり地形斜面で発生している。しかし, そのほとんどが部分的な再滑動で, 地すべり土塊全体が再滑動した地すべりは地震で発生した地すべり・崩壊総数の約5%であった。さらに, この地すべり土塊全体が再滑動した地すべりを抽出し, その変動量と地すべり地形斜面形成時の変動量を比較検討したところ, 両者とも移動方向, 幅方向にはそれほど伸縮・拡散しないで移動したこと, ならびに地すべり土塊の流動性を示す等価摩擦係数 (最大移動高/最大水平移動距離) については, 再滑動した地すべりのほうが地すべり地形斜面形成時の運動に比べて流動性が高いが, どちらも崩壊源の斜面勾配と比例関係にあることが明らかになった。
研究ノート
  • 片山 直樹
    2009 年 45 巻 5 号 p. 376-382
    発行日: 2009/01/25
    公開日: 2009/12/02
    ジャーナル フリー
    グラウンドアンカーで行われる加圧注入が, アンカーの機能に及ぼす効果や, それに伴うアンカー体周面摩擦応力の増加メカニズムについては, いまだ明らかでない点が多い。この一因として, 自然地盤ではその不均質性に大きく影響を受けるため, 加圧注入の効果に対する一定の評価が得られにくいことが挙げられる。そこで本研究では, 不均質性を排除した均質なモデル地盤に対し, 加圧の有無によりグラウトを打設した2種類の供試体を作製し, 一面せん断試験により地盤材とグラウト間の摩擦応力を測定した。その結果, 加圧注入による摩擦応力の増加とグラウトの脱水現象には良好な関係性が認められ, 脱水したグラウトの強度増加も確認された。これらの結果から, 均質地盤における加圧注入によるアンカー体周面摩擦応力の増加メカニズムは, 加圧脱水に伴うグラウトの高強度化に起因する付着力の増加によるものと推定した。
報告
feedback
Top