日本下肢救済・足病学会誌
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7 巻, 3 号
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巻頭言
総説
  • -歩く足を守るために-
    河辺 信秀, 林 久恵, 近藤 恵理子, 中村 壽志, 佐々木 陽平
    原稿種別: 総説
    2015 年 7 巻 3 号 p. 113-120
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル 認証あり
    本稿の目的は,下肢慢性創傷患者のリハビリテーションおよび理学療法について,その現状を概説し,課題について考察することである.第1に,下肢慢性創傷の発症要因の1つである足底負荷量の増加に関して,運動機能障害による影響について概説する。第2に創傷の治癒や予防に貢献するという観点から,off loadingに関する介入を概説する.また,虚血肢に関する運動療法と物理療法の効果についても解説する.最後に創傷の治癒過程で生じる廃用症候群や背景疾患から発生する身体機能低下に対する関わりについて現状を概説し,その課題について考えたい.これらは,今後,リハビリテーションとしての介入方略を確立していかなければならない重要な分野であると考えている.
特集:透析患者の足を守るための日常の診療とケア~集学的治療を行う総合病院と透析病院・クリニックの連携~
  • 岩谷 由佳, 根木 茂雄, 新屋 智珠子, 児玉 直也, 重松 隆
    原稿種別: 特集:透析患者の足を守るための日常の診療とケア~集学的治療を行う総合病院と透析病院・クリニックの連携~
    2015 年 7 巻 3 号 p. 121-128
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル 認証あり
    透析患者における足病変は末梢動脈疾患(PAD)が原因となることが多い.透析患者のPAD罹患率は一般人口と比較して高いとされ,PADを合併した透析患者は非合併透析患者に比し,生命予後は著明に悪化し,PADが透析患者の重大な予後規定因子であるといえる.しかしながら,透析患者のPADは間欠性跛行などの症状に乏しく進行した重症虚血肢(critical limb ischemia:CLI)で発見されることも少なくない.このため,透析患者においてPADは発症病態を理解したうえでの,予防対策や早期発見,早期治療が重要となる.それには,糖尿病患者における血糖コントロール,足清潔保持,感染対策,フットケアなどに加え,禁煙,高脂血症対策,透析療法に伴う高リン血症のコントロールと薬物療法が重要となる.
  • 吉矢 邦彦, 坂井 奈美江
    原稿種別: 特集:透析患者の足を守るための日常の診療とケア~集学的治療を行う総合病院と透析病院・クリニックの連携~
    2015 年 7 巻 3 号 p. 129-135
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル 認証あり
    透析患者ではPAD(Peripheral Arterial Disease)の合併頻度が高く,高齢化と糖尿病性腎症の増加により重症例や下肢切断症例が増加している.透析患者の足を守り下肢切断を減らすために透析施設にとって必要な日常の診療ケア,システム,専門医療機関との連携について当院の現状も含め報告した.フットケアは,看護師が中心となって管理できる透析施設独自のシステム構築が必要である.フットケアによりPADの早期発見,早期治療が可能になる.電子カルテに対応したシステムの構築により1回に5分程度でフットケアが可能であった.ABI(Ankle-Brachial pressure Index)測定をフットケアに組み込むことも有効であり,透析患者174例のABI値は0.9~1.2を基準値とすると65.9%が異常値であった.治療として抗血小板薬の投与が必要であり,PADだけではなく冠動脈疾患や脳血管疾患やシャントトラブルなどに対して42.5%の症例に投与されていた.いったん創傷ができたときは,適切な処置が必要であった.透析治療の延長であるLDL(Low Density Lipoprotein)吸着療法は各種治療に抵抗性のPADに対して試みる価値のある治療と思われ21例に施行されていた.栄養指導・教育・啓発も重要であり,フットケアを中心とした予防的処置を行うことは,透析患者の足を守り下肢切断を減らすことにつながる.また可能であればフットケア外来の設立が望ましいと思われた.専門医療機関との連携は,各透析施設のシステムに応じてFT(Fontaine)Ⅱで治療抵抗例やFTⅢ・FTⅣなどの重症例を早めに専門医療機関に紹介することが必要であり,9.8%の症例が専門医療機関を受診中であった.PADの治療はチーム医療であることをふまえて,各透析施設での院内システムの構築,専門病院との連携の構築が大切である.日本透析医学会の報告では,下肢切断率が年々増加しているのにくらべ,当院での下肢切断率は減少傾向にあった.フットケアをはじめとしてPADの診断・治療に積極的に取り組み,さらに専門医療機関と連携することで,透析患者の下肢切断例の減少に貢献していると思われた.
