日本下肢救済・足病学会誌
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6 巻, 1 号
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巻頭言
総説
  • 北野 育郎, 辻 義彦, 辻 依子, 長谷川 弘毅, 倉本 康世, 寺師 浩人, 杉本 幸司
    2014 年 6 巻 1 号 p. 3-8
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル 認証あり
    要旨:日本における下腿切断の原因は近年著しく変化し,糖尿病性足病変に起因した切断が増加している.糖尿病性足病変とは,糖尿病性神経障害,血管障害に感染が加わった複合性病変で,特に糖尿病を合併した重症下肢虚血は大切断の大きな原因となる.この糖尿病性足病変に対しては,神経障害による麻痺や足の変形,血管障害による虚血症状,骨髄炎による感染の拡大などさまざまな問題に対するアプローチが必要になってくる.病態も軽症から重症までさまざまで,単診療科だけではなく,多診療科・多職種にまたがった集学的治療が不可欠になってくる.さらに最適なチーム医療を構築する場合,重症度に応じてフットマネージメントを一次~三次医療に分類する方が有用である.また,患者が単一の医療機関へのみ集中するのではなく,複数の施設間での円滑な地域連携により,迅速で最適な医療が施行されるべきである.本稿では,糖尿病足病変を中心とした救肢のためのチーム医療の現状を総括し,今後の問題点について展望する.
特集:第5回学術集会教育講演
  • 石橋 理津子
    2014 年 6 巻 1 号 p. 9-13
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル 認証あり
    要旨:フットケアとは文字通りFoot Care:足のケアである.医療の現場で行うフットケアは「治療的フットケア」と理解している.看護師はナイチンゲールの時代からセルフケア不足の患者に対し身の回りの世話をする一環として看護的フットケアを行ってきた.今も病院や介護施設等々で同様のケアが行われているが,この看護的フットケアと治療的フットケアの違いを理解しておかなければならない.爪が伸びている=爪を切る,胼胝鶏眼がある=角質ケア,ではないということを理解したうえでフットケアに携わる必要がある.また高齢化社会に伴い患者が抱えている基礎疾患,合併症等々により他科にまたがる治療が必要な症例が増加している.このことが治療を難しくする要因であることは間違いない.看護師であれフットケアを行うにあたり疾患の理解,治療選択,ケアの選択が適切に行われるための基礎知識を持っておかなければならない.
  • 河原田 修身
    2014 年 6 巻 1 号 p. 14-20
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル 認証あり
    要旨:糖尿病や慢性腎臓病患者の増加に伴い,我が国でも重症虚血肢患者の増加が指摘されている.近年,血管内治療手技やテクノロジーの進歩により下肢動脈のカテーテル治療は目覚ましい進歩を遂げている.また重症虚血肢は動脈硬化性疾患であることに加え,糖尿病や感染に関連し複雑な病態を示すために,創部管理が臨床経過に影響する.本稿では重症虚血肢を包括的に管理するためにカテーテル治療医が果たすべき役割について述べる.
  • 金森 晃
    2014 年 6 巻 1 号 p. 21-32
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル 認証あり
    要旨:糖尿病は種々の足病変の基礎疾患である.わが国ではとくに2 型糖尿病患者の急増とそれに伴う合併症が問題になっており,国を挙げて予防と治療の対策を行うべきである.2 型糖尿病の病態には膵β細胞からのインスリン分泌不全と末梢組織におけるインスリン抵抗性の両者が関与しており,インスリン作用不足のために高血糖状態が引き起こされる.2 型糖尿病治療の基本は適切な食事療法と運動療法である.これら生活習慣の是正にも関わらず高血糖が改善しない場合に薬物療法を行う.薬物療法は画一的ではなく,個々の患者の病態を考慮して,適応に合わせて薬物を選択する.適応であれば躊躇せずにインスリン療法も行うべきである.現在,経口血糖降下薬は6 つのカテゴリーに分けられるが,インクレチン関連薬であるDPP-4 阻害薬の有効性が実証されてきている.さらに数種の新しい作用機序の薬物が開発中であり,実臨床での活用が期待されている.
