管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌
Online ISSN : 2434-0529
Print ISSN : 0918-7863
17 巻, 1 号
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論文
  • 潘 健民
    2009 年 17 巻 1 号 p. 3-23
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究では,日本企業の実質活動による報告利益管理の検証を行った.2000年以降,会計ビッグ・バンの影響により,日本企業は変更された会計基準への対応を強いられた。本研究は,先行研究と同様に,営業キャッシュ・フロー,発生項目,裁量的支出及び生産コストに焦点を当てて分析を行った。分析の結果,対象企業は裁量的支出の削減を行うのと同時に,大量生産によりコストを低減させることにより,利益数値を作り上げることが確認できた。同時に,対象企業は,発生項目により利益数値を引き下げることも確認でき,対象企業が報告利益管理を行う動機がさらに強まったと考えられる。本研究における分析結果を総合すると,対象企業は実質活動による報告利益管理を行っていた可能性があるのではないかと考えられる。

  • 荒井 耕
    2009 年 17 巻 1 号 p. 25-37
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    医療購入者(支払者)と医療専門職は,医療サービスの価格設定において利害が対立している.根本的には経済合理思考に基づいている実際消費資源額ベースの価格付けを支払者は想定しているのに対して,医療専門職は彼ら自身が主張する技術力評価額ベースの価格付け(提供技術力の価値の適正評価)を想定している.本研究では,(1)各種手術サービスで実際に消費される資源額の各種手術間での相対的な価値と,各種手術サービスの技術力評価額の各種手術間での相対的な価値とがほとんど一致しないこと,(2)また各種手術サービスの実際消費資源額(絶対的な価値水準)と技術力評価額(絶対的な価値水準)もかなり乖離すること,を明らかにしている.こうした状況の下では,政府は各種手術サービスの相対価格及び絶対的な価額を決定するに際して,経済合理思考と専門職評価思考のどちらに基づいて価格設定をすべきか熟慮する必要がある.本研究では,政府は両思考をバランスする形で相対価格及び絶対価額を設定していることが明らかになった.

  • 丹生谷 晋
    2009 年 17 巻 1 号 p. 39-55
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本稿は,業績評価システムの情報システムとしての側面に着目し,事業部門の状況についてグループ本社(G本社)の理解を促し,適切な資源配分に資するような業績評価システムの設計・運用と事業部門の財務的なパフォーマンスの関連性を実証的に明らかにすることを目的としている.研究に当たって,「グループ経営における事業部門の業績評価システムに関するアンケート調査」を実施し,東証1部上場製造業のうち分権的組織形態を採用している企業の事業部門責任者あるいは事業部門スタッフに質問調査票を送付した.218社307部門から回答を回収し,有効回答とみなされる273部門を対象に分析を行った.従来の管理会計研究においては,財務・非財務業績評価指標による業績情報を中心に検討されてきたが,人対人に代表される非公式的な情報伝達で補完することによってはじめてG本社は事業部門の状況に対する理解が進み,それがG本社による適切な支援や資源配分に繋がり,さらに事業部門の財務パフォーマンスの向上をもたらすという因果関係をモデルによって示した.

  • 小泉 友香
    2009 年 17 巻 1 号 p. 57-68
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本論文の目的は,顧客別収益性測定のための活動基準原価計算(ABC)モデルを提案することである.まず,(1)価値連鎖の一部であるマーケティング活動を,さらに,つぎの下位の活動に細分化する.すなわち,①販売担当者育成活動,②市場調査活動,③注文獲得活動,④注文履行活動,⑤売上債権回収活動,⑥アフターサービス活動,⑦支援活動.つぎに,(2)①「顧客別売上・売上原価マトリックス」を用いて顧客別売上総利益を求める.②製品原価計算が適切に実施されていることを前提として,顧客を原価計算対象とするABCにおいては,これらの下位の活動に適用するために,「資源・活動マトリックス」を用いて資源消費による費消原価を活動原価に負担させる.③活動原価から顧客別原価を集計するために「活動・顧客マトリックス」を作成する.④顧客別売上総利益から顧客別原価を控除して顧客別利益を計算するために「顧客別利益計算表」を作成する.(3)顧客別利益を計算するための一般式を導出する.この方法により,限られた販売能力しかない企業がどの顧客を優先し,どの顧客を重視すべきでないかを判断するための尺度が提供され,合わせてマーケティング活動に関する原価管理のために有用な情報も示されることになる.

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