地すべり運動時に発揮される内部摩擦角は, 通常のせん断試験で得られる内部摩擦角とは必ずしも同じではないと思われる。そこで実際の地すべりの運動に対応する速度でせん断抵抗を計測することを目的として, 表層崩壊などを研究対象とした低圧用 (39kpa) の高速リングせん断試験機と地すべりを研究対象とした高圧用 (390kpa) の高速リングせん断試験機を開発した。最初, 低圧用高速リングせん断試験機を用いて, 直径1mmのガラスビーズについて予備試験を行い, 間隙流体の粘性抵抗は, 表層崩壊に対応する (10-40kpa程度) 低い垂直応力のもとでも摩擦抵抗に比べて無視し得ることを確認した。ついで, 高速高圧リングせん断試験機を用いて御岳大崩壊や地附山地すべりの土など種々の土について0.01cm/sec-100cm/secのせん断速度で試験を行った。その結果, 得られた内部摩擦角は土によって挙動が異なり, せん断速度の増大により内部摩擦角が増大するもの, 逆に減少するもの, ほとんど変化しないものがあった。しかしその変化は-3.2度から+3.7度までの範囲にあり, それほど大きなものではなかった。これらの内部摩擦角の変化の原因としては, せん断中の粒子の破砕による粒度分布と粒子形状の変化が考えられ, また, 比較的粒径がそろっている材料では, 粒子がせん断方向に配列する影響があると思われた。
抄録全体を表示