  • 恩田 理恵
    2014 年 6 巻 1 号 p. 33-41
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル 認証あり
    要旨:糖尿病や末梢動脈疾患を要因とする足病変が増加しているが,患者の多くは足切断の危機や死亡率に無自覚であり,予防や早期発見,足切断に至らないための治療やケアの意識の向上のための啓発が必要である.健常人の不適切な生活習慣,すなわちエネルギー・食塩・脂肪の過剰摂取や野菜類の摂取不足,身体活動・運動不足,喫煙,過度の飲酒は,肥満,高血糖,高血圧,高血清脂質状態を招き,足病変の要因となる疾患に進展する.足病変に関連する生活習慣病の栄養管理では病態にあった適正なエネルギー摂取,栄養素のバランスを図る,食物繊維の積極的摂取などとともに,患者の自己管理の支援が必要である.さらに足病変の栄養管理では,複雑かつ専門的な栄養サポートが必要となる.ぜひフットケアチームへの管理栄養士の参画を希望する.またフットケアチームと栄養サポートチームの連携,協働がさらに活発になることで足病変の治癒に貢献できると考える.
  • 水野 博司
    2014 年 6 巻 1 号 p. 42-48
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル 認証あり
    要旨:我が国における再生医療の実現化については様々な視点でとらえられなければならない.第1 に再生医療に必要な3 要素と言われる細胞,足場,増殖因子のうち,細胞ないしその加工品を用いる際には規制が高い現状がある一方,承認済みの材料や薬剤を使用する限りにおいてはそのハードルは低い.第2 に臨床応用へ向けてのステップの視点で考えると,臨床研究ののち治験を経て保険収載を目指すか,医師法のもと先進医療として実施するかの2 通りがあるが,現状では後者が先行している.第3 に患者からのニーズという視点でとらえた場合,生命を脅かす疾病治療に対してはある程度の費用までなら受容されるものの,生活の質の向上に寄与する程度の治療であればニーズは少ないようであった.最後に再生医療推進法の成立によって再生医療等安全性確保法と改正薬事法の成立の可能性が高まり,近い将来一気に実用化が加速する可能性が示された.
難治性創傷の最新治療(3)
  • 東田 隆治
    2014 年 6 巻 1 号 p. 49-55
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル 認証あり
    要旨:多血小板血漿療法(platelet rich plasma: PRP)は再生医療の一つであり,自家血を遠心分離して得られる血小板を濃縮させた血漿に,血小板凝集反応を起こさせ,活性化させることにより放出された多量の成長因子を創傷治癒の促進に応用する方法である.糖尿病性足潰瘍や重症下肢虚血などの下肢慢性創傷では,肉芽内の成長因子やサイトカインなどがバランスを欠いた状態にあり,デブリードマン,血行再建,感染のコントロールを集学的治療で行った後,PRP gel を塗布することによりバランスのとれた肉芽組織が回復し創治癒が促進される.口腔外科や整形外科領域の骨再生に利用される高濃度PRP と異なり,低濃度(生理学的濃度)PRP は皮膚軟部組織創傷治療に適しており,その有用性が国内外で報告されている.PRP は先進医療としての申請も認可され,下肢の難治性創傷治療に貢献する付加療法としての役割を果たす.
原著
  • 松本 健吾, 古川 雅英, 秋山 喜宏, 亀岡 恭子, 大塚 未来子, 立川 洋一, 迫 秀則
    2014 年 6 巻 1 号 p. 56-65
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル 認証あり
    要旨:下肢の難治性創傷は糖尿病を基礎疾患とすることが多く,透析歴が長期の場合はしばしば下肢虚血を合併しており,この場合は創傷治療に先立って血行再建を行う必要があるため更に長期の治療期間が必要である.この間,疼痛により活動性が低下することに加えて,創部の保護や関節可動域の制限が必要であるため,主にベッド上安静での療養となる.この安静期間は特に高齢者において廃用症候群や認知症を引き起こす原因となり,創傷が治癒したにもかかわらず,自立歩行ができなくなる原因となる.今回我々はTotal Contact Cast の手法を応用して,創部を免荷しながら術後早期からのリハビリに取り組み,歩行機能回復,認知症の進行予防と入院期間の短縮が得られたので報告する.
