東京都南西部において実施した, 谷埋め盛土と地山での地表地震動と谷埋め盛土中の間隙水圧の観測結果を報告する。谷埋め盛土の地すべりは, 主に地震動によって発生する代表的な人工地盤の地すべりである。こうした地すべりは, これまでも都市域を襲った多くの地震によって発生しているが, 谷埋め盛土に関する実際の強震動観測データはほとんど存在していなかった。ここでは, 2005年~2011年に発生した主な地震に対する谷埋め盛土の震動特性, 間隙水圧変動イベントを記載すると同時に, 繰り返し三軸圧縮試験データを用いた地震応答解析によって, 谷埋め盛土上の増幅特性について検討を加えた。その結果, 地震動卓越周期には被覆層全体の厚さの影響が強く見られるが, 増幅特性は極表層の地盤構造 (谷埋め) に支配されていることが判明した。さらに, 2011年東北地方太平洋沖地震で観測に成功した地震動の回転成分は, 観測点近傍の地盤で降伏が始まっていたことを示している。地震時の間隙水圧変化は, 大部分が弾性的な挙動をしめしたが, 2005年千葉県北西部地震の様な強震時には, 非線形的な応答が見られた。これら一連の観測結果は谷埋め盛土の強震動応答を議論する上で基礎的な情報を与えると考えられる。
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