地すべり移動速度は地すべり安定度に関する重要な指標であるが, 降雨の影響を受けやすい。この場合, 降雨と流出をタンクモデルによって関係づけ, その貯留高をパラメーターとすれば, 地すべり移動速度と降雨の間に相関性を認めることができる。この関係に基づけば, 地すべり移動速度の記録の中から降雨による直接的な変動とクリープによる時間依存的変動を識別することができる。

抄録全体を表示

東北地方の第四紀火山周辺における地すべりの多くは第三紀層の砂岩, 泥岩の地層に発生し規模が大きいものが多い。
山形県肘折カルデラ周辺の地すべり地も同様で, それらは最上位に堆積する火山砕屑物の斜面末端や側面が開析されたケスタや尾根地形上に位置しており, 肘折火砕流の堆積直前に岩盤地すべりとして発生したという共通の特徴を持つ。
これら地すべりの発生原因とその後の変遷過程を, 平根地すべりを対象に二次元フエレニウス法と三次元簡易ヤンブ法 (鵜飼, 1987) の安定計算によって検討した。その結果, 地すべり発生には, 700gal程度の地震加速度が必要であるが, 火山活動に伴う地震の頻発や亀裂発生などによる岩盤劣化で尾根状のケスタ地形では, 約1万年前の火砕流噴出時の地震で地すべりが発生した可能性が示された。またその後, 火砕流堆積物によって厚く覆われて一時的に安定した地すべり地が, 現在までの末端部のシラスの浸食によって再度不安定となる過程に関しても残留強度を使用した安定計算によって裏付けられた。
以上は東北地方に現在分布する他の第四紀火山周辺の大規模地すべりの起源とその後の変遷過程の解釈にも有意義と考えられる。

抄録全体を表示

An earthquake (M7. 3) took place in central Taiwan on the early morning of September 21, 1999. This disastrous ground shaking is called the Chi-chi earthquake, with its hypocenter about 10km below land surface. Earthquake-induced landslides were surveyed in order to mitigate secondary hazards. The area studied is about 375, 000 ha, in which landslides were identified by aerial photo interpretation accompanied by SPOT images and field surveys. The color aerial photos used in this study are on the scale of 1/17, 000 and were taken between September 22-26, 1999.
More than twenty thousand Chi-chi earthquake-induced landslides have been recognized by aerial photo interpretation. The average landslide density and landslide rate are 0.1 pieces/ha and 4.7%, respectively. Over 90% of the landslides were less than one hectare in average and categorized as shallow landslides and rock falls. Most of the landslides occurred in a region between the Chelungpu active fault to the west and the Lishan fault to the east or in regions with a horizontal peak-ground acceleration (PGA) of more than 300 gal. Of the four geological regions in the area studied, the inner foothill zone had the greatest average landslide rate (11.6%) and the greatest number of landslides (9, 090 landslides).
The occurrence of earthquake-induced landslides has a close relation to their geology and distances from the earthquake fault. As to geologic formation and PGA, the Ptk2 (Plio-Pleistocene period) formation has the greatest landslides rate, 20% in a 501-600 gal area, and the Pcl formation (Pliocene period) has a landslide rate, 9.2% in a 401-500 gal area. By dividing into six 5-km-wide belts paralleling the Chelungpu fault, the landslide amount and its rate in the Pcl formation area have the greatest value in the 5-10km belt (about 6, 000 amount) and the 10-15km belt (12.7%), respectively. In the Mkc formation area, the landslide amount and its rate have the greatest value in the 0-5km belt, about 1, 400 amount, 4.7%, respectively, and then generally decrease with an increase of 5km.

抄録全体を表示

2000年 (平成12年) 10月6日に発生した「鳥取県西部地震」に伴う土砂災害では人的被害は軽微であったが, JR伯備線が長期間不通に陥るなど道路・鉄道の法面崩壊や斜面表層崩壊を中心に種々の斜面災害が生じた。ここでは地震並びにその直後の降雨に起因する斜面崩壊について現地調査と一部の解析を行ったので報告する。

抄録全体を表示

本論文の主目的は, 単純で直接的な公式と図表が, 実務における様々な斜面安定問題を解決するうえで大きな適用性を有する事実を, 事例を通して, 示すことである。これらの手法の基本的な部分の開発は大まかに言って1920年から1955年の間になされ, その後数々の改善が加えられてきた。これらの手法では全体としての平均状態のみが考慮されている。本文では単純平衡解析法 (SEA), 抵抗包絡線法 (RE), および安定図表法 (SC) と呼ばれる3つの手法を紹介する。
潜在地すべり土塊中の近似的な応力分布を調べる実用的手法が, 非円弧せん断面に対するスライス分割法と極限平衡原理を基礎として開発された。この手法は一般分割法 (GPS) と名づけられた (Janbu, 1957, 1973, 1996) 。本文ではGPSの表計算版を提示すると共に, これを1996年6月に発生したFinneidfjord地すべりの初期斜面の解析に用いている。それによると, GPS (法) の数値結果はSEA, RE, SC解析の結果に十分よく匹敵している。

抄録全体を表示