日本下肢救済・足病学会誌
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2 巻, 1 号
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巻頭言
総説
  • 中村 正人
    2010 年 2 巻 1 号 p. 3-10
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル 認証あり
    要旨:TASC は本症の診断,治療に携わるすべての医療関係者に情報を提供することを目的にした下肢閉塞性動脈硬化症(peripheral arterial disease)のコンセンサスドキュメントである.2007 年にTASC II として改定版が公表された.このTASC II をシリーズで今後解説していく.本稿では疫学,リスク管理,非侵襲的診断について述べる.本疾患の病態は無症候性,跛行趾,重症虚血肢に分けられる.その生命予後はいずれの群でも不良である.心血管死が75%に及ぶが,PAD はアテローム血栓症の一部分症であり,複数の血管領域に血管疾患が重なって存在するためこれは当然の帰結ともいえる.一方,跛行肢において下肢の予後は概ね悪くはないが,重症虚血肢では下肢の予後,生命予後ともに不良である.したがって,全身を見据えたリスク管理が重要となる.食生活,生活スタイルの欧米化により本症は本邦でも増加していくものと推測される.病態を含めたup date な知識が要求される.
特集:糖尿病性足病変
  • 金森 晃
    2010 年 2 巻 1 号 p. 11-19
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル 認証あり
    要旨:糖尿病は足潰瘍や壊疽の主要な基礎疾患である.わが国では食事や運動などの生活習慣の変化にともない,糖尿病とくに 2 型糖尿病患者が急増してきており,今後さらに糖尿病を発症基盤とした足病変患者が増加することが危惧される.糖尿病足病変は特殊な病態を多く含んでいるため,糖尿病あるいは糖尿病合併症の病態生理を十分に理解して,予防のためのフットケアや治療をおこなう必要がある.すなわち,美容的なフットケアではなく,足病変予防を目的とした医療としてのフットケアをおこなうべきであり,糖尿病神経障害や動脈硬化症が足病変の発症・進展増悪にいかに関与しているのかを熟知しておかなければならない.下肢救済および足病学における糖尿病内科の主たる役割は足病変の予防である.糖尿病患者全員にフットケアをおこなうのが理想であるが,現実的には難しい.今後,糖尿病外来においてハイリスク患者を効率よく選別して教育や予防処置をおこなうシステムの構築を考えていく必要がある.
  • 寺師 浩人
    2010 年 2 巻 1 号 p. 21-31
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル 認証あり
    要旨:糖尿病性足病変を創傷治癒の視点から詳述した.病因として,①末梢神経障害,②末梢動脈性疾患,③感染症,に分け,創傷の病態を以下のようにType I 〜 IV に4 つに分類した.Type I:末梢神経障害が主体,Type II:末梢動脈性疾患が主体,Type III:感染症が主体,Type IV:上記3つの複合病態.加えて,それぞれの創傷管理のアルゴリズムを提唱した.
  • 加納 智美
    2010 年 2 巻 1 号 p. 33-39
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル 認証あり
    要旨:足病変に対するアプローチは様々な職種で行われる必要がある.特に,末梢動脈疾患(PAD)は本邦でも急速に増加しており,高齢化・糖尿病腎症の増加により透析患者では,一般人に比べてより高率に合併するものと考えられる.いかなる進行度においても細かなフットケアは大切であるが,疾病を早期発見するため足関節/上腕血圧比(ankle brachial pressure index; ABI,API,APBI)や皮膚灌流圧(skin perfusion pressure; SPP),下肢血管エコーを用いたスクリーニングを実施し,早期治療することが,さらに予後を改善する上で重要である.足病変の予防から早期発見,治療まで各職種の専門性を発揮し連携をとることで「フットケア」は効果的に実践される.
教育シリーズ
  • 曽我 芳光, 横井 宏佳
    2010 年 2 巻 1 号 p. 41-48
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル 認証あり
    要旨:重症下肢虚血に対して血行再建が必要であることは異論のないところである.しかし,下肢循環動態を理解しないまま行う安易な血行再建は,十分な効果が期待できず,術前よりも悪化させる危険性すら併せ持つ.故に血行再建を前提とした下肢血行動態の理解が必要である.本稿では,血行再建を行うのに必要最低限の基本事項である解剖(動脈,静脈,側副血行路),下腿動脈の支配領域を示し,切断時に考慮される関節部位を記載した.また,重症下肢虚血の発症機序を述べることで基本事項と疾患の関わりが理解できるように配慮したつもりである.本稿が重症下肢虚血の理解に役立つことを期待する.
