岩石や堆積物等の自然界の物質には, 鉄の酸化物等の磁性鉱物が含まれており, 地磁気に対応した残留磁気を獲得する性質がある。残留磁気は数100万年後も安定に残るため, 磁北や伏角を指標とすることにより, 過去にその場所が地すべりや岩盤崩落により移動したか否かについて議論できる。
本研究では志津地すべり地周辺の第四紀火山噴出物を構成する岩石を対象に残留磁気の帯磁方向を分析し, 岩石の構成鉱物と岩石年代の分析結果の検証を行って, 地すべりの変動履歴と地すべり範囲を明らかにした。本結果は今後の志津地すべりの危険度評価と対応策を検討する上で重要な指標となろう。
本研究では, 既往地すべり34事例の観測値をもとに, ひずみとひずみ速度の経時変化から崩壊の切迫性を評価する手法を検討した。その結果, 地すべりのひずみとひずみ速度が急激に増加する点 (加速点) 以降の観測値を用いた場合に, 既往の崩壊時刻予測手法の信頼性が高くなる傾向が示された。また, 収集した事例では, 加速点及び崩壊直前のひずみとひずみ速度は共に一定値を超えていた。これらの結果から, 地すべりのひずみとひずみ速度に閾値を設定し崩壊の切迫性を3段階に区分できることを示した。