日本下肢救済・足病学会誌
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10 巻, 1 号
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会告
巻頭言
総説
  • 門野 邦彦, 田中 康仁
    2018 年10 巻1 号 p. 2-7
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/19
    ジャーナル 認証あり
    二本足で立って歩行することは人間に固有の特別な機能である.足底面が地面に正対する形態をとっており「蹠行性」と呼ぶ. 足には, 3種のアーチ構造があり, 足底面に加わる体重や衝撃を吸収する役割がある. 足のアーチは, 体重が加わると少し平坦に押しつぶされて荷重を受け止める(トラス構造). 歩行では踏み出していくときに, 足趾が背屈して踵が浮き上がっていくと足底腱膜が緊張し, 低下したアーチは再挙上し(ワインドラス機構), つぎの着地への準備がなされる. 歩行時には踵から地面に着地するため, 踵の皮膚は厚く, 皮下脂肪は特殊なクッション機構を有している. 荷重時に踵は外反し, 足根関節は緩み衝撃吸収性が高まる. 蹴り出し時には踵は内反し, 足根関節は固くなり力を地面に効率よく伝える. このような足の機能解剖を理解し, 健常な歩行の仕組みを最大限温存することを下肢救済医療のなかに取り入れていくことが期待される.
  • 真田 弘美
    2018 年10 巻1 号 p. 8-15
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/19
    ジャーナル 認証あり
    東京大学医学部附属病院では, 2006年に糖尿病足潰瘍の予防を目的とした糖尿病足外来を設立した. 糖尿病看護認定看護師, 皮膚・排泄ケア認定看護師, 創傷看護学研究者が糖尿病足潰瘍のリスクの同定, 非潰瘍性病変のケアと教育を行っている. さらに, 創傷看護学や工学, 分子生物学の研究者が共同研究をしながら, 非潰瘍性病変を有した足潰瘍のハイリスク患者に絞り込んでケアを特化するプロトコルを作ってきた. 当院糖尿病・代謝内科外来における60ヵ月の累積足潰瘍発症率は1.2%に抑えることができている. 近年, 糖尿病患者数の急増により, アジアにおける糖尿病足潰瘍の対策が急務となっている. 中国で糖尿病足外来を行う機会を得て, 予防外来のニーズの高さを実感した. インドネシアにおいても糖尿病足潰瘍の予防に関する講義を行い, プロトコルを紹介した. 本稿では, 当院足外来の設立から, プロトコルを中国やインドネシアに紹介するまでの取り組みを紹介する.
特集:第9回日本下肢救済・足病学会学術集会 教育講演
  • 寺師 浩人
    2018 年10 巻1 号 p. 16-21
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/19
    ジャーナル 認証あり
    糖尿病性足潰瘍の治療の目的は, 「歩行」を守ることであり, 血流改善や創傷治癒はそのための手段に過ぎない. 血流が改善しても創傷が治癒しない, 創傷が治癒しても歩行できないならば, 医療介入者は糖尿病患者の思いに応じたことにはならない. 糖尿病患者の歩行を守ることこそが最大の使命であるが, その診断学, 治療学, 加えて歩行メカニズムの解明は, 本邦ではいまだ道半ば(half way)である. 神戸分類は, 足病医不在のアジアにおける足病学への導入ツールである. そして, 患者の自力歩行を維持させるために, 今後早期にリハビリテーションが介入するシステムを構築させなければならない.
  • 渥美 義仁
    2018 年10 巻1 号 p. 22-29
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/19
    ジャーナル 認証あり
    糖尿病足潰瘍は, 神経障害, 末梢循環障害, 感染とその他の要因により生じる重篤な糖尿病合併症であり, 重症化すると切断となる. 切断となると, QOLや生命予後も損なう. 足潰瘍は早期の足趾病変を経て進行するが, 糖尿病神経障害により早期発見が遅れやすいのが特徴である. 痛みが弱いために, 患者本人はしばしば病変を過小評価し, 処置が遅れる例もある. よって, 医療者が定期的に足を診察し, 予防と早期発見に努めなければならない. 糖尿病患者全員の定期的診察は困難であるので, 高リスク患者に絞ってでも, リスクに応じた定期的な足の診察が最も重要である. 神経障害, 動脈硬化, 易感染性の進行を止めるためには, 良好な血糖コントロールも必要である. 糖尿病の薬物治療についても概説した.
