日本下肢救済・足病学会誌
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8 巻, 1 号
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巻頭言
総説
  • 松原 忍, 矢吹 雄一郎, 前川 二郎
    原稿種別: 総説
    2016 年 8 巻 1 号 p. 3-11
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル 認証あり
    日常の臨床ではさまざまな「浮腫」に遭遇する.浮腫の病因により治療目標は大きく異なり,特に「リンパ浮腫」では残存するリンパ機能によって治療効果も異なる.問診や視触診による診断と臨床症状に基づく病期分類が一般的だが,適切な治療を行うためには,画像評価による確定診断とリンパ機能の重症度分類を積極的に活用すべきである.超音波検査は静脈性浮腫の鑑別が容易であり,皮下水分の確認などによりリンパ浮腫治療の効果判定も可能である.ICG蛍光リンパ管造影法ではリンパ流および走行が観察できる.リンパシンチグラフィでは患肢全体のリンパ機能評価が可能であり,SPECT-LSを追加することで表在のみならず深部のリンパ動態も可視化される.これらを組み合わせて複合的理学療法の効果や限界,外科治療の適否が判断される.リンパ機能評価を積極的に行うことで,より病態に即した治療法を選択することが重要である.
特集:静脈リンパ疾患の診断・治療の現状
  • 重松 宏
    原稿種別: 特集
    2016 年 8 巻 1 号 p. 12-19
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル 認証あり
    リンパ浮腫診療には多くの診療科や職種がかかわっているため,複合的リンパ浮腫治療における施術者の医学的知識,医療技術,手技の熟練度など幅広い分野を評価し,医療水準を担保することを目的として,日本脈管学会を始めとした関連5学会を中心に,リンパ浮腫療法士の認定を行うリンパ浮腫療法士認定機構が設立された.これまでに800名以上が認定され,看護師が70%以上を占めて最も多く,全国の都道府県に在籍している.育成機関には一定の教育要綱を提示し,教育水準の充実を図っている.医療保険制度のなかでは,リンパ浮腫は現時点ではがん術後の合併症としてのみ捉えられているが,原発性リンパ浮腫診療を含め,リンパ浮腫に対する治療という観点からの評価が必要であり,高い技術水準に対する適切な診療報酬が求められている.リンパ浮腫療法士の普及により,リンパ浮腫患者の医療環境が改善すると期待される.
  • 佐藤 佳代子
    原稿種別: 特集
    2016 年 8 巻 1 号 p. 20-26
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル 認証あり
    「複合的理学療法(Complex Physical Therapy:以下CPT)」は,欧州において確立された代表的なリンパ浮腫保存的治療の一つである.CPTは,個別の患者の状態に応じて複合的に用いて,リンパ管系の輸送障害により組織間隙に過剰に溜まった組織間液やリンパを健康な排泄システムに誘導する技術であり,国際リンパ学会においてリンパ浮腫に対する標準治療として認められている.本療法は,日本においてはがん治療における外科治療や放射線治療の後遺症として発症したリンパ浮腫の治療としての需要が高く,これを基盤として普及しつつある.実際のCPTの適応は幅広く,慢性静脈不全による浮腫や外傷性浮腫,交通事故などでの広範囲の皮膚損傷や火傷によって生じる浮腫等に対しても効果が期待できる.本療法先進国のドイツでは幅広く応用されており,わが国においても将来的に静脈疾患や整形外科領域にも広く活用されることが望まれる.
  • -リンパ管静脈吻合について-
    上村 哲司, 川野 啓成, 森川 綾, 菊池 守, 原田 慶美, 楊井 晢, 安田 聖人
    原稿種別: 特集
    2016 年 8 巻 1 号 p. 27-30
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル 認証あり
    四肢のリンパ浮腫の治療には,保存的療法と外科的療法があるが,その治療における中心は保存的治療である.保存的療法は,浮腫の進行を遅らせることを目的とするセルフコントロール療法である.一方,外科的治療には,昔から肥大し線維化した組織の切除やリンパ管誘導術などが行われてきた.保存的治療の治療効果を上げる目的で,貯留したリンパ液を機能が残存しているリンパ管を介して静脈に戻すリンパ管静脈吻合術やリンパ管・節を移植する術式が導入されてきている.近年,形成再建外科における超微小血管吻合手技の確立と合わせて,インドシアニングリーンを用いた近赤外線リンパ管蛍光造営法での表在リンパ管の同定が進み,外科治療が進歩してきている.われわれが,佐賀大学形成外科で行っているリンパ浮腫に対する外科治療において,その診断と重症度評価が行えるICGリンパ管造影とリンパ管静脈吻合とその結果について報告する.
  • 孟 真
    原稿種別: 特集
    2016 年 8 巻 1 号 p. 31-39
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル 認証あり
    下肢静脈に多くの病変が起きやすいのは下肢静脈には安静時立位時に高い静脈圧がかかり,容易に静脈高血圧が起こることによる.臨床所見と超音波診断などから適切なCEAP分類に基づいた診断を行い,静脈高血圧の原因を明らかにする.治療は静脈高血圧の是正で,基本は下肢挙上など生活の改善,弾性包帯,弾性ストッキングによる圧迫療法である.両治療ともに患者に指示するだけでは成功率は低く,患者に受け入れられるように改変することが大切である.下肢静脈性潰瘍に対する表在静脈逆流遮断術(下肢静脈ストリッピング術あるいは血管内焼灼術)は基礎となる圧迫療法にくらべて潰瘍治癒効果は高いわけではないが,再発予防に有用である.特に一次性下肢静脈瘤が病因であるときは必須の手技となる.一次性下肢静脈瘤の治療は血管内焼灼術が広く使用されつつあるが,その長期成績,特に静脈性潰瘍例での成績は明らかではない点には注意を要する.