  • ―循環器内科医の立場から―
    木下 愼
    原稿種別: 特集:透析患者の足を守るための日常の診療とケア~集学的治療を行う総合病院と透析病院・クリニックの連携~
    2015 年 7 巻 3 号 p. 136-140
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル 認証あり
    近年,わが国では,急速な高齢化とともに,糖尿病も含めた生活習慣病の増加により,透析患者は増加傾向にある.それにより,透析患者の末梢動脈疾患も増加傾向にある.また,透析患者の末梢動脈疾患は重症であり,かつ難治性であることが多い.透析患者の重症下肢虚血は,下肢切断率が高いだけでなく,生命予後もきわめて不良であり,その診療はきわめて重要な問題である.透析患者における末梢血管疾患そのものの診断,治療に加えて,血圧コントロール,体液管理,血糖管理等の重要性についても述べたい.
  • ―皮膚科医の立場から―
    長野 徹
    原稿種別: 特集:透析患者の足を守るための日常の診療とケア~集学的治療を行う総合病院と透析病院・クリニックの連携~
    2015 年 7 巻 3 号 p. 141-144
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル 認証あり
    透析患者の足病変についてはその合併頻度の高さにもかかわらず,積極的な治療がなされていることが比較的少ないのが現況である.本稿では皮膚科医の立場からありふれているが注意すべき疾患(足白癬,爪白癬,鶏眼・胼胝,亀裂性湿疹),頻度は高くないが臨床的に重要な疾患(Blue Toe症候群(コレステリン塞栓症),およびカルチフィラキシス(calciphylaxis))について概説し,最後に透析患者の足趾潰瘍に対する総合病院―透析病院―在宅での治療とケアの連携の重要性および日々の観察の必要性について触れる.
  • 高草木 由里
    原稿種別: 特集:透析患者の足を守るための日常の診療とケア~集学的治療を行う総合病院と透析病院・クリニックの連携~
    2015 年 7 巻 3 号 p. 145-153
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル 認証あり
    「糖尿病とは教育の病気である」と言われており,多くの施設で,患者が自己管理能力を身に付けられるよう療養指導を行っている.糖尿病に関連する療養指導には在宅療養指導,糖尿病透析予防指導,糖尿病合併症管理等,看護師が指導を行っても,加算算定が認められているものがある.フットケアは糖尿病合併症管理に含まれており,2008年の診療報酬で算定可能となって以降,糖尿病合併症管理料算定実績は年々増加している.しかし,フットケアが全国的に盛んに行われているのにもかかわらず,下肢切断患者数や足潰瘍発生率の抑制効果にはいまだ否定的な報告が多い.当院が行っているフットケアの体制や内容を振り返り,ほかの療養指導との関連や効果的な療養指導(フットケア方法)について,また透析室や地域施設との連携について考えた.
  • 丹波 光子
    原稿種別: 特集:透析患者の足を守るための日常の診療とケア~集学的治療を行う総合病院と透析病院・クリニックの連携~
    2015 年 7 巻 3 号 p. 154-161
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル 認証あり
    足病患者は感染や血行障害など病態が複雑で,治癒までに長期間を有する.当院だけでは,治癒まで入院治療を継続することできず,転院する患者が多い現状にある.入院期間を短縮するために,感染のコントロールがついた患者は他施設に転院し,その後手術目的で再入院,創部の治癒後,リハビリ目的で再度転院する,というシステムをとっている.そのため治療が継続できるように施設内での多職種による連携だけではなく,地域連携が必要となる.今回当院で行っている透析病院との連携パスや看護サマリー,創傷サマリーの活用と連携を行っている透析病院,急性期病院,訪問看護ステーションで多摩地区における看護師による下肢創傷の連携ネットワーク(Tama Limb Salvage and Wound Care Nursing Network:Tama SWAN(N))について報告する.
