日本地すべり学会誌
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48 巻, 6 号
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論文
  • 森脇 寛
    2011 年 48 巻 6 号 p. 305-317
    発行日: 2011/11/25
    公開日: 2012/04/20
    ジャーナル フリー
    広域に分布する地すべり地形斜面個々の地震時の崩壊危険度を評価し, 想定地震あるいは実地震に対して崩壊状況を即時に予測するシステムを構築した。各斜面の危険度評価は, 地震加速度を考慮に入れた斜面安定解析により求めた平常時の安全率と斜面が再滑動を生じる限界加速度を指標として表されている。また, 地震時の崩壊予測は, 任意地点, 任意の大きさの地震発生に対して各斜面が受ける地震加速度を距離減衰式により推定して, その斜面の限界加速度との大小比較から崩壊・非崩壊を判定するシステムとなっている。その利用例として, 本システムを5万分の1地すべり地形分布図「八幡平」図幅 (防災科学技術研究所発行, 1984) に分布する地すべり地形斜面群に適用し, 1) 地震に対する危険度が理解されやすいように, 各斜面の安全率の値に応じて斜面を4段階に色分けするとともに限界加速度の数値を表示した例と, 2) ある地震を想定して崩壊を予測した結果をそれぞれ図示した。
  • -2007年能登半島地震で被災した能登有料道路を例として-
    秦 吉弥, 一井 康二, 村田 晶, 野津 厚, 宮島 昌克, 常田 賢一
    2011 年 48 巻 6 号 p. 318-325
    発行日: 2011/11/25
    公開日: 2012/04/20
    ジャーナル フリー
    合理的な道路盛土の耐震検討の実施には, 盛土断面におけるせん断波速度などの地盤物性値を評価しておく必要がある。しかし, PS検層などでは, 盛土内におけるせん断波速度の面的な分布の推定は困難である。そこで本研究では, 常時微動計測を利用した道路盛土断面におけるせん断波速度の評価方法を提案する。具体的には, まず, 能登有料道路の高盛土を対象に, 法肩~小段~法尻の6地点において常時微動アレー計測を実施し, 高盛土の伝達関数を評価した。次に, 常時微動アレー計測と動的線形FEM解析の伝達関数が整合するように, 高盛土断面におけるせん断波速度の分布を推定した。最後に, 2007年能登半島地震における推定地震動を用いた動的非線形FEM解析を実施し, 被災実績と矛盾しないことを確認した。
研究ノート
  • 吉松 弘行, 阿部 真郎, 丸井 英明, 菅野 孝美
    2011 年 48 巻 6 号 p. 326-333
    発行日: 2011/11/25
    公開日: 2012/04/20
    ジャーナル フリー
    最近, 大地震や豪雨を起因として河川を閉塞する大規模地すべりダムの発生が数多く見られている。地すべりダムの決壊による洪水は土石流となって下流に流下し, 人命や社会活動に激甚な被害を与える。このため地すべりダム決壊の予測手法の確立は非常に重要である。このため, 地すべりダムの既往災害データを用いてファジィif-thenルールのパターン識別解析によりその決壊の予測手法を検討した。パターン識別解析においては地すべり長さ/高さの比 (SFI) 及び貯水池容量/流域面積の比 (CAI) の新たな属性要因の指標を導入することによって地すべりダムの決壊の予測精度が10%以上も向上することを明らかにした。また, 当解析より得られたファジィif-thenルールより地すべりダムの属性要因のその決壊に及ぼす影響度を明らかにした。
  • 釜井 俊孝
    2011 年 48 巻 6 号 p. 334-343
    発行日: 2011/11/25
    公開日: 2012/04/20
    ジャーナル フリー
    東京都南西部において実施した, 谷埋め盛土と地山での地表地震動と谷埋め盛土中の間隙水圧の観測結果を報告する。谷埋め盛土の地すべりは, 主に地震動によって発生する代表的な人工地盤の地すべりである。こうした地すべりは, これまでも都市域を襲った多くの地震によって発生しているが, 谷埋め盛土に関する実際の強震動観測データはほとんど存在していなかった。ここでは, 2005年~2011年に発生した主な地震に対する谷埋め盛土の震動特性, 間隙水圧変動イベントを記載すると同時に, 繰り返し三軸圧縮試験データを用いた地震応答解析によって, 谷埋め盛土上の増幅特性について検討を加えた。その結果, 地震動卓越周期には被覆層全体の厚さの影響が強く見られるが, 増幅特性は極表層の地盤構造 (谷埋め) に支配されていることが判明した。さらに, 2011年東北地方太平洋沖地震で観測に成功した地震動の回転成分は, 観測点近傍の地盤で降伏が始まっていたことを示している。地震時の間隙水圧変化は, 大部分が弾性的な挙動をしめしたが, 2005年千葉県北西部地震の様な強震時には, 非線形的な応答が見られた。これら一連の観測結果は谷埋め盛土の強震動応答を議論する上で基礎的な情報を与えると考えられる。
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