要旨:【背景】腎機能障害は新規の下肢末梢動脈病変(peripheral arterial disease: PAD)発症の危険因子であることが報告されており,血液透析患者においてPAD の罹患率は15%を超えていることが報告されている.下肢大切断に至った症例の5 年生存率は14.4%と非透析患者の42.2%に比し著しく悪いが,予後に関しての詳細な報告はない.【目的】血液透析患者におけるFontaine 分類II 度のPADの予後について前向き観察研究を行う.【対象と方法】当院で2002 年以降にPADと診断された血液透析患者のうち,その後追跡調査が可能であったFontaine 分類II 度の患者30 名(年齢69.1 ± 9.0歳,男性25 名,女性5 名)の予後について検討した.【結果】平均観察期間は33.7 ± 17.7 カ月,高血圧27 名(90.0%),高脂血症7 名(23.3%),虚血性心疾患24 名(80.0%),脳卒中4 名(13.3%)であった.28 例が下肢動脈の3DCT か血管造影検査を受けていた.治療は薬物療法が全例行われており,それに加えてLDL 吸着療法2 例,血管内治療18 例,バイパス術4 例であった.観察期間中,治療によりFontaine 分類I 度に移行したのが5 例(14.3%),II 度(不変)が18 例(51.4%),III度が3 例(8.6%),IV 度が1 例(2.9%)で足趾切断術を施行された.死亡が3 例(死因は感染症が2例,消化管出血が1 例)で,1 年生存率は97.1%,3 年生存率は88.8%であった.【結論】血液透析患者の重症下肢虚血(clitical limb illness: CLI)患者の予後は一般に比し不良であるが,Fontaine 分類II 度の患者の転帰は非透析患者と同様に予後良好であり,PAD の早期発見および治療介入が患者の予後改善につながる可能性がある.
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