下肢救済‐私たちの取り組み(8)
  • 小林 智美, 折目 由紀彦, 中村 哲哉, 田中 由紀子
    原稿種別: 下肢救済!私たちの取り組み(8)
    2015 年 7 巻 3 号 p. 162-167
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル 認証あり
    当院では,フットケア外来を2011年2月に開設して以来,診療科や職種の垣根を超えた集学的医療の実践を目指して診療を行ってきた.現在,医師では心臓血管外科がゲートキーパーとなり,循環器科,皮膚科,整形外科が関わり,皮膚・排泄ケア認定看護師,糖尿病看護認定看護師,フットケア専任看護師,さらに義肢装具師,理学療法士を加えフットケアチームを構築している.当院のフットケア外来の目標は1.下肢の救済,2.創傷管理と再発予防,3.患者の生活のコントロールとし,数多くの足病変をもつ患者の診療を実施し,フットケアを集学的に行うことで,下肢の大切断の回避に繋げてきた.この4年間で,患者から学んだことはフットケアにおける関わりは局所ケアだけでなく,全身状態や生活状況を含めた患者の全体像を把握し,療養者である彼らの生活を支えることの重要性である.今後は糖尿病専門医の関与の促進を含めさらなるフットケア診療の充実に向けて努力していきたい.
原著
  • 佐々木 綾菜, 林 久恵, 山崎 遥人, 河村 守雄, 近藤 恵理子, 伊藤 真也, 若井 建志
    原稿種別: 原著
    2015 年 7 巻 3 号 p. 168-172
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル 認証あり
    【目的】下肢の非外傷性小切断後に,リハビリテーションが処方される機会が増えている.小切断後は再切断や下肢喪失リスクが高いことが指摘されているが,小切断後の下肢喪失症例の特徴に関する報告はきわめて少なく,リハビリテーションのプログラム立案に難渋することが多い.そこで本研究では小切断後の同側下肢喪失の危険因子について検討を行った.【方法】2003年4月から2011年12月に小切断を施行した連続症例194名221肢を対象に小切断部位を足趾切断群,中足骨切断群に分類し,両群の下肢喪失率と下肢喪失危険因子について検討を行った.【結果】小切断後90日以内の下肢喪失率は中足骨切断群が足趾切断群より有意に高く(p<0.01, log rank),下肢喪失危険因子として中足骨切断,CRP値≧6.0mg/dlが検出された.【結論】小切断後の下肢喪失リスクは,中足骨切断後の症例,CRPが高い症例で高いことを考慮し,リハビリテーションプログラムを立案する必要があることが示唆された.
  • ~痛みがなく,4秒で撮れて且つカラーマップで示される血流計~
    大浦 武彦, 大浦 紀彦, 松井 傑, 内山 英祐
    原稿種別: 原著
    2015 年 7 巻 3 号 p. 173-184
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル 認証あり
    レーザースペックルフローグラフィー(LSFG)は血流を測定したい皮膚面に波長830nmの近赤外光を照射すると,表面より1mm程度の深さまで浸達する.レーザー光は組織内を流れる赤血球によって散乱し,ランダムな斑点模様となり動きをとらえることができる.測定時間は4秒.血流マップは毎秒30コマの動画で示される.表示される数値は単位のない相対値である.しかしこれを下肢の血流測定に応用すると変化が一目瞭然であり,Angiosomeは3本の下肢動脈の血流状態を表すのでその変化を推定できる.臨床応用における長所:(1)非接触性で痛みがない,(2)誰でも測定できる,(3)いつでも測定できる(手術中でも手術前後でも連続的に測定できる),(4)下肢は3本の動脈で支配されているが,この支配領域の血流を測定することによりその供給源の支配動脈が閉塞しているか閉塞していないかを推定できる,(5)ABIとある程度の相関がある,(6)出てくる数字は相対値であるが,下肢血流不全の状態と健常者をある程度区別することができる.
実践報告
ミニレポート
  • 阿久津 陽子, 山中 祐治, 二階堂 剛史, 酒井 伸一郎, 田口 恵子, 宮田 忠明, 千葉 義郎
    原稿種別: ミニレポート
    2015 年 7 巻 3 号 p. 188-193
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル 認証あり
    糖尿病に伴う維持透析患者の増加,高齢化社会の進行により,生活習慣病を基盤とする足の問題が益々増加の一途を辿ると予測されている1).特に透析患者は末梢動脈疾患(PAD)のハイリスク群であり,無症状のまま下肢潰瘍・壊死を引き起こす.早期発見・早期治療のため,フットケアにおいて初期段階で異常を発見しPADのハイリスク患者の検出ができる観察基準,および定期的な観察から血流評価にいたるまでをシステム化した多角的なケア援助2),また,下肢難治性潰瘍に対する創傷ケアは,それぞれの病態に応じた集学的治療が必要なため,定期的モニタリングやアセスメントに加え患者への日常的なアドバイスが重要であると考える.フットケアに対する認識・知見が徐々に発展・進歩しているなか,フットケアに対する考え方・重要性を再認識し,日常生活において早期から取り組み,いかにして再発を予防していくかがわれわれの役割である3)
地方会抄録
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