長さ9m,幅1mの大型模型に作製した砂層斜面に,人工降雨(雨量強度:毎時100mm)を与える斜面崩壊実験を実施した。土層厚は0.7mおよび0.5mの2種類で与えたところ,それぞれ降雨開始後4,000秒ならびに2,931秒で崩壊が生じた。実験では,視認用マーカの移動を画像解析技術により追跡し崩壊に至るまでの砂層斜面のひずみ変形を調べた他,斜面に埋設した間隙水圧計による圧力水頭値の変化から等全水頭線(等ポテンシャル線)を近似して浸透水の流れる方向を計測した。
砂層斜面は可能な限り均一になるように詰めたが,浸透水の流れならびにひずみ変形挙動は斜面内で一様ではなくバラツキが認められた。斜面崩壊は,模型の底面に飽和水帯が形成されてから生じたが,崩壊面は必ずしもこの飽和水帯を横切る形で形成されるわけではなかった。斜面が崩れた箇所では崩れなかった箇所に較べ,最大せん断歪み方向ならびに浸透水の流れる方向が模型底面の方向により近い方向であったことから,これらの方向性が降雨による斜面崩壊の発生に影響を及ぼした可能性が示唆された。
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