  • 石岡 邦啓, 小林 修三
    2018 年10 巻1 号 p. 30-36
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/19
    ジャーナル 認証あり
    慢性腎臓病(chronic kidney disease : CKD)患者, 特に透析患者においては心血管疾患による死亡率がきわめて高い. CKDの早期からすでに多血管病(polyvascular disease : PVD)は進行している. 病態生理学的にはインスリン抵抗性が大きく関与し, さらに酸化ストレス, nitric oxide(NO)やエンドセリンの不均衡が影響する. また, CKD患者の血液は過凝固の傾向にあり, 単球―血小板複合体が高頻度に存在するため, レオロジー特性は非常に悪化しており, 動脈硬化の重要な原因となる. 臨床的には, ほとんどの腎臓内科医が冠動脈疾患の重要性について指摘しているが, CKDが下肢末梢動脈疾患(peripheral artery disease : PAD)の独立した危険因子であり, 予後および早期発見の重要性について唱えている腎臓内科医は少ない. CKD患者における血管石灰化の病態生理および治療戦略を理解することは, CKD患者においてとても重要なことである. また, FGF23やKlotho分子の関連因子は重要な役割を担っている.
  • 浦澤 一史, 丹 通直, 木谷 俊介, 原口 拓也, 五十嵐 康巳
    2018 年10 巻1 号 p. 37-44
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/19
    ジャーナル 認証あり
    重症下肢虚血症例における血行再建の手段として, 血管内治療は今日広く認知されるにいたった. その背景には, 過去10年ほどの間に血管内治療が大きく変化・進歩を遂げたことがある. 従来にはなかった新しいワイヤー操作法や末梢動脈穿刺法などが次々に考案され, 広く臨床の現場に浸透した. 加えて, 国内の医療機器メーカーが末梢血管治療に特化した優れたガイドワイヤーやマイクロカテーテルを数多く登場させてきた. この治療技術の進歩と急速なデバイスの改良とが相乗的に作用し, 下肢動脈病変に対する血管内治療の初期成功率を飛躍的に向上させることに繋がっている. 本稿においては, 重症下肢虚血症例の膝下動脈病変に対する血管内治療の現状について, 実際の症例を基に解説する.
  • 瀬戸 奈津子
    2018 年10 巻1 号 p. 45-51
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/19
    ジャーナル 認証あり
    糖尿病足病変はもとより, 生活習慣病に加えて喫煙や加齢などから, 末梢動脈疾患や閉塞性動脈硬化症へと進み, 足病変の重症化へとつながる. 看護としてのフットケアは, ターゲットは「足」だけではなく患者その人であり, 患者自身の行うセルフケアに重点をおくことが特徴である. 足のケアを通して患者の生活を理解したり, 足の状態を理解するための働きかけを行ったり, 患者の足への関心を目覚めさせたり, 患者とともにケアを継続していく大切さを実感していく. 糖尿病看護におけるフットケアでは, アセスメントのうえで, 清潔保持や乾燥防止など足病変の予防方法を伝え, 爪のケアや足浴など必要なケア技術, 創傷や胼胝・鶏眼, 陥入爪などの足病変の適切なケア方法を検討し, セルフケアの支援へとつなげる. さらにフットケア実践をしっかり評価し, つぎのケアへとつなげていく.