下肢救済─私たちの取組み(1)
原著
  • 川﨑 東太, 上村 哲司, 松尾 清美, 村田 知之
    2010 年 2 巻 1 号 p. 53-58
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル 認証あり
    要旨:疼痛や潰瘍がある重症虚血肢患者が,就眠時にベッドから下肢を下ろしている場面を見かけることがある.これは虚血からくる下肢の痛みを軽減させるために行っていると理解されているが,この肢位がどの程度下肢の血流に影響を与えているのかわかっていない.本研究の目的は,肢位の違いによる下肢の皮膚灌流圧の影響を調べ,それを臨床の場で活用することである.対象者は健常成人10 人を対象に,仰臥位,下肢挙上位,20°背上げ,端座位の4 肢位で,下肢の皮膚灌流圧の測定を行った.測定部は右下肢の足背・足底の2 箇所とした.足背・足底とも端座位時に有意な上昇を示し,次いで背上げ,仰臥位,下肢挙上位の順となった.背上げを20°行うと仰臥位や下肢挙上位と比較して,下肢末梢皮膚灌流圧は有意に上昇した.今回の結果より,周術期の患者管理,特に下肢の末梢動脈に問題がある患者において,肢位の違いで下肢の血流が影響される可能性がある.
  • 森脇 綾, 寺師 浩人, 小川 晴生, 田原 真也, 新家 俊郎
    2010 年 2 巻 1 号 p. 59-64
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル 認証あり
    要旨:【目的】重症下肢虚血(CLI)に基づく足部皮膚潰瘍に骨髄炎を合併する場合,血行動態の把握と共に骨髄炎の進展を評価する必要がある.足部骨髄炎での切断レベル決定におけるMRI 所見と組織学的所見の相関性を検討する.【方法】母趾切断に至った糖尿病性足潰瘍症例について,MRI所見と組織学的所見を長軸で比較することで,MRI の有用性について検討する.【結果】病理組織学的所見では,T1・T2 強調画像における信号変化とほぼ同範囲が急性骨髄炎像を示していた.STIR(short Tl inversion recovery)像においてはより鮮明に骨髄炎像を表した.【結語】本症例においてMRI STIR 像による骨組織の評価は切断レベル決定において有用であった.
  • 岡 真知子, 持田 泰寛, 石岡 邦啓, 真栄里 恭子, 池江 亮太, 守矢 英和, 大竹 剛靖, 日高 寿美, 小林 修三
    2010 年 2 巻 1 号 p. 65-69
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル 認証あり
    要旨:【背景】腎機能障害は新規の下肢末梢動脈病変(peripheral arterial disease: PAD)発症の危険因子であることが報告されており,血液透析患者においてPAD の罹患率は15%を超えていることが報告されている.下肢大切断に至った症例の5 年生存率は14.4%と非透析患者の42.2%に比し著しく悪いが,予後に関しての詳細な報告はない.【目的】血液透析患者におけるFontaine 分類II 度のPADの予後について前向き観察研究を行う.【対象と方法】当院で2002 年以降にPADと診断された血液透析患者のうち,その後追跡調査が可能であったFontaine 分類II 度の患者30 名(年齢69.1 ± 9.0歳,男性25 名,女性5 名)の予後について検討した.【結果】平均観察期間は33.7 ± 17.7 カ月,高血圧27 名(90.0%),高脂血症7 名(23.3%),虚血性心疾患24 名(80.0%),脳卒中4 名(13.3%)であった.28 例が下肢動脈の3DCT か血管造影検査を受けていた.治療は薬物療法が全例行われており,それに加えてLDL 吸着療法2 例,血管内治療18 例,バイパス術4 例であった.観察期間中,治療によりFontaine 分類I 度に移行したのが5 例(14.3%),II 度(不変)が18 例(51.4%),III度が3 例(8.6%),IV 度が1 例(2.9%)で足趾切断術を施行された.死亡が3 例(死因は感染症が2例,消化管出血が1 例)で,1 年生存率は97.1%,3 年生存率は88.8%であった.【結論】血液透析患者の重症下肢虚血(clitical limb illness: CLI)患者の予後は一般に比し不良であるが,Fontaine 分類II 度の患者の転帰は非透析患者と同様に予後良好であり,PAD の早期発見および治療介入が患者の予後改善につながる可能性がある.
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