管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌
Online ISSN : 2434-0529
Print ISSN : 0918-7863
5 巻, 1 号
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論壇
  • 伏見 多美雄
    1997 年5 巻1 号 p. 3-14
    発行日: 1997/03/16
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本稿は,本学会の1996年度第一回研究フォーラムでの基調講演に加筆・補正を加えたものであり,事業部制マネジメントをめぐる基本的諸問題について,事例研究を踏まえた課題を整理し,いわゆる「日本型」事業部制マネジメント・コントロールの特徴を浮上がらせようとしたものである.

    事業部制と呼ばれる分権管理システムが,「新しい」タイプのマネジメント・コントロール・システム(MCS)として日本の多くの企業に導入され始めたのは,1960年に公表された通産省産業合理化審議会の答申『事業部制による利益管理』以降である.この「答申」に触発されて,当時の多くの日本企業は,経理部主導型の計数管理の問題として事業部制マネジメントを検討・導入した事例が多かったが,その一方で,組織の効率的管理の方法論と認識する考え方も強かった.

    この「答申」および当時の事業部制論議の大勢は,欧米とくに米国の企業実践を背景にして,主として米国の研究者たちによって構築された学説を下敷にして展開されるものであった.ところが,事例研究ないしフィールド・スタディが示唆するところによると,日本の個別企業の多くは,当初はこの「米国型」のMCSを新しくてすぐれたものとして導入したものの,それを現実に運営する過程では,それぞれの企業環境および組織風土に応じて種々の変形ないし変質を加えていく例が多かった.しかも,その「日本型」と呼ばれるような変形・変質の仕方には,多くの企業に共通的に見られる特徴が少なくないのである.

    本稿は,そのような問題意識のもとで書きためてきた筆者の研究ノートから,特徴的なものを選んで設問ふうに整理し直したものである.分析の便宜上,事業部制MCSの組織構造に関わる側面と,計算構造に関わる側面とに分けて,考察をすすめる.

論文
  • 山下 裕企
    1997 年5 巻1 号 p. 15-28
    発行日: 1997/03/16
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    将来,確実に支出をもたらす租税は,企業が設備投資案を評価する際に考慮すべき重要なファクターの一つである.特に,法人税,道府県民税の法人税割,市町村民税の法人税割および事業税からなる法人所得税は,法人の所得に対して変動し,かつその所得に対して占める割合が大きいので無視できない要素であろう.それゆえ,設備投資による法人所得税の実質的な負担額を計算するための実効税率は重要な概念であるといえる.設備投資案を評価する際には資金の時間的価値を考慮しなければならないので,法人所得税の支払時期や事業税の損金算入時期が重要となるが,これまでの実効税率の考え方では,中間申告制度を十分に考慮していないため,それらの時期が現実とは異なって扱われていた.そこで本研究では,仮決算方式により中間申告を行う場合について,中間申告および支払時期を考慮した実効税率の計算方法を提案するとともに,提案する方法と従来の方法との比較・検討を行う.これにより,設備投資案評価のための実効税率の大きさは,資本コスト率や法人所得税の各税率の他に対象となる期の事業税控除前課税所得の増分のうち上半期の占める割合にも影響を受けることがわかる.また資本コスト率が大きい程,あるいは上半期と下半期で事業税控除前課税所得の増分の差が大きい程,従来の方法は現実とは異なった税負担を示すことがわかる.

  • 丸山 義博
    1997 年5 巻1 号 p. 29-46
    発行日: 1997/03/16
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    1生産期間の長い植物を生産品目とし,生産計画期間を有限期間とした場合の最適生産計画問題について検討した.検討にあたり,初めに動的計画法(DP)によるモデルの定式化を行い,次にこのモデル式を事例に適用した.事例は,鉢花を生産する小農家で副品目として家族の労働力により生産しているシャコ(葉)サボテン1品目を生産する場合の最適な生産計画とした.このとき,生産費は,排反な関係にある複数の方策の間で相違する費用のみを考慮し,かつこれらの費用は生産期間中一定とした.このとき,仕上げ鉢の大きさj(j=4,5,6)の1鉢あたりの利益rj(円)の想定値と実際値で相違が生じる場合にも最適な生産計画が検討できるように,利益比Ai(=ri+3/r6i=1,2)を設定し,生産-出荷期間がt期間(1≦t≦3)のときの最適方策をA1-A2平面上に方策の番号で示した.検討で得られた結果は,1生産期間の長い生産品目の生産計画の検討に有用と考える.

研究ノート
  • 三田 洋幸
    1997 年5 巻1 号 p. 47-68
    発行日: 1997/03/16
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    相当な投資を伴うことの多い企業買収の妥当性を判断する上で,買収投資の経済性を評価することは著しく重要である.そのために,さまざまな財務手法が開発されてはいるが,実務に十分活用されているとはいえず,あくまでも判断材料のひとつにとどまり,定性要因をより重視した恣意的な判断に依存しているのが実情である.これらの財務手法の利用を妨げているのは,いずれも買収評価の条件を単純化しすぎるために,現実の買収条件を的確に反映できないためである.さらに,その理論的な限界を曖昧にして利用されることも多く,実際の買収交渉における争点と買収評価との関連性をわかりにくくしているのである.

    企業買収の形態を契約成立後の組織形態によって合併と買収の二つに大別すると,わが国の案件は,ほとんどの場合は契約成立後も被買収企業を存続させる買収の形態をとっている.ところが一般に,買収評価の手法として,理論的に最も合理性が高いといわれるDCF法による計算プロセスを考察してみると,実は被買収企業の資本構成を一定とする状況を前提とした評価方法であることがわかる.被買収企業を存続させる場合にそのような前提を設けることは現実のビジネススにおいては適切でないことも多く,同様の計算プロセスを適用すると誤った経済性評価に基づいた意思決定が行わることも少なくない.

    そこで,本研究では,買収成立後に被買収企業を存続させる場合を考慮した買収価値の評価方法を検討する.まず,第1節において合併・買収の実施プロセスと買収価値の評価方法の大要を整理し,後節におけるモデル構築のフレームワークとする.第2節では,DCF法による買収評価方法を整理し,被買収企業が保有する余剰資金運用合計の時間的価値が逓減することによる問題点を考察する.第3節では,買収取引におけるキャッシュフローと資金プールに着目し,買収評価を評価するための財務モデルを構築するとともに,数値例を展開して実務的にも容易に適用できることを示唆する.

    本方法論は,以下の特徴を有することで,買収評価の有用性を高めようとするものである.第一に,被買収企業を存続させる期間を考慮して,買収企業にとっての買収投資の経済性を理論的に正しく評価するための計算手法を構築する.第二に,配当政策等の利益回収の方法によって買収価値がどのように変化するかを評価する.第三に,計画財務諸表(P/L,B/S,C/F)のシミュレーションをベースにして買収価値を算定するため,経営者にとって理解しやすい評価内容を提供する.

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