管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌
Online ISSN : 2434-0529
Print ISSN : 0918-7863
18 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
論文
  • 稲葉 喜子
    2010 年 18 巻 2 号 p. 3-17
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    2003年3月1日以降終了事業年度に日本でゴーイング・コンサーン情報開示の制度が導入された.経営者は,継続企業の前提を評価し,企業の存続に重要な疑義が存在する場合には注記においてその状況を説明し,監査人は経営者の評価及び注記について監査する.本研究の目的は,上記のような二重責任に基づくゴーイング・コンサーン情報の開示が経営者の再生行動や規律づけにどのような影響を与えるのかを明らかにすることである.実証分析の結果,ゴーイング・コンサーンの開示は企業の多くの再生行動を促し,開示後3年後の財務パフォーマンスの改善にも寄与しているという結果を得た.すなわち,ゴーイング・コンサーン情報の開示は,企業の経営者にとって再生への対応策を真剣に検討し実行するという契機となっていると考えられる.

  • 市川 朋治, 蜂谷 豊彦
    2010 年 18 巻 2 号 p. 19-39
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    資源ベース理論によれば,企業の競争優位の源泉は企業の所有する経営資源にある.競争優位にある企業は産業の平均的な企業と比較して,特徴のある経営資源を有しており,その特徴は研究開発費,広告宣伝費などの無形資産や生産設備などの有形資産への投資に現れる.本研究ではこれらを裁量的投資と定義し,裁量的投資と企業の競争優位との関係について競争優位の持続性,トレント,平均水準という3つの側面からとらえて検証した.分析の結果,裁量的投資は企業の競争優位と有意な関係があることが発見された.また,裁量的投資には相乗効果,相互補完効果があり,裁量的投資全体の水準(総合力)や個別裁量的投資の歪みによって捉えたこれらの複合的な効果も企業の競争優位に影響力を与えている.

論壇
  • 櫻井 通晴
    2010 年 18 巻 2 号 p. 41-51
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    木稿は,2009年8月29日(報告)と30日(討論)に行われた日本管理会計学会の統一論題の基調講演の報告「インタンジブルズと管理会計-レピュテーション・マネジメントを中心にして-」をもとに,論壇の論文として執筆したものである。本論稿は当日の報告内容を基礎にして記述したものではあるが,プレゼンテーションとは違って論文ではいくつかの点で加筆を要するため,当日の報告内容よりもより詳細な記述になっている。

    本稿の研究対象は,無形の資産である人的資産,情報資産,組織資産と,オフバランスのブランドとコーポレート・レピュテーション(corporate reputation; 企業の評判)である。したがって,財務会計で研究が進んでいるオンバランスの無形財産に関するマネジメントは,本稿の対象とはしない。資産性や評価の問題ではなく,インタンジブルズのマネジメントに焦点をおいた。とりわけ,管理会計がインタンジブルズのマネジメントに有効であるか,有効であるとすればどのようにしてインタンジブルズをマネジメントすべきかに論点が絞られている。

  • 伊藤 嘉博
    2010 年 18 巻 2 号 p. 53-64
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,CSR(corporate social responsibility)活動の経済性評価を支援する管理会計手法の可能性と課題を抽出することにある.企業がCSR活動の影響ないし効果を経済性の観点から評価したいと望むのは,組織の内外のステークホルダーから当該諸活動が企業ならびに社会の持続的成長・発展に寄与するものであるとの合意を引き出し,CSR活動の持続可能性を確保したいとの思いがあるからだ.ただし,CSR活動の内容が多岐に及ぶことにくわえて,管理会計の貢献領域も限られているといわなければならない.本稿では,CSRのもっとも重要な活動に位置づけられる環境保全活動の進展をもたらすアプローチとして多くの企業が期待を寄せるマテリアルフローコスト会計(:MFCA)に的を絞り,その意義と課題を抽出する.しかる後に,当該アプローチのさらなる革新の可能性を示唆するものとして日本ユニシス・サプライ株式会社のケースを取り上げ,検討をくわえる.

  • 岩田 弘尚
    2010 年 18 巻 2 号 p. 65-81
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    コーポレート・レピュテーションは,競争優位の源泉と企業価値そのものという2つの側面を有しており,レピュテーションの概念を明確にした上でその定義に即して測定を行う必要がある.そして,測定されたコーポレート・レピュテーションは,競合他社とのベンチマーキングや自社の経時的比較によって初めてマネジメントに有益な情報となる.また,コーポレート・レピュテーションと財務業績の相関関係並びに因果関係を回帰分析,パス解析,共分散構造分析などによって実証する研究がレピュテーション・マネジメントの理論構築のために必要である.さらに,レピュテーション・マネジメントの実践には,ステークホルダー・アプローチをとる戦略的マネジメント・システムであるバランスト・スコアカードのフレームワークが適している.結論として,わが国においても,実証研究に裏打ちされたレピュテーション・マネジメントの理論構築が望まれる.

  • 馬渡 一浩
    2010 年 18 巻 2 号 p. 83-92
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    ブランドは企業価値の源泉のひとつであり,戦略的に管理すべきインタンジブルズである.そこではパーセプションの管理が重要であるが,ウェブの進化によってレピュテーションが形成されやすくなったことで,ブランドのパーセプションマネジメントは従来よりも複雑になった.レピュテーションがブランドの文脈に影響を与えるからである.

    ブランドとレピュテーションを戦略的に識別して,認識する必要がある.その上でふたつを包括的にマネジメントしなければならない.レピュテーション・スコアカードはそのための有効な手法のひとつであろう.

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