難治性創傷の最新治療(6)
  • 春田 直樹, 新原 亮, 河内 雅年, 矢野 琢也
    原稿種別: 難治性創傷の最新治療(6)
    2016 年 8 巻 1 号 p. 40-46
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル 認証あり
    下肢静脈疾患治療において,2つのエポックメーキングな出来事があった.一つはレーザーやラジオ波を用いた血管内焼灼術の保険適応であり,もう一つはSEPS(内視鏡下筋膜下不全穿通枝切離術)が2014年4月より保険収載されたことである.SEPSは下肢静脈瘤に対して行われる外科治療法であるが,特に静脈うっ滞性皮膚炎に伴ういわゆる下腿難治性潰瘍と分類される疾患に有用な術式である.静脈うっ滞性皮膚炎において圧迫療法が第一選択であることにいまだ変わりはないが,SEPS等の血管外科治療を併用することで,うっ滞性皮膚炎の鎮静化を早めたり,圧迫療法の効果を高めたりする利点がある.そこで今回静脈うっ滞性皮膚炎の主因である「慢性静脈高血圧」と呼ばれる病態に関して解説し,SEPSがどのような機序で慢性静脈高血圧を改善するのか,さらにこの病態に即した圧迫療法に関して解説した.
原著
  • 清水 梓, 門 真起子, 松村 崇, 田村 浩, 土井 信一郎, 諏訪 哲, 杉村 幸
    原稿種別: 原著
    2016 年 8 巻 1 号 p. 47-52
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル 認証あり
    【目的】:重症下肢虚血(CLI)患者の治療には複数科による集学的アプローチが必要である.当院では下肢救済を目的としてチーム診療を行っており,特にCLI患者の治療経験につき報告する.【方法】フットケア外来を受診した下肢慢性創傷患者134名のうち,末梢動脈疾患(PAD)を疑われ創傷を伴うCLI患者68例について,糖尿病合併の有無,血行再建の有無,大切断回避率,創治癒率を評価した.【結果】糖尿病は57例(84%)で合併していた.31例に血行再建を行い(血行再建群),23例は内服治療のみ(内服治療群),14例は血行再建不可と診断された(再建不可群).大切断回避率は血行再建群で27例(87%)であり,再建不可群の6例(42%)より有意に高かった.創治癒率も血行再建群では26例(84%)であり,再建不可群の3例(21%)より有意に高かった.【結論】CLI患者において血流評価,血行再建ならびに形成外科的な処置は必須であり,複数の診療科がチーム診療として連携を図ることで高い大切断回避率が得られたと考えられる.
  • 小笠原 大介, 吉川 糧平, 近藤 健介, 井上 智裕, 岡本 允信, 若山 克則, 多和 秀人, 呉羽 布美恵, 松田 祐一
    原稿種別: 原著
    2016 年 8 巻 1 号 p. 53-59
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル 認証あり
    従来末梢動脈疾患(PAD)の病態の把握には,ABIやSPP検査が広く用いられているが,一方で血行再建術中にリアルタイムで評価することはむずかしく,手技施行時におけるモニタリングとしての使用は困難である.今回着目した独自の灌流指標であるPerfusion Indexは,動脈血の拍動性成分と非拍動性成分の比で表されており,動脈血流ともよく相関することが知られている.当施設での検討においてもABIとの相関は良好で(p<0.0001),PADのスクリーニングに関しても有用である可能性が示唆された.またPerfusion Indexは拍動性成分を連続的に測定していることから,経時的に末梢の灌流状態を評価することが可能である.PADの血行再建術においても,末梢血流の推移をリアルタイムで評価することができるため,特に手技のエンドポイントを決めるうえで大きな効果を発揮する.Perfusion IndexはPADの診療・治療における新たな灌流指標として有望であると考えられ,本稿では実臨床での使用を中心に概説する.
  • 菊池 恭太, 東田 隆治, 牧野 洋二郎, 李家 中郷
    原稿種別: 原著
    2016 年 8 巻 1 号 p. 60-66
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル 認証あり
    予防的手術は神経障害を有する患者において創傷発症や再発のリスクを減らすために行われる手術であり,足部の構造と機能を改善することにより足底圧の集中を軽減する目的で行われる.神経障害を有する足潰瘍患者では感覚障害や足部変形のため潰瘍は歩行している限り難治性となり,しばしば大切断を余儀なくされる.このような難治性の神経病性足潰瘍に対して予防的手術を行った症例を報告する.症例はいずれも2年以上続いていた神経病性足潰瘍の3症例であったが治療後は潰瘍のない足で歩行が可能となっている.神経病性足潰瘍の治療において神経障害を改善することは困難だが足部変形を改善することは可能である.また患者の生活の質を維持するためには潰瘍部位を免荷して足底圧分布を適正化することが必要である.これらの点において予防的手術は有用な方法である.
症例
  • 相原 有希子, 石井 義輝, 相原 英明, 曽我 芳光, 関堂 充
    原稿種別: 症例
    2016 年 8 巻 1 号 p. 67-72
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル 認証あり
    重症虚血肢の治療には創傷加療と血行再建の両面からの治療が必要になるが,そのタイミングはむずかしい.症例は糖尿病を基礎疾患に有する77歳男性.低温熱傷を契機に右足趾の壊疽となり,循環器内科から当科紹介となった.デブリードマン,足趾の小切断,局所陰圧閉鎖療法を行うなかで,下腿動脈病変に対して計3回の血管内治療を行い,7ヵ月目に創部閉鎖に成功した.大切断回避,創部完治のために複数回血管内治療の重要性を示唆する症例であり,文献的考察を交えて報告する.
その他(治療上の工夫)
地方会抄録
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