  • 佐々木 陽平, 林 久恵, 近藤 恵理子, 小中 真由美, 太田 進, 中村 麻有, 古橋 究一, 熊田 佳孝
    2014 年 6 巻 1 号 p. 66-70
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル 認証あり
    要旨:歩行時に足底に作用する内外側・前後方向の力学的負荷は皮膚組織の微細な損傷や胼胝形成の原因となることが指摘されている.足底胼胝形成糖尿病患者は足部潰瘍形成リスクが高いとされているが,内外側・前後方向の力学的負荷を定量的に測定した報告は少なく,足底へ及ぼす影響については明らかになっていない.そこで本研究では,胼胝形成糖尿病患者6 名(DM 胼胝群),足底胼胝のない糖尿病患者7 名(DM 群),対照群7 名(CON 群)を対象に,歩行時の力学的負荷(内外側・前後・垂直成分)を測定した.1 歩行周期における内外側成分の最小値と最大値の差(PtP)は,DM 胼胝群がDM 群,CON 群と比べて有意に大きく(72.9N vs 57.3N and 39.9N, p<0.05),胼胝形成糖尿病患者においては,神経障害がみられなくても内外側方向の力学的負荷が大きいことが確認された.
症例報告
  • 大出 佑美, 須田 幸子, 石川 昌一, 市岡 滋
    2014 年 6 巻 1 号 p. 71-75
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル 認証あり
    要旨:難治性創傷患者にはβ- ヒドロキシ-β- メチル酪酸(β-hydroxy-β-methylbutyrate: HMB),アルギニン,グルタミンが創傷治癒に有効とされている.当院では一般的な栄養管理とあわせHMB,アルギニン,グルタミン含有食品(以下HMB/Arg/Glu 食品:アバンドTM,アボットジャパン株式会社)を使用しているが,難治性創傷患者は糖尿病や腎機能障害を合併していることが多く,HMB/Arg/Glu 食品の使用には注意が必要である.今回我々は,糖尿病や腎機能障害を合併する難治性創傷患者にHMB/Arg/Glu 食品を使用し,血糖値や腎機能の変化に応じ薬剤や食事内容を調整することで,それらを悪化させずに治癒までHMB/Arg/Glu 食品の使用継続可能であった.糖尿病や腎機能障害を合併する難治性創傷患者にHMB/Arg/Glu 食品を使用する際は,補給栄養量とともに血糖値や腎機能を経時的に評価し,それに応じた薬剤や食事内容の調整をすることが重要である.
活動報告
  • 渡邉 光子, 大城 繭子, 進藤 敦美, 田尻 朝子, 布谷 容子, 飯田 修
    2014 年 6 巻 1 号 p. 76-80
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル 認証あり
    要旨:重症虚血肢(critical limb ischemia: CLI)ケアには多職種の協働が重要である.私たちは効果的なチームケア提供のために認定看護師の役割を明確にする必要がある.そのため現行のCLI ケアチームの多職種にインタビューを行い,KJ 法でリソースナースの介入について検討した.抽出された問題は1.CLI 患者の創傷の知識とアセスメントの不足,2.コミュニケーション不足,3.情報ツールの活用不足,4.病棟業務の煩雑さ,5.患者のセルフケア指導ができていない,があがった.その対策の実施には,問題の重要性だけでなく,チームメンバーの背景や環境を考慮した優先性をもって遂行することが肝要であることが示唆された.また,チーム医療,チームビルディングについて文献的検討を加えて考察する.
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