  • 大浦 紀彦, 匂坂 正信, 関山 琢也, 松永 洋明, 寺部 雄太, 森重 侑樹, 木下 幹雄, 多久嶋 亮彦
    2018 年10 巻1 号 p. 52-55
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/19
    ジャーナル 認証あり
    重症下肢虚血(critical limb ischemia以下CLI)は, 動脈の閉塞と狭窄によって末梢組織が壊死, 虚血にいたる多様性に富んだ複合的な病態である. そこで連携による集学的な治療が必要である. 現在, 下肢病変に関連する医療制度でも診療科連携の促進を目的として, 下肢末梢動脈疾患指導管理加算が新設されるなど, 透析病院と創傷と血行再建のための連携によって, 少しずつCLI治療の仕組みが整いつつある. 今後は歩行機能温存やサルコペニア予防などの観点に基づいて, より早期から整形外科, リハビリテーション科の参画が望まれる.
  • 東 信良, 菊地 信介, 内田 大貴, 古屋 敦宏
    2018 年10 巻1 号 p. 56-62
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/19
    ジャーナル 認証あり
    重症下肢虚血は, 下肢予後や生命予後の点において, 非常に予後不良の患者群から救肢によって予後良好に経過する患者群まで幅広く, 予後の面でも多様性に富んでいる. したがって, 治療方針を決定する入り口において, どこに治療のゴールを設定するかがきわめて重要であり, 再建血行の質やdurabilityが設定するゴールに見合ったものであるかを確認してから治療に入るべきである. さらに, 初期治療を行ったあとも再評価が重要であり, 深部感染が隠れていないか, 再建血行が再狭窄していないか, 小切断後の足形状からどのような変形が予測されるかなどの情報から治療ゴールの修正を行う必要がある. こうした観点をもって術前評価を行い, 足の状態(WIfI分類), 血管病変の状態, 全身状態, 下肢機能や認知機能の4因子をしっかりと評価して, 血管内治療か外科的血行再建か, あるいはprimary amputationかを選択する必要がある.
下肢救済-私たちの取り組み(12)
  • 末松 延裕, 大塚 佳代
    2018 年10 巻1 号 p. 63-65
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/19
    ジャーナル 認証あり
    重症下肢虚血症例に対しては救肢のための最善の治療を最短時間で始める必要があると同時に, 生命予後改善のための集学的介入が不可欠である. 具体的には, 虚血・感染のコントロール, 創部処置, 栄養状態・全身状態の改善, 至適内服治療, 患者・家族教育などその内容は多岐に及び, それぞれの専門家がお互いに連携を取りつつ効率よく進めていかなくてはならない. 済生会福岡総合病院では医師・看護師・栄養士・検査技師・理学療法士より構成されるフットケアチームが職種や診療科の垣根無く, 重症下肢虚血症例に対して集学的治療を実施しており, その内容に関して具体的症例を交えてご紹介したい.
原著
  • 牛山 浅美, 小島 淳夫, 山下 巌, 中 正剛, 日野 浩司, 野村 直樹
    2018 年10 巻1 号 p. 66-73
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/19
    ジャーナル 認証あり
    リンパ浮腫に対する圧迫療法による, 蜂窩織炎の予防効果を検証することを目的とした. 圧迫療法を実施したリンパ浮腫患者のうち, 外来経過観察期間が半年以上の82例110肢について検討した. 除外基準は, 悪性リンパ浮腫, リンパ浮腫外科的治療後, 予防的抗菌薬服用中, ABI 0.5未満とした. 当院受診前後の蜂窩織炎発生状況を比較した結果, 一肢あたりの平均発生回数は, 半年間で前0.71回, 後0.07回(p<0.001)と受診後が減少した. 平均再発回数は半年間で前2.8回, 後1.0回(p<0.01)へと減少した. また, 蜂窩織炎の予防効果は, 圧迫強度, 装着頻度, リンパ浮腫病期と関連がみられた. リンパ浮腫の病期に応じた圧迫療法は, 蜂窩織炎の予防に有効であると考えられた.
地方会抄録
編集後記
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