2004年新潟県中越地震では芋川流域で多数の地すべりが発生した。地震によって地すべりが発生する頻度は多くないため, 地震時に地すべりを起こしやすい土質の特性が十分解明されていないのが現状である。本研究では, 塩谷神沢川地区の地すべりを例に取り, 地震時にすべり面となった地層の特徴やその土質特性について検討した。
はじめに, すべり面の位置及びその上下周辺の地盤構造を把握する目的で調査孔内で超音波検層を行った。次に, すべり面の土質特性を把握する目的で, 針貫入試験, 粒度試験, 液性限界・塑性限界試験, 粉末X線回折試験を行った。さらに, 現状のすべり面のせん断強度及び地震での高速運動時のせん断強度を把握する目的で一面せん断試験及びリングせん断試験を行った。最後に, これらの結果を降雨・融雪型の第三紀層地すべりでの研究事例と比較し, 地震を誘因とした地すべりのすべり面の物理・力学特性について検討した。
その結果, すべり面構成土のせん断抵抗角は第三紀層地すべりの一般値に比べ大きく, せん断帯を構成する土は, 粘土粒径分含有率が少なく低塑性な粘性土であることが判明した。また, せん断速度を上昇させるとすべり面のせん断強度が急激に低下するリングせん断挙動が確認されたことから, 地震時に高速地すべりが発生した過程でこのような土質特性が大きく関与したことが示